もしも、「喫茶ランドリー」の「ランドリー」が「資源ごみ回収拠点」に替わったら?アミタが南三陸町で行った実証実験。駐車場に現れたすばらしき「喫茶ランドリー」的光景とは!?

「喫茶ランドリー」には、お店の奥に洗濯機・乾燥機、ミシンやアイロンを備えた「まちの家事室」があり、来店者の多様化と店内のコミュニケーションの活性化に一役をかっています。でも、私たちがいつもお話しするように、「喫茶」や「ランドリー」という機能だけが、この全てを決定づけているわけではありません。

ぶっちゃけ何でもいいんです。その土地、その場所に見合った、「何か」がフィットすればいい。あくまでその魅力的な選択によって、そこに「喫茶ランドリー」的な人々の会話と、能動性があふれる場所を生み出すことができます。

「喫茶ランドリー」を体験したひとの反応には、大きくふたつのタイプに分かれます。

ひとつは、「喫茶」と「ランドリー」の組合せ面白いね、という方。

もうひとつは、そこにとどまらず「喫茶ランドリー」の向こうに、自分たちが関わる場や施設を重ねて見てくださる方々。「あぁ、これは私たちにとっても理想の状況だ」「これを私の場でもつくらなくては」と思ってくださる方々です。

今回出会った、株式会社アミタの皆さんもそうでした。出会いは「喫茶ランドリー」をはじめてすぐの2月頃のある日。開店と同時に来店してくださったアミタの方々は、私たちが出社すると、すでにママスタッフと意気投合していたのでした。

その後、私たちとも意気投合したのは、言うまでもありません。そして、翌月、私たちは南三陸へ向かいました。

さっそく南三陸へ飛んでみた

場所は南三陸町。写真は、2011年当時、被災直後に現地へうかがったときのもの。

あれから7年、この3月に久し振りに南三陸を訪ねました。流された街のほとんどは高台移転となり。低地部は今なお整備が続いていました。復興にはほど遠い光景がただただ広がっていました。

アミタさんは、被災直後から南三陸へ入っていき、まちの方々とコミュニケーションを持続させながら、生ごみを資源化させたり、各地域でゴミの分別を導入することを試みられてきました。ゆくゆくは南三陸の街全体で資源循環をつくることを目指しているわけです。

でも、話をうかがっていくとアミタさんの目的では資源ゴミを回収し循環させるビジネスの話に留まらないことがわかってきました。ゴミを分別するということの周辺にある人々の営みやコミュニティを支えていきたいという意思もある。それは、「喫茶ランドリー」の喫茶や洗濯、家事に対する考え方が、その行為に留まらないのと同じだと感じました。

だから、私たちは思ったのです。たとえば、街のいたるところにつくられている資源ゴミ回収拠点に、少しでもひとが佇める状況をつくることができれば、そこには必ず小さな会話と関係が生まれるはずだと。それこそが、このエリアに最も必要なものだと。

「喫茶ランドリー」の「まちの家事室」が「資源ゴミ回収拠点」に変わったら?その光景に夢を膨らませていきました。

実際に実証実験をすることになった

アミタさんの本気度と行動力の早さには驚かされました。次の半年で、エリア一帯のさまざまな場所を検討され、最終的にある駐車場を借りて実証実験を行うことなったと連絡がありました。そこで、9月に改めて訪ねると、こんな場所でした。

福祉施設があって、右側には大きな駐車場が広がっています。向こう側には手塚貴晴さん+由比さんが設計されたによる「あさひ幼稚園」があり、背後には低層の高齢者向け住宅が建てられ、また周辺には住宅地が広がっているようなところです。

アミタさんからのオーダーは、資源ゴミの分別回収所を中心として、市民が集いやすい空間づくりのアドバイスをくださいというものでした。

正直、建物の中ではなく、屋根もなく、道路や歩道からセットバックしているなど、懸念点は多かったのですが、この場に、「資源ゴミ回収」を介した「喫茶ランドリー」のような場所を創り出そうと考えて行きました。

