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リリとロロ 「匂いのゆくえ」 ③



くすぶる




私自身だけが自分の匂いをこうも嫌うのか。

皆は自分の放つ臭気について如何に思い、日々を過ごすのだろうか。

また、私の匂いをどう感じているのだろうか。

その目尻に皺の寄った顔の裏側には、

授業中私の背後にあるはずの真剣な眼差しの裏側には、

体育で仲間と笑い合いながら眉に乗った汗を拭うその裏側には、

一体どれくらいの悩みが隠れているのだろうか。


そしてどれくらい私の匂いを気にしているのだろうか。



ただ、私が過敏なだけかもしれない。

「くさい」ということを忌み、過度に反応しているだけかもしれない。


そもそも「くさい」というのはどういった状態を指すのだろうか。


自分は他人にとって「くさい」のだろうか。


思考が鈍化していく。




私は私の匂いが嫌いだ。

私の匂いを誤魔化すために、私から程遠い匂いを纏い、それに満足できない私が嫌いだ。

それは胸も尻も脚も腰も顔も、全てが私とは大きく違う、なれもしないグラビアアイドルに思いを寄せているかのようで、自分が滑稽に映る。


私から何を奪えば良い匂いになるのか。


私がどうなれば良い匂いになるのか。



愚鈍化した悩みはそれだけで私に重くのし掛かり、日々を支配していった。

自分が男性だったらここまで気にかけてはいなかったかもしれない。

いや、ここまで早く気付くことがなかっただけかもしれない。

そこに性の垣根はなかったかもしれない。



何の解決にもならない自問自答と共に、憎たらしくも月日は流れていった。

正木諧 「匂いのゆくえ」

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