失敗

たいていの場合、失敗の原因は計画にある

ものごとの本質をガッチリつかむには概念化が欠かせません。計画の本質を腹落ちするためには、計画やその周辺を概念的に捉えることが大切です。
そんなわけで、私は世の中をこんな風に概念化して捉えています。

「私たちの行動は、計画か実行かのいずれかに分かれる」

世の中を「計画」か「実行」かのふたつに分けたわけですが、成果物が生み出されるのは実行からです。計画からは成果物は生み出されません。計画ばかりしていてもなんの変化も起こりません。

「計画の伝道師である浦さんがそんなことを言っていいのですか」ですって? 
それで「いいんです」。

どれだけ計画に時間を割こうとも、どれほどピカピカな計画を作成しようとも、計画が成果物を生み出すことはありません。しかし、もし「それなら計画は必要ないじゃないか」と考える人がいたとしたら、その人のビジネス、いやその人の人生は、きっとうまくいきません。
なぜなら、計画なしに狙った通りの成果物を生み出すことは難しいからです。

皆さんのビジネスは実行によって生み出された成果物によって潤されます。ところが、それらの成果物が狙い通りに生み出されたか否かは「実行」とは別問題です。狙い通りに成果物を生み出したいなら、そこには「計画」が欠かせません。

製品開発を例にとると、有能な技術者たちは最終的には画期的な製品を生み出すかもしれません。しかし、狙った時期に、狙った製品を世に送り出すことができるとは限りません。それを可能にするのが計画です。この場合は、計画を「プロジェクトマネジメント」と読み替えてもいいでしょう。
計画を軽視したせいで発売時期が遅れ、他社の後塵を拝することになるかもしれません。急ぐあまりに性能不足の商品を世に送り出してしまい、ファンや得意先を失うことだってあり得ます。無計画に消費された開発費は経営を圧迫するでしょう。原価計画の甘さが災いし、厳しい価格競争の中で、売れば売るほど赤字になる可能性だってあります。
結局、狙った成果は得られません。

繰り返します。
価値のない製品を生み出したのは「実行」ですが、失敗の原因は「計画」にあるわけです。

皆さんの職場では、こんな会話はないでしょうか。

幹部:  「プロジェクトはうまく進んでいるかね?」
プロマネ:「それが… 不慣れなメンバーばかりで、うまく進んでいません。この3か月ですでに3週間の遅れが発生しています」
幹部:  「ベテランも何人かいるだろう?」
プロマネ:「何名かはいますが、全員お客様の対応に追われていて、自分のことだけで精一杯なのです」
幹部: 「わかっていると思うが、このプロジェクトは必達だ。部長と相談するなりして、手の空いているエンジニアを回してもらいなさい。なんとかしてくれないと困るよ」
プロマネ:「はい、精いっぱいやります。ご心配をおかけして申し訳ありません」

これは「実行」の問題でしょうか。
そんなわけありません。これは「計画」の問題です。
こうなってしまっては、打てる手も限られます。このプロジェクトはきっと悲惨な末路を辿ることでしょう。

プロジェクトマネージャは、こうなる前に、きちんと計画しておくべきでした。例えば、こんな風に先手を打てたはずです。

・ ベテランとその他のメンバーの役割分担やフォーメーションを工夫しておく。
・ 顧客に先手を打つことで、顧客対応を少なくしておく。
・ メンバーを早期に立ち上げるための工夫をしておく。
・ 顧客と調整し、プロジェクトのスコープを絞り込んでおく。成果物を減らしておく。
・ 予めステークホルダー(利害関係者)に働き掛け、メンバー構成を適正化しておく。
・ 対象分野に強いベンダーの協力を仰ぐための外注費を確保しておく。

計画しておけば実行管理も可能となるので、3週間も遅延する前に事情が明るみになり、何らかの対策がとられていたに違いありません。

人は、目の前のことに心を奪われると計画を軽んじてしまいがちです。
「計画なんてムダなことはやめて、さっさと設計を始めなさい」
私が自動車メーカーに就職した35年前は、確かにそんなことを言う上司もいました。しかし、いまだにこんなことを言う上司のいる会社は危険です。

覚えておいてください。
たいていの場合、「失敗の原因は計画にある」ということを。

最後にもうひとつ、大切なことを付け加えておきます。
しつこいようですが、計画は成果物を生み出しません。それゆえ、計画に限らず、マネジメントは効率的でなければなりません。
「マネジメントは効率的であれ」
これが私のモットーです。
非効率なマネジメントは組織に定着しません。定着した風に見えても、手綱を緩めたとたんにマネジメント熱は冷めてしまうのです。

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