事務所へ戻って、基本的な空間のレイアウトを一気に書き込んでいきます。ハードとソフトについては、すべてこのホワイトボードにすべてを書き込んでいく。今回の場合、ここでのポイントはざっくりと大きく2つでした。

・スタッフは社員ではなくひとりの人間として立ち、その場を自分たちの手で作り込んでいくこと
・ゴミを持参する市民が事後的に関われる余白を意識し、その場に応じてソフトやサービスを複数つくり続けること

あとは、コミュニケーションのデザインについてです。服装から立ち振る舞い、声のかけ方、ちょっとした飾りやインフォメーションの設えについても、事細かに注意すべきことと、逆に(クライアントサイドが気にしがちだけど)まったく気にしなくても良いところを(飲みながら話伝える形で)お伝えし、私たちは東京へ戻りました。

そして後日、実験の場がはじまり、1ヵ月ほど経ったころに再訪しました。

そうしたらこんな光景が広がってた!

駐車場の奥に、設置されたテント。左は資源ゴミ回収のテント、手前の赤いテントは受付、その前に地元の野菜が並んでいます。この仮設の施設は「MEGURU STATION」と命名されていました。

中に入ると、実に綺麗に資源ゴミが仕分けられています。そこからも、来る方がただポイッと捨てに来ているだけではない、ゴミの扱いに妙な愛を感じるのです。そうこうしている間にも、ポツポツと市民の方がいらっしゃる。

で、外に出たら、「こんにちは〜!!」と話しはじめる地元の方々。きっと毎日いらしているんだろうなぁ。手前に見えるガーランド、指示通りオープン時にアミタの方がお手本をつくったら、やはり地元の方が少しずつつくってくださるようになったそう。

受付の手前の野菜コーナーは、地元の取れたてを農家の人が持ってくるんだとか。毎日変わるから、来るひとは、まずここをのぞいてるみたい。この設えも、きっとこの1ヵ月で日々変わってきたこはず。

ゴミ捨てがポイントになる実験もされていて、なんとこんなカワイイ花がもらえてしまったり。

そして、資源ゴミテントの隣に目をやると...

火をくべてる!おじさんが暖炉に絶対にこの所作は、常連の所作!!ゴミを捨てる横には、暖炉でリビングをつくりましょうと提案したら、こんな感じにつくってくださっていて。ここは言うなれば、喫茶スペースの代わりです。寒くなりはじめた時期だから、自然とここに集まってくる。そこに鍋を置いておいたら、やがていろんな人がイモを持ってきて、ふかしては振る舞ってらっしゃるそう。

すると、今度は隣で「コーン!コーン!」と音がして...

これまた別の今いらしたおじいさん。薪割りにチャレンジ!「この道具簡単に割れるねー」と言いながら。すると火をくべてるおじさんとも自然と会話がはじまって。後ろの蒔きの山もしっかりアイキャッチになっています。

少し離れてもどるとまた、違うひとが来てる。いやぁ。。すばらしい。ゴミを捨てに来るだけの場所に、新たな設えが加わるだけで、こういう光景が生まれる。これです!これ!

小さいところまで気を配ることが大事。こういう黒板で、可愛く伝えましょう!と言ったら、随所に。こういうもの一つひとつに人は反応するものです。

そして、ふと横に目をやると...

ここにも会話の輪が!薪と暖炉のリビングスペースの横にキッチンカースペース。この日はクレープ屋さんが来ていて、そこにも人が集まってくる。

で、その向かいには、リユースの棚をつくりましょうよと提案しました。まだまだ使えるものをどうぞと0円で提供するコーナー。「めぐりん棚」という名前も最高です。「モノと気持ちが巡る」見出しも最高。

できるだけ既製品の什器は使わず、できるだけDIYか、せめてありものをアレンジしてつくって欲しいと伝えました。こういう風に場の器を設えていくアミタの社員さんの能動性をグッと引き出す指示も大切なポイントです。

