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【XSpaceArtTalk】R.I.P. ポスト・ミニマリズムの巨匠、リチャード・セラを紹介 2024年4月10日放送分

XSpaceArtTalkは、X(旧Twitter)のスペース機能内で
私現代美術家のMasakiHaginoを語り手として、東京美術館巡り(@tokyoartmuseum)さんと世界中の現代アーティストを紹介、解説する第2第4水曜日21時より開催している1時間番組です。

アーカイブはそのままTwitter上でも聞くことができますし
Podcast「ArtTalk-アートトーク-」の方でもアップ予定です。
この記事では、番組内で挙げる画像や、情報の物置場としてまずは公開しています。
記事まとめはイロハニアート(https://irohani.art/)でもアップ予定です。



4月10日21:00からは、先日惜しくも亡くなってしまった、ポスト・ミニマリズムの巨匠、リチャード・セラをご紹介します。
Xアカウントをお持ちでない方も下記URLから直接聞くことができます。本記事と合わせてご拝聴ください。
https://twitter.com/i/spaces/1vOxwjNQmlWJB

Richard Serra リチャード・セラ

Richard Serra (1938年11月2日 - 2024年3月26日)。享年85歳。
リチャード・セラの父親はスペイン系移民で、サンフランシスコの造船工場で配管溶接工として働いていた。セラ自身も早くから金属加工に親しみ、学生時代には製鉄所で働いていたという。1957年にカリフォルニア大学バークレー校へ入学。1961年に同大学サンタ・バーバラ校で英文学の学位を得て卒業、つづいてイェール大学大学院で絵画を学び1964年修了。いくつかのフェローシップを得てフランスとイタリアで過ごしたのち、ニューヨークへ移った。(wikipedia)

1968年に、伝説的なギャラリーLeo Castellli Gallery*に見いだされ個展。
* Leo Castelli Galleryとは
R・ラウシェンバーグとJ・ジョーンズの個展を企画してキャリアをスタートさせると同時に抽象表現主義一辺倒のニューヨーク・アートシーンに一石を投ずる。以後、ロサンゼルスやシカゴ、あるいは海外のディーラーとの間にネットワークを形成して現代美術の若手作家をプロモートするという新しいアプローチを初めて取り、それまで作家の扱いに関して閉鎖的・独占的だったアート・ディーラーの意識とシステムを一変させた。R・リキテンシュタイン、A・ウォーホル、C・オルデンバーグやJ・ローゼンクイスト、またR・モリスやF・ステラ、E・ケリー等、ポップ・アートやミニマリズム、コンセプチュアル・アートの中心となる作家を多数プロモートし、60年代のアメリカ、ないし現代美術シーンを代表する画廊となる。
(https://artscape.jp/dictionary/modern/1198342_1637.html)

日本においては、1970年の東京ビエンナーレに作品出展。94年には大阪の国立国際美術館で回顧展を開催。同年には高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門も受賞。2000年、第49回ヴェネツィア・ビエンナーレで現代美術部門の金獅子賞を受賞。

2010年、スペインのアストゥリアス皇太子賞芸術賞受賞、2015年にはフランスのレジオン・ドヌール勲章を授与されている

ミニマリズムとは

ドイツの抽象主義、オランダのDe Stijl、ロシアのシュプレマティズム。
カンディンスキー、モンドリアン、マレーヴィチ。1910年頃から、絵画はシンプルな形態や幾何学模様を用いるようになった。
アメリカでは、1950年頃からアメリカン・アブストラクト・アーティストなども誕生し、その代表的作家のヨゼフ・アルバースはドイツのバウハウスで学んだ後、Black Mountain Collegeでも教鞭を取り、バウハウスの芸術理論をアメリカに伝えた。彼の教え子にはラウシェンバーグ、サイ・トゥオンブリらがいる。

そしてポロックなどのアクションペインティングがアメリカに誕生した。後にミニマル・アート/ミニマリズムの代表的作家となるドナルド・ジャッド(Donald Clarence Judd、1928- 1994)は、その感情をぶつけるような動的な作品様式を半ば否定的に捉え、感情などが反映されやすい絵画形式から離れた、立体作品を作るようになった。1965年には彼は自身のエッセイでこれらの作品形態のことを、「Specific object」とした。
ジャッドはその中で、美術作品についてこう述べている。

It isn’t necessary for a work to have a lot of things to look at, to compare, to analyze one by one, to contemplate. The thing as a whole, its quality as a whole, is what is interesting. The main things are alone and are more intense, clear, and powerful.

