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歩道のベンチはまちづくりの基本。だから、ニューヨークは2000ものベンチを戦略的に設置する。さぁ、ベンチ難民国日本で、最初に立ち上がる都市はどこか?

皆さん、お久し振りです。グランドレベルネタは、日々積もるばかりなのですが、今、田中が執筆中のグランドレベル本の手伝いをしているので、ブログ熱が、ついついそちらに注がれておりました。今回はそんな中で、今どうしても言いたい大好きなベンチのお話しです。

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以前もこの写真をお見せしたかもしれません。昨年のある夏の日、某サイゼリアでくつろぎながら、ふと外を見たのです。何気ない、日本のどこにでもある風景。しかし、よーく見るとおばあさんが防護柵によりかかってるじゃないですか。

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曇ってるけど、めちゃくちゃ暑い日でした。これは辛かろうなと。どうして、防護柵を設置し、植栽を施すのに、ベンチは置かれないのでしょうか。実は、この夏は、あらゆるところでこのような光景を目にしました。

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そこに暮らす人間とまちとの関係を考えれば、歩道にまずあるべきなのは防護柵よりも、植栽よりも、ベンチなのです。だって、歩道の役割は「歩くための道」だけではないからです。だから、コペンハーゲンの住宅街のまちかどにも、こんなふうにベンチがある。デザインクオリティが高いベンチは、目に入ると、用が無くても座りたくなってしまいます。

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台北もまた同じです。どうぞ座っていってくださいと言わんばかりの良質なデザイン。これ台北の大きな警察本部の前の歩道なんですけどね。このデザインのベンチが置かれていて、どのベンチも若者たちでにぎにぎしています。

でも、日本も捨てたもんじゃありません。いろんなところで、これいいベンチだな!ってものに出会います。

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神保町の岩波ホール前は、角地の敷地境界をダイナミックに使って。通り抜けできないかわりに、みんな自然と信号待ちの間に腰掛けて、思い思いに過ごしています。

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西銀座デパート前のリニューアルも、ナイスですよね。

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浜町公園前の銀杏並木下のベンチも最高だし、

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青山霊園で見かけたベンチも最高に気持ちがいい。と、PC内の日本のグッドベンチアルバムを見ていたら、ひとつわかったことがありました。

日本のグッドベンチはすべて、公園もしくは私有地にあるベンチだと。つまり、日本の歩道には、行政公認オフィシャルベンチがないのです。確かに目を閉じて、振り返ってみても、先ほどのコペンハーゲンや台北のようなベンチがなかなか思い出せない。そういうことなのです。

どうして、日本の歩道にはベンチがないのか?

日本の行政の方や都市系の方に、この話をすると、いや、歩道は歩くスペースでしょう、そして、浮浪者がと言う話が聞こえてきます。管理がめんどくさいという声もありますね。だからベンチは設置しないと。もしくは設置したとしても、結果、座らせる気が無い、悪質な言いわけベンチが置かれたりもします。

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たとえば豊洲で見かけたこのベンチ。一見、歩道の樹木を囲うようにあっていいなと思いますが、鉄の鋼管を曲げて作ったこれでは、人は座りません。痛いし、冷たいし、錆びてて汚い。本気で座って欲しいというデザインではないのです。コペンハーゲンと台北のベンチとこれ。どれに座りたいか?って聞くまでもないですよね。まさにデスベンチ。そして、ベンチのないまちは、デスタウンです。

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こちらは川崎駅の写真です。上段、中段がベンチがひとつもない駅前広場。中段に建物の壁を背にしゃがみこむおじさんが見えます。で、人はどこにいるかというと... 下段の写真、地下街におりたロビーに設けられたベンチにすごい密度でいるのです。川崎駅はあくまで一例。日本の多くの駅前が、ほぼこのようになりつつあります。みんな座るところが欲しいのです。本当はまち、グランドレベルに。

どうやら、日本全国、歩道の捉え方が、根本的に間違っているようです。歩道は移動するためのインフラだけではありません。その半分は居場所なのです。居場所としてのベンチがあれば、ひとはそこに留まります。ひとが溜まれば、出会いが生まれ、コミュニケーションが発生します。(たとえば、あなたの住むまちや故郷のまちにベンチがもっとあったら、きっとまちの知っている人に知り合う頻度が必ず上がるはず。)そしてまた、そこからの行動が多様化します。そのようにベンチは、日常のまちを活性化させる、もっとも重要なものなのです。

歩道のベンチひとつで、まちのポテンシャルはぐっと変わるはずなのです。グランドレベルの基本的な考え方ですが、地面に人の滞在時間が増えるほど、行動、会話、消費、あらゆることが増え、それらがある種の幸福感へとつながっていきます。このような「ベンチの哲学」を、世界のイケテル都市は、行政も市民も共有しているのです。

2000以上のベンチを置きまくる、

ニューヨークの都市戦略とは!?