このコーナーおそるおそる反応を聞いて見たら、これが以外と好評なのだとか。

モノがあれば、こうして知らない人同士で自然と会話がはじまる。

リユースの洋服のコーナーは、こうして綺麗に分けられています。資源ゴミの分別の延長なのだけど、心のやりとりがここにもある。

こんなノートが用意されていて。

一つひとつ持ち帰ったものには、メッセージが残されています。

「喫茶ランドリー」のママさんスタッフのように、「MEGURU STATION」にも期間限定の地元のスタッフさんがいらしていて、丁寧にリユース洋服を飾ったり、整理されたりされていました。喫茶と同じように、能動性高く働かれている方は、働いているという感じがしません。気軽に話しかけられる空気を醸し出している。おそらくご本人も、楽しいからやっているという感覚のほうが大きいはずです。

するとまた、ゴミと一緒に来るまで来た方が歩いてきて、自然と会話がはじまります。

スタッフではない方が掃除をしてくださっていたり。本当に「喫茶ランドリー」みたいだ。

そしてまた、ゴミを捨てにやってくる。もう無限ループで「ゴミを捨てにくる」→「小さなコミュニケーション」が、そこかしこに生まれ続けています。なんてすてきな場なのでしょう、ここは!!

この素敵なママさんが、これまでのこと少し話してくださいました。「みんな楽しそうに話しているけどね。ここに今日来ているほとんどのひとは、震災でいろんな被災にあったのよ。家を失った方はもちろん、ほとんどの家族を失ったひと、未だに家族が見つからないひとだっているの。街もすべてが流されて、日常的に行ける場所なんてほとんどない。そんなとき、この「MEGURU STATION」ができて、本当に嬉しかったの。だからこうして毎日のように来るのね。2ヵ月限定って聞いてるけど、それでなくなるなんて、私、絶対に許さないわ(笑)。私本当はね、こういうところで喫茶店やりたいのよ。ホントよ」

ひとりの女性の小さな夢まで創発させてしまってる、この感動ったら。。

そのうち小さなお子さん連れのママさんもいらして。これまた「喫茶ランドリー」と同じく0歳から100歳までをも射程に捉えた場となっています。

資源ゴミ回収との相性はかなりいいようです。毎日ここに来たくなってしまった、おじいさんやおばあさんたちは、一日分の小さな小さなゴミ袋を持ってわざわざいらっしゃる方もいるのだとか。なんだか、ゴミを持たずにここに来るのは悪いと言うのだそう。

あるお父さんは仕事が終て家に帰ったら、小さな娘さんと一緒にここに来るのが日課になりはじめているのだとか。市民の日常が、こんな小さなスペースから変わるのです。

既存建物の中にあるカフェスペースにも侵食していて、資源ゴミのポイントでコーヒーが無料で飲めます。ここではさらに世代を超えた自然なコミュニケーション。

ここまで、私が現地を僅か数時間訪れた際のできごとです。

だから、実証実験中の2ヵ月間、張り付いていたアミタのスタッフの皆さんは、とんでもない体験をしたのだと思います。資源ゴミを捨てる場を通じて、これまでにない市民の方々とさまざまなとのやりとりがあったことでしょう。それは、今後の事業にも必ずフィードバックされていくことに違い在りません。

グランドレベルとして考えたこと

今回は、グランドレベルが1階のプロトタイプでもある「喫茶ランドリー」で実践してきたフィードバックを、南三陸の資源ゴミ回収の実証実験の場に適用させていただいた、とも言うことができます。屋根はなくてもハードである設えをゆるやかに設計し、ソフトは最低限とした上で、その先も増幅しやすいように設定し、そこにハードとソフトを取り持つコミュニケーションのデザインを沿わせる。その一つの解答として、今回のような光景が生み出されました。

私たちの大きな目的は、まちや社会の「あらゆる1階」を、このような手法によって、能動性を最大限に高めた人々の居場所を創り出していくことです。今も、いくつかのプロジェクトが進行中ですが、どれもその状況に合わせて、最善の1階づくりに向けて動いています。上の図を見てもわかるように、きっと、どの建築、どの施設、どのまちのどんな1階にも、もっともっと理想の姿があるはずなのです。「喫茶ランドリー」を理念の軸として、それらをどんどんつくっていきたいと思います。

