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現在、私たちが並んでいる途方もなく長いワクチン待ちの行列について

(追記:2021/04/21 この記事よりも新しいデータを元に書いた記事はこちらです→「長いワクチン待ちの行列はどのように消化されていくのかについて」)

なんとなく夏ぐらいには、私たち一般市民にもワクチンの順番が回ってくるような気になっているが、実際はどうなのか。

NHKのワクチン特設サイトと、官邸の「新型コロナワクチンについて」のサイトを総合すると、長い長いワクチン待ちの行列が見えてくる。

発表されているスケジュール

まず、NHKのサイトでスケジュールと優先接種対象者とその人数を頭に入れておきたい。

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接種の優先対象者は、医療従事者が480万人、高齢者が3600万人。必要な接種回数は一人につき2回だから、それぞれに必要な接種回数は、960万回と7200万回となる。

現在までの実績

続いて、官邸のサイトでダウンロードできる実績レポートを見ると、医療従事者は昨日(4月13日)までに、1,743,439回(18%)しかできていない。

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4月12日から始まった高齢者にいたっては、12日、13日合計で2,742回(0.0038%)しかできていない。

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進捗に影響する要因は何か

これは、ワクチンの供給不足によるものか、接種を実行するリソース不足によるものかその理由を知る手がかりとして、官邸のページにこのような表がある。

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ワクチンの配送スケジュールが書かれているが、単位が箱数となっており、1箱が何回分に相当するのか明示がない。ただし、厚労省のサイトにこのような記述がある。

「※1箱は195バイアル(1バイアル5回接種の場合975回接種分、6回接種の場合1,170回接種分)です。」

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1バイアルにつき6回接種可能になったのはごく最近だそうだから、1箱が975回分相当とすれば、3月29日の週までに配送された箱数(2522箱)に975をかけると、2,458,950回分が既に配送済みということになる。しかし前述の通り、4月13日までの接種実績は1,743,439回だから、供給量の71%しか消化していない。

この状況からすると、供給の問題よりもリソースの問題の方が接種の速度に影響を与えているといえそうだ。

現時点での接種速度

では、接種の速度はどれくらいなのか。

NHKのサイトが採用しているデータ・ビジュアライズの元データになっているのは、「Our World in Data」と呼ばれる世界各国のワクチン接種の進捗データを集めているサイトだ。この元データの中に「daily_vaccinations」という項目がある。これは、毎日のワクチン接種回数の直近7日間の移動平均を示す数値だ。

高齢者の接種が始まる前の最後の平日である4月9日時点での日本のdaily_vaccinationsは、70831回/日となっている。

つまり、1日あたり70831回が現時点での日本で最善を尽くした接種速度と見ていいのではないだろうか?
(注:追記)この数値は現在増加傾向にある。4月に入ってからは特に10万回/日前後の実績が並ぶ日もある。

参考:4月12日以降の日毎の実績は官邸のサイトからダウンロードする形式に一元化された。4月9日以前の実績は厚労省のサイトで確認できる。
新型コロナワクチンについて | 首相官邸ホームページ
新型コロナワクチンの接種実績|厚生労働省

このままのペースだと、一般市民の接種開始時期は?

さて、では医療従事者と高齢者の優先接種が終わり、一般市民に接種が行われるのはいつになるのか。気になるところだが、官邸のサイトも厚労省のサイトも歯切れが良くない。医療従事者の接種すら配送完了の見込みは書かれているものの、接種完了の見込みは書かれていない。前述のスケジュール表では5月17日の週末で途切れている。

医療従事者の残り接種回数は前述の数字を引き算すれば
960万回 ー 1,743,439回 = 7,856,561回

高齢者の接種回数はほぼ消化できてないので、全てがまだ手付かずの7200万回残っている。

両者合わせて、ほぼ8000万回に近い数字を1日70831回でさばくと1130日を要する。3年以上だ。一般市民の先頭に順番が回ってくるのに3年、最後尾は10年だ。これが私たち一般市民が現時点で待っている長い待ち行列である。

各国と比較した時の日本

最後に、各国の接種速度を比較する。

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このグラフは、前述のOur World In Dataの元データにある「daily_vaccinations_per_million」を比較したものだ。普通、接種のスピード、つまり1日に接種できる回数は総人口が多いほど注射を打てる医療者も多いため増加するが、この数値は接種人数を人口100万人当たりで比率化し、総人口の差を考慮したスピードを比較できる。

全ての国を調べたわけではないので、このグラフでトップの国が最も早いというわけではないことは申し添えたい。また、例えばイスラエルは速度は目立たないが、すでに全人口の60%近くが2回目の接種を終えている。対する日本は、全人口の1%に届かず、進捗が悪い上にスピードも遅いと言わざるを得ない。

最後に

ここまで客観的に書いてきたが、率直に言ってあまりにも遅い。遅すぎると思う。

前述のグラフでハンガリーが新幹線(320km/h)とすると、ドイツやイギリスが特急(160km/h)、日本は自転車(14km/h)。ハンガリーの1/20以下であり、東京から大阪まで一方は新幹線、こちらは自転車という、同じ目的地に移動しようとしているとは思えないほど速度差がある。

自分の計算がどこか間違っているとか、もっと詳しい人から「そういう解釈はおかしい」と突っ込んで欲しいくらいである。

ワクチンの供給や副反応についての情報に注目が集まっているが、接種の効率化についても情報公開と抜本的な改善が望まれるのではないだろうか。前述のような長い行列が現実化しないことを期待したい。

進捗率を定点観測するため、「ワクチン接種プログレスバー」※を制作し公開している。Twitterのハッシュタグは「#ワクチン接種プログレスバー」である。更新があればできるだけ速やかにツイートしたいが投稿は自動的でないので皆さんでウォッチしていただくと嬉しい。
(※)4/19に公開サーバとURLを変更

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追記:下記の公的情報も注視していきたい。

ワクチンを受けるには | コロナワクチンナビ | 厚生労働省
これまでの情報一覧 | 首相官邸ホームページ
コロナワクチン接種の手順・流れ 現段階の見込み|NHK

追記 :(2021/04/16 15:15)

最後までお読みいただきありがとうございます。ありがたいことに非常にたくさんの方に記事をご覧いただき、たくさんの反応をいただいています。多くの方が接種速度の今後の推移に注目することがまずもって大事かと思います。この2日間だけで多様な視点・情報が集まり、速度の今後の変化について注目すべきポイントや示唆を得ました。現在、それらを踏まえて追加的な分析を行っています。近日中に続編を書きます。

追記:(2021/04/21)

この記事の続編を書きました。「長いワクチン待ちの行列はどのように消化されていくのかについて」)

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