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台北の花博会場が、タレント&デザイナーにより音楽×食×芸術の商業施設に!その昔は、野球場?足球場?いやそこは、日本統治時代に建てられた競技場だったのです。最強レガシー伝説を見るべし!

この日もたんまり歩きまくって、あっという間の夜。連日夜市もいいのですが、なんか面白そうな地元のスーパーないかな?と、Googleマップ上で見つけたのは、「神農市場 MAJI FOOD & DELI」というスーパー。閉店1時間前だけど行ってみよう!と、圓山駅へひとっ飛び。(中心部から行くと、圓山は士林のちょっと手前)

駅のホームから見ると目の前には広大な公園が広がっていました。右手にスタジアム? かの有名なホテル「圓山大飯店」は、左の奥の方に。

花博公園の文字。そうか、ここは花博が行われた場所だったんだ。ってことは、花博会場を活用しているってことなのかな? 向こうには、スタジアムのような円状の建物が建っていて、そこへ吸い寄せられるように歩いて行くと。

もう閉まってしまっていたマーケットが広がるエリアを過ぎると、だんだんと賑わってきて。

あった!「神農市場 MAJI FOOD & DELI」。けど、その前に気になるのが、左手に並ぶショップ群。

おぉ!!ぜんぶコンテナの側面をくりぬいて、屋台的なお店があるじゃないですか。

この通りずらりと!!屋台スケールのお店が連なっていて、台湾名物は一通り揃っているんじゃないでしょうか。片っ端から食べたくなってしまします。この時点でフードコートの新しい形式ですよね。これグランドレベルとしてもずっと妄想していたことだけど、すでに実現していたわけです。1店舗あたりを最小限におさえてしまえば、賃料が下がり事業者はトライしやすくなるし、消費者からしてみたら、選択肢が増える分、楽しくなる!

さて「神農市場 MAJI FOOD & DELI」は、いわゆる自然食品系のスーパーで、雰囲気は成城石井のような感じ。

台湾産のものがセレクトされたいるので、あらゆる食料品に目移りしまくりで楽しい。

雑貨もあったりして、こういうものも、台湾の文化に根ざしたものだと説明があります。

本当はデリも中にあるのだけど、この時は閉店間際なので、閉まっていました。どう考えても美味しそうなので、もしこれから行く予定のある方は、ぜひ行ってみてください。

超紅茶党なので、もちろん台湾紅茶も購入。

食器もかわいいし。

台湾の雑貨屋でよく見かける網トートも、ここでは特別「MAJI」のタグに変わって売られています。友人たちへのお土産購入も済ませてと。

ぐるっとまわって帰ろうと思ったら、メリーゴーランドが登場して、なんだかテンションが上がり。しかもこのメーリーゴーランド、このエリアのレシートで乗れるという素晴らしいシステム。そっか、ここ全体は「Maji Maji 集食行樂」という商業施設なんだな。

だからその先でも、夜市のごとくクリエイティブショップエリアというショップ群が続き。

そこを抜けると、広場があってまわりにはレストランが。良い感じでアコースティックライブをやっているわ。レストランでは、グラス片手に盛り上がっています。パブ的なお店は、台北に住んでいるのであろう欧米人のサロンになっていてすごい賑わいに。

もう閉店間近なんだけど、さらに奥へ行ってみよう!

ダンスの練習をしていた女子高校生たちがいたりして!! 

さらに奥でも、踊っています!! 上に傾斜しているのは、客席部分? いや〜アツい不思議な場所だなぁ。けど、ほとんどのお店が閉まり始めてしまったので、さて、帰りましょうか。と、駅へ戻りはじめると。

大きく広がる公園の真ん中に、ケニーGばりの美しいサックスの音色を大音量でとどろかせるおじさんを発見しました!

まさにパーソナル屋台そのもの! 即席の台にPA機器とノートパソコンをひろげ、四方にはスピーカーを備えるという、まさにおじさん独自のサウンドシステム。

ノリがいい曲になると、おばさんたちとか踊りはじめてしまうし。

一曲終われば、よかったわぁ〜、と手渡し投げ銭。

涼しい夜風に、おじさんのサックス、たまに松山空港に下りるジャンボジェットが至近距離を通過する下で、自然と踊り続ける市民たち。なんて美しい光景なんでしょうね。

そして、田中もおじさんに投げ銭を。あまりに心地よい時間で、楽しくて、結局最後の最後まで一時間ほど聴いてしまいました。

で、さらに驚いたのは。

拍手に包まれながら、終わったかと思ったら、いかにも行政の真面目そうな人が2、3人現れて、さっそうとおじさんのサウンドシステムを片付けはじめるじゃないですか。あぁ、そうかこれはまったくゲリラではなく、オフィシャルに組まれたイベントだったのだなと。

踊っていた人同士も、みんな知り合いで、あーだこーだと雑談してらっしゃる。

地図で位置関係を説明しますね。地図の右下側に駅があって、おじさんがいたのは商業施設と公園のエッジ部分「入口」って書いてあるところ。MAJIは、青いドーナツ状の建物の左側。中央置くのレストランマークが広場だったところ。みんな踊っていたのは、ドーナツ状の中の広場ですね。

花博会場跡地の活用をタレントとデザイナーが投資!?