日々、世界の事例をリサーチして巡っていると、ベンチにまつわるさまざまなプロジェクトを目にします。その中でも、最もビックリしたのが、ニューヨーク市の「CityBench」というプロジェクト。ベンチの効用をしっかりと捉え、まさにひとつの都市づくりの戦略として取り組んでいるものです。

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http://www.nyc.gov/html/dot/html/pedestrians/citybench.shtml

これはニューヨーク市で2011年からはじまったもので、ニューヨーク市の5つの区の街中に、ベンチを新規で設置しようというもの。プロジェクト発表時に、副市長は、下記のように述べています。

「CityBenchは、すべての世代のニューヨーカーが街をより楽しく歩きやすくさせ、街並みを向上させるものです。ベンチの設置場所は、バス停や商業地域の中はもちろん、市民からの要望を常に受け付けながら選定していきます。これらのベンチは、ただ休むことだけではなく、高齢者や地域住民が座り、家族のことや地域社会のことについて、隣人たちと楽しくお話しすることを可能にします。」(STREET BLOG NYC)

そして、驚くべきその数は1500!さらに 2019年までに600個が追加されると書かれています。

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さらにデザインを見てみたら、これまた糸目がない。このデザインは、オリジナルで、積もった雪が溶けやすくなっていたり、座っても荷物が脇に置けるようになっていたり、コミュニケーションが取りやすくなっていたり、ニューヨークだからこその要素が、いろいろと考えられている。まさにニューヨークのためのベンチ。photo=Kristina D.C. Hoeppner


デザインについての解説は、こちらの動画をどうぞ!

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さらに、すべての設置場所が常マッピングされてる!!!この時点で、ニューヨーク市はすごいなぁ、と心拍数はマックスになっていたら、市のサイトには「If you know of a good location that meets the requirements below, please complete the web form below or print out a paper form and send in by mail.」と。ベンチがあったほうがいい場所あったら、言ってくれよ!とフォームへリンクされているわけです。

つまりベンチの設置場所は、まず行政主導で、たとえば高齢者が多いエリアには多くといったように、エリアの特性を読み取りつつ置いて行くと同時に、市民からの意見も取り入れていく。

このシステム構築までを含めたトータルデザインが「CityBench」というわけです。グランドレベルにおける、ベンチの機能と効用を的確に捉え、都市政策のひとつとして展開するベンチプロジェクトの最先端がここにありました。

さて、ここで改めて日本を見渡すと、何とも貧弱な限り。もちろんベンチを設置しようという試みはあっても、それによって、どこまで都市やまちを変えていくかというヴィジョンや戦略はありません。大都市東京も銀座や日本橋ですら、ベンチがない。カバンを置いて、ハンカチすら出すことができないまちは、良いまちになれるはずがありません。

だからこそ、花壇をつくる前に、まずはベンチ。今だからこそ、すべてのまちに求められるのは、ベンチファーストなのです。

ベンチなくして、まちづくりなし!

同じお金をかけるのであれば、一過性のイベントをやって集客人数云々で喜んでいるような「まちづくり」をやるのか、このような市民にとっての良質な日常づくりに投資するのか。どちらに舵をきるかは、そのまちの未来に大きくっかってきそうですね。

さぁ、日本のベンチには、どんな可能性があるでしょう。行政ベースのものもあるし、行政に頼らず、街区ベース、町会ベースでできることもあるでしょう。大きな大学などであればキャンパスでもやる意味があるかもしれません。ベンチでまちを活性化させるプロジェクト、どこかでやってみませんか?

さらにもう少し踏み込んで「ベンチの置き方の作法」についても書きたくなったけど、長くなるので、今日はこの辺で。

1階づくりはまちづくり!


大西正紀(おおにしまさき)

http://glevel.jp
http://mosaki.com

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