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生きやすさをつくる『弱さの情報公開』

思いを引き出すインタビュアー、鯨井啓子です。

今日は『いのち図書館』に掲載させていただく、お産のインタビューに協力していただける方募集の記事を書こうと思っていたのですが、取材先でカメラマンさんと盛り上がった話があったのでこちらを先に書こうと思います。

相変わらず、多くの方がおっしゃっていることで目新しいところがあるわけでもありませんが、やっぱり大切なことだと思うので、私の言葉で発信します。

■『嫌なことをやらない』がすべての基本
■自分の心身の感覚をしっかりと見つめる
■『嫌』は自己申告制

『いのち図書館』に興味を持ってくださった方、こちらをぜひご覧ください。

カメラマンさんと盛り上がったトークテーマは、弱さの情報公開についてでした。これは、以前に書いた『個人の自由が尊重され、それぞれが自立し、ゆるやかに依存し合える共生社会をつくりたい』という記事の中でも、3つめの柱に上げている内容です。

■『嫌なことをやらない』がすべての基本

こどもの頃から非常に繊細な感覚を持て余し、不登校体質をなんとかごまかしつつ大人になってきた私です。ただ、今は心身ともに、非常に生きやすい環境下に生きています。それは日常生活の中でできるだけ『嫌なことをやらない』で済むように生活の仕方、働き方を工夫し、苦手を補い合える人間関係を作ってきたからだと思っています。

こういう話をすると、まず『好きなことをやる』ということにフォーカスする方がいらっしゃいます。それもひとつのやり方だと思うのですが、私が人生に行き詰まりを感じたときに手を付けたのは、むしろ『嫌なことをやらない』ということでした。

それは、好きなことをやるより、嫌なことをやる方がはるかにハイカロリーだからです。嫌なこともいっぱいあるけど、好きなこともしているという状況下だと、使うエネルギーがすさまじいことには変わりがなく、疲れ果ててしまうので好きなこともなかなか楽しめなくなるのです。

嫌なことを少しでも少なくしていくことで、余剰のエネルギーをつくることがまず大事。そのうえで、余ったエネルギーを好きなことに注ぐ。その方が精神的にも肉体的にも充足できる。私はこれがいちばん効率の良い方法であると思っています。

■自分の心身の感覚をしっかりと見つめる

では、嫌、不快と感じることにはどうやって気づけばいいのでしょうか。そのためには、自分自身の心身の感覚をしっかり見つめ続けていくことが必要です。一時期強烈に嫌だったことが、ある程度ストレスが緩和されてくると、意外と違和感なくできてしまうことに格上げされることもあります。だとすれば、大切なのは『今の嫌』です。

でも残念ながら、分刻みのスケジュールで頭をフル回転していたら、『今』の感覚は見つけずらいのです。だから、仕事の後の散歩とか、お風呂とか、何か頭を空っぽにできる時間を意識的に持つことも大事。そして、せっかく見つけた『今の嫌』を、様々な理由で封じ込めそうになる自分がいたら、なんとか封じ込めないで済む方法を考えるのです。それは多くの場合、まわりからどう見られようとかまわないと腹をくくることです。

■『嫌』は自己申告制

私はとても耳が敏感にできているようです。様々な音が溢れている環境だとすぐに疲れてしまうので、カフェとかで仕事もできません。こどもの頃は逃げ場がない教室が苦手だったし、大人になってもオフィスで仕事ができないのはこの耳のつくりが大きな原因だと思っています。

大きな音も苦手だけど、現在鋭意『一万人の第九』に参加するためのレッスンにも通えているくらいなので、音の方向が一方向であればそんなにストレスは感じないようです。けれど、ごちゃごちゃといろんなところでいろんな音が鳴っている環境だと、1日8時間もいればクタクタになってしまうだろうし、1ヶ月も通い続ければ倒れられる自信があります(自信!?)。

ということを、私がことばにしないままに、まわりの人たちに配慮してもらうということはなかなか難しいことです。大きな音ダメって言ったじゃん!第九もダメじゃないの!?なんだそれー!と言われたら、そうですよね。そう思いますよね。と私も答えると思います(笑)。

しかも、さきほど書いたようにこれは『今の嫌』なのです。ある日突然、そんなことどうでもよくなるかもしれない可能性は、誰にも分からない。

だから、お互いに緩やかに『今の嫌』を伝えって、配慮できる社会になったらいいなと思うのです。声の大きな人の主張ばかりが尊重されるのではなく、みんながお互いに配慮し合えれば、「私はこんなに配慮してあげてるのに、相手は何もしてくれない!!!」という、ますますストレスを増やす事態も、そのことでねじれた感情を抱くこともなくて済みます。

みんながお互いに、お互いを大切にする体験を提供し合うための基本は、自己申告された『今の嫌』になる。だからまず、ひとりひとりが自分の『今の嫌』を把握し、自己開示していくところからやさしい社会は作り始めることができるのだと思っています。

そんな社会の空気が醸成されるにはちょっと時間がかかるかもしれない。だとしたらまず私が率先して、弱みを晒していく人であろうと思います。強がらないでも、誰かに合わせないでも、みんながそれぞれの存在のままで生きていける世の中になりますように。


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