いや〜、これまた結構感動したわけです。建物のほうは、こじんまりとした平屋のモールみたいな感じですよ。それが公園や広場に隔たり無くつながっていて、そこかしこにあらゆる世代が各々に楽しむ姿があるんですから。またしても、すごい商業施設を見せつけられて。っていうか台北の商業施設おかしくね〜かと。

で、「ありがとう!圓山!」とココロの中でつぶやきながら、電車に乗り、iPhoneで、このエリアのことを調べはじめるわけです。

そうしたら、こんな情報が...

Maji Maji 集食行樂は台湾のマルチタレント、庾澄慶 (ハーレム・ユー)が友人の著名デザイナー、葉裕清とともにデザイン・投資して実現させたクリエイティブ広場です。文化、音楽、グルメ、農産品、パフォーマンスアートが融合する商店街には、約50店舗が入居しています。Maji Maji 集食行樂の「Maji」は中国語の麻吉(親友の意味)の韻からとったもの。気の合う仲間と一緒に遊べる、大人の遊園地がテーマだそうですよ。(http://www.tabitabi-taipei.com/more/2013/0731/index.phpより)

タレントとデザイナーが、デザイン・投資っておい!! いやーすごい。確かにあのディレクション力と、絶妙な補助線を引くデザイン力が半端なかったよなぁ。それにしても、花博という国家的イベントのその後の活用を、こういう人たちが中心になってできてしまう土壌そのものもすごい。行政もクリエイターも、それぞれがまったく蛸壺化していないことがわかります。たとえば日本では、そんな展開どうしても想像できませんもんね。

どこを取ってもすばらしい台北。

※デザイナー・葉裕清さんのレクチャー。途中で「Maji Maji 集食行樂」についても触れられています。


しかし、このエリアの真骨頂はそこではなかった

けど、先ほどのマップの青いドーナツの部分が、どうにも競技場の客席のように感じていたんです。けど、全体としては新しい施設。いったいどういう経緯でできたものなのだろうと、さらに検索を深めていくと、こんな記事が出てきました。

ここは旧中山サッカーグラウンド(中山足球場)跡地にできたのですが、以前の観客席が今は「花の虹」に大変身。(http://www.taipeinavi.com/special/5031761より)

やっぱりそうか。ここサッカー場だったんですね。それが、花博の際に、下の写真(photo=Smilelee)のように観客席いっぱいに花が飾られて、昔フィールドであったであろう場所は広場となり、そこから来場者が観覧する形にリノベーションされたのです。

うーん。なんて素晴らしいんだと。さらなる感動に浸りながら、思わず今度はサッカー場のことについて調べはじめた。そしたら、今度はとどめの事実が!!

なんとこの施設は......

1923年、日本統治下の時代に建てられた「圓山運動場」(まるやまうんどうじょう)という施設だったのです!! 当時は、野球、テニス、陸上など、さまざまな施設が集まっていたんだって。

(photo=Tianmupeter)

その後、日本の統治が終わると、野球場として使われるようになり、1989年にはサッカー専用スタジアムへ。2万人を収容できるスタジアムは、時にはコンサートなどにも活用されていたのだそう。

その後、2008年に閉場。

そして、

さらにそのときのハードを再度活用する形で生まれたのが、2013年6月にオープンした商業施設「MAJI MAJI集食行樂」というわけだったのです。

つまり、約100年前に建てられたスタジアム建築を、その時代に合わせながら用途を変え使い続け、さらにそれをリノベーションすることで花博の会場として活用し、さらにそこでつくられたハコが、新しいコンセプトと絶妙なディレクションによって、台北市民と海外旅行者にも愛される複合施設として生まれ変わった。←今ココ、ということなんです。


台湾の人たちは、レガシーとは何かを知っている

近年は、オリンピックのたびに「レガシー(遺産)」というワードをよく耳にするようになりましたが、この「圓山運動場」が「MAJI MAJI集食行樂」へと移行する約100年の流れって、どの事例より圧倒的に理想的なレガシーの築き上げ方をしてきたプロジェクトなんですよね。

その基本にあるのは、ただ古いモノを残しましょう、活用しましょう、ということではなく、古いモノをリスペクトしつつ、きちんとその時代時代に求められていることを取り入れながら、常に変わり続けていくという視点です。

さっき、女子高生たちが踊っていたり、ケニーGおじさんがいたりしましたが、その昔、イベントごとのない週末は、市民に無料で開放されていて、各々が好きな運動をしてすごす光景で賑わっていたそうです。そう、ただハードを受け継ぐというだけではなく、たとえばその場に昔から在り続けてきた“市民の能動性”そのものも、レガシーとして受け継がれてきたというわけです。

台北のこれまでのレポート然り、今回のレポート然り。都市やまちをつくることも、商業施設や文化施設をつくることも、最終目標が売り上げや動員じゃない。それよりもずっとずっと上位に、“人間たるもの、こういう幸福感につつまれるべし!”という理念と哲学を、台北には感ざるを得ません。ハードとソフトといった単純なつくられ方ではない、台北のいきいきとしたエリアづくりには、相当に学ぶべきことがありそうです。

さらに、この日は回りきれなかったのですが、公園と連動する形で、このエリアの周辺には、台北市立美術館台北孔子廟などの史跡がたくさんあって、台湾文化やいろんな現代建築にも触れらるんです。

うーん。タイペイ。果てしなくスゴイ。

スゴスギル。。


大西正紀(おおにしまさき)
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