縄文時代のゴミ捨て場に想いを馳せてみたら

さて最後に。実は、この場をつくるにあたって、面白い発見がありました。

ブレストをしているとき、ふと、むか〜しのゴミ捨て場はどうなっていただろうと考えたのです。そのとき思い起こしたのが「貝塚」

「喫茶ランドリー」の「まちの家事室」にある洗濯という行為も、ついこの間までは、まわりに住む人同士でコミュニケーションを取りながら、シェアしていたものでした。今でも、川や自然に水が湧く場で、共に洗っている国や地域はありますし、昭和初期の日本発の集合住宅、同潤会青山アパートでは、屋上がみんなの洗濯する場所になって、日々コミュニケーションが行われていました。

そのとき、縄文時代の貝塚でもこんな会話があったよな!と妄想したのです。

「よう!ハチ!久し振りだな!お前も貝捨てにきたのかい?元気かい?」

そうだよ。きっとゴミをすてる場も、日常的に市民が交わる場だったんだよ。そう信じながら、「貝塚」を調べると、さらにおもしろいことが。「貝塚」は、ただのゴミ捨て場ではなかった!

貝塚を調査すると、縄文人が食べた貝や動物の骨とともに、壊れた土器や石器ばかりではなく、ていねいに埋葬されたペ ットの犬や人骨までもみつかります。一見するとムラのゴミ捨て場のようにも見える貝塚ですが、決してそうではないのです。この世での役割を終えたあらゆるものを集め、あの世に送り、再びこの世にかえってくることを願った、神聖な場所でもあったのです。縄文人たちは、彼らを取り巻くすべてのものをおそれうやまい、やさしい気持ちで接していました。人間までもが貝塚に葬られている理由はここにあります。(http://www.yoshigo.gr.jp/about/holy.html)

!!!!!

これって、アミタが南三陸で伝えたいこと、この事業を通して伝えたいことそのものじゃない!一見、ゴミを分別するという行為に見えるのですが、実は今回の実験の場で起きていることも、同じようなことです。ゴミを分別するという行為を繰り返していると、ゴミに対する態度、敷いてはモノに対する態度そのものが、真摯になっていくんです。だから、0円コーナーに置かれるものにも、「どうぞ」という気遣いがある。さらに、そういう気持ちが、人と人との関係にまでつながっていく。

あぁ、貝塚で起きていたことときっと同じだ!いや、現代から大昔の貝塚へと近づくようなことなんだよな。この気づきで、アミタの事務所で、社員の皆さんと大いに盛り上がりました。

少し話を飛躍させると、あまねく人々が、日常に居るということ、よりよい1階(グランドレベル)をつくっていくということは、「まちに存在する取り巻くすべてのものをおそれうやまい、やさしい気持ちで接する」ということ他なりません。

今回のアミタのプロジェクトは、たくさんのことを学ばされました。1階の学びは、分野を超えても、時代を超えてもいろんなところにあるものです。

さて、南三陸町での実証実験は、先日終わりを迎えました。最後は町のひとたちが数百人おしよせ、この場がなくなることを惜しんだといいます。またそれまであった日常にあの場にいらしていた方々が戻ってしまったかと思うと、いたたまれなくなります。町内での資源の循環やコミュニティーの再建という側面からも、今回つくられたような場が、大きな役割を果たすことは一定のレベルで評価しうることだと思いますので、ぜひ、町とアミタが一体となって、次のステップに進めることを願いつつ。

もしも、今回のような実験の場に、大らかな屋根をかけたような施設が、数キロおきに町にあったら。私たちの妄想は、まだとまりそうにありません。

参考サイト
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201810/20181025_13017.html
http://www.amita-oshiete.jp/column/entry/015008.php
http://www.amita-oshiete.jp/column/entry/015007.php

1階づくりはまちづくり。

大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。

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グランドレベル研究所*日本

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