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はっちゃんのお弁当

今住んでいる近所に、焼き鳥屋がある。
最寄り駅近くで、道に向けて焼き台があり、昼前から夜遅くまでもくもく煙上げて鳥を焼いている。
それを見た時、たまに、決まった友達の事を思い出す。

幼稚園に通ってた頃の話。
みんな、お弁当を持って通っていて、お昼は幼稚園で配られる牛乳とお弁当を食べていた。
当時、私の好きな食べ物は、タレがかかっていたもの全般で、
ミートボールだったり、ハンバーグだったり、焼き鳥、焼肉、うなぎといったものだった。
お弁当には、母親に頼んで、イシイのミートボールがよく入っていた。

「はっちゃん」という友達がいた。
秘密のアッコちゃんのよしこちゃんの弟に似て感じの雰囲気の子。
いつも遊ぶ友達じゃなかったのに、強烈に覚えている。

はっちゃんは、お弁当が焼き鳥の時がよくあった。
昼前にお母さんが慌ててきた感じでやってきて、はっちゃんに焼き鳥を届けにくる場面が何度もあった。
はっちゃんは、実家が焼き鳥屋の子らしかった。

若い頃からずっと、焼き鳥を食べたいと思うと、「はっちゃんだったら、毎日焼き鳥食べれるんだろう。羨ましいな」と思った。
小学生の頃、東京から大阪に引っ越しても、焼き鳥屋のはっちゃんに対する羨ましさは消えなかった。

そして、いい年齢になった今、毎日食べるものがほぼ焼き鳥だった場合、どんなにツライだろう。と思う。思える。

今にして考えると、はっちゃんの実家が焼き鳥屋であった事も疑わしい。
ただ、手を抜いたお母さんが近所で調達して届けるのに便利だったのが焼き鳥だったのかもしれない。

食にまつわる話って、幼い頃からずっと頭に残ってることが多い。
毎日同じものを食べるとうんざりしてくるし、カップラーメンでもタイミングによってはめちゃくちゃ美味しかったりもする。
ただ高いものを食べればいいだけじゃなくて、ここというタイミングで、まさにそれというものを食べることができる事。
そう動ける事が、今は憧れかもしれない。

一連書き出してみて、はっちゃんの呪縛から解き放たれた気がした。

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