作品が多くの要素や比較する対象、一つずつ分析したり、熟考したりする必要はありません。全体としてのもの、その全体としての質が興味深いのです。主要なものは孤立しており、より強烈で、明確で、力強いものです。

https://juddfoundation.org/wp-content/uploads/2016/04/Specific_Objects_1964.pdf


ポスト・ミニマリズム

ミニマリズム以後(post)の60年代末から現われた彫刻の動向のこと。代表的な作家にエヴァ・ヘス、ブルース・ナウマン、リチャード・セラらがいる。この語の初出は、ヘスに関するロバート・ピンカス=ウィッテンの1971年の論考(「Eva Hesse: Post-Minimalism into Sublime」)である。のちにピンカス=ウィッテンは、ポスト・ミニマリズムを主題とした書物も著わしている。彼は、ヘスに代表されるような身体的な触覚性を喚起する柔らかく脆い素材の使用と制作のプロセスを強調する作品の登場は「ミニマリズムに典型的であった寡黙な無表情性と色彩的アピールの欠如に対する反動」であると指摘した。こうした作品においては、ミニマリズムの作品で多用された堅い工業用素材に代わって素材の可塑性、重力、時間的プロセスなどに焦点が当てられ、結果として予期されない形態の発生や、観者の知覚や体感へと波及する作品の力学的強度などが探求された。また、批評家R・E・クラウスは、キャンヴァスを床の上に拡げ、激しいジェスチュアによって制作するJ・ポロックの制作行為に注目し、R・モリスやR・セラの作品においては、ポロックの身体性や水平性、現実的で物理的な時間や重力などが導入されている点を指摘している。

https://artscape.jp/artword/6769/


Tilted Arc

空間は私たちにとって最も貴重な資源のひとつである。空間がなければ、私たちはどこに住めばいいのだろう?しかし、私たちは空間を探索し、空間を売買し、空間を装飾し、空間を自分のニーズに合うように再配置することで、自分自身を定義することもできる。しかし、私たちの生活において、空間は非実用的な機能も持っているのだろうか?アーティストのリチャード・セラは、そのキャリアの大半を、物理的空間と人間の形而上学的な結びつきという主題の考察に費やしてきた。彼は、絵画、ドローイング、ビデオ、パフォーマンス、執筆、ダンスなど、多分野にまたがるアーティストである。しかし、リチャード・セラの彫刻作品は、人類と周囲の環境との関係を再定義するものである。幼少の頃から溶接工だったセラは、主に鉄を素材とし、単に空間を占有するだけでなく、その本質を根本的に見出そうとするモニュメンタルでサイトスペシフィックな作品を制作している。

1981年、ニューヨークのフェデラル・プラザにアメリカ政府から依頼された彼の代表作のひとつ「ティルテッド・アーク」は、その芸術的目的と公共空間への影響について激しい議論を呼んだ。長さ120フィート(約36メートル)、高さ12フィート(約4メートル)のこの作品は、広場内の移動が妨げられるように配置されたため、人々は広場を横断するために彫刻の周りを歩いて、この彫刻と関わることを余儀なくされた。1985年、この作品に対する無数の苦情に関する公聴会が開かれ、その後セラが異議を申し立てた後、この作品は1989年に破壊された。

Te Tuhirangi Contour

Te Tuhirangi Contour (2000-2)は、ニュージーランドのカイパラにあるギブス・ファームの広大な牧草地にある。彫刻は高さ20フィート(6メートル)、長さ844フィート(257メートル)あり、なだらかな丘陵地帯、膨張と収縮を繰り返す地形に沿っている。彫刻の高さは土地の傾斜に対して垂直である。

The Matter of Time (2005)

2005年、スペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館で、コミッションによるインスタレーション「The Matter of Time」がオープンした。1994年から2005年までの10年間に制作された8つの彫刻からなる「The Matter of Time」は、セラの彫刻のフォルムの進化を浮き彫りにしている。セラは、最初のトルーク楕円から派生した5つの彫刻、すなわち、1つの単一楕円、1つの二重楕円、そして3つのトルーク螺旋を展示することにした[63]。トルーク螺旋は、二重楕円の後、セラが二重楕円をつなげて、中に入って歩くことができる1つの巻かれた形態にすることにしたものである。「時間の問題」の残りの彫刻は、1つのクローズドな彫刻(ブラインド・スポットの反転)と1つのオープンな彫刻(トーラスと球体の間)のトーラスと球体の彫刻、そして3つの部分からなる「蛇」であり、それぞれが互いに反転した2つの同じ円錐形の部分からなり、全体で104フィート(31.7m)に及ぶ。彫刻はセラによって意図的に構成されている。鑑賞者が空間内を移動する方向によって、スケールとプロポーションが変化する感覚と、時間の経過に対する意識が生まれる。

Equal (2015)

https://www.moma.org/collection/works/193590

Equalは、2つ1組で積み重ねられた8つの鍛造スチールボックスで構成されている。それぞれの箱の大きさは5×5.5×6フィート、重さは40トンの直方体だ。積み重ねられた箱と別の箱を区別するために、セラは箱の短辺と長辺の位置を回転させている。個々の部材の向きは異なるが、それぞれの積み重ねの高さは11フィート(約1.5メートル)。巨大な彫刻は見る者を圧倒し、その崇高さの中で思索を誘う。


Masaki Hagino
Contemporary painting artist based and work in Germany and Japan .
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Web : https//masakihagino.com
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Podcast : ART TALK Podcast
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Opensea : @MasakiHagino



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