「喫茶ランドリー」はどうしてヤバい?市民の能動性を引き上げ、受け入れる。グランドレベルの壮大な実験がはじまりました。

グランドレベルの企画・運営で、昨年2017年12月にプレオープンし、2018年1月5日にグランドオープンした、ちょっとだけ話題となっている「喫茶ランドリー」は、ただのランドリーカフェではありません。そこには、0歳児から高齢者までの、たとえばこんな自由な使い方、過ごし方が展開されています。

代表の田中がグランドレベルという会社を設立したのが、2016年9月。それ以前から会社設立の話は方々にしていたところ、設立前にも関わらず相談ごとを持ってきてくださったのが創造系不動産でした。内容は、1階を含め、この築55年の建物をどうしたらいいかというもの。たまたまわたしたちの家が目と鼻の先だったこともあり、まちのためにどうあるべきかと考えはじめたわけです。B&B?それとも賃貸?もしくはシェアオフィス? と紆余曲折があり、最終的には2、3階は賃貸に、そして1階は...

「喫茶ランドリー」というお店をつくり、グランドレベルで事業そのものを行っていくことになりました。

内覧会の翌日から、代表の田中と共に、90日間、終日10〜12時間お店に立ち続けてきました。まわりからはビックリされましたが、グランレベルはビジネスよりも理念、まずはパブリックマインドありき。だから、アルバイトさんを最初から雇うという選択肢はありませんでした。

毎日毎日立ち続け「よかったら見ていってください」とコーヒーをふるまい続けました。通りがかる地域のひとたちが、何十人も入ってきてくださいました。すると、実際にどんなひとたちが住んでいて、どんなことをまちに思っていて、いろんな会話やふるまいから、まちのことがわかってきます。

写真は印象的だったシーンのひとつ。地元のおばあさんふたりが、コーヒーを片手に、なぜか喫茶フロアではなく、家事室に座って談笑しはじめました。すると「あら、○○さんじゃないの!!ひさしぶり〜!!」と、通りがかるご近所さんを呼び込んで、あっというまにこんな光景に。人が集まれる場所がまったくないエリアに再会と会話が生まれた瞬間でした。

いろんなひとたちを招き入れながら、わたしたちは常に喫茶とランドリーがあること以上に「自由にこの場所を使ってください」と伝えていました。すると、あるおばあさんが帰り際に、「ここ借りれるの?今度家族の忘年会がしたいんだけど」と。!!!こんな嬉しいことはありません。

そして、年末に行われたある家族の忘年会は、なんと参加者20名。3世代5家族の大忘年会でした。モグラ席には、おじいさんとその息子夫婦のみなさん、フロア席には、おばあさんとお孫さんたちがずらり。その向こうには、普通にお客さんたちが和んでいます。

それと前後して、ご近所のママさんから「この机借りられますか?」と言われました。「いいですよ!」

事務所スペースとして考えていた奥の大テーブル席に

9人のママさんたちが集まって

パンをこねまくっている!! 「いやっ、うちではパンを焼けませんよ」、と伝えたら「大丈夫!焼くのは、すぐそこの私の家でやるから」と、喫茶ランドリーから10歩先の一軒家へ小走りで、パンを持っていくではないですか。

その横では、小さいお子さん用のラグが敷かれ、子どもたちはトトロに夢中。しかし、すぐその場を使いこなしてしまう力にビックリです。そして完成したパンでできたクリスマスリースを囲みながら、最後は喫茶のコーヒーでママさんたちは談笑タイム。

いい光景だなぁと眺めていたら、次の瞬間にママさんが、昼食に来ていたサラリーマンとOLさんたちに話かけています!できたてのパンやリンゴをお裾分けしてるのです。住民と働く人との間の会話など、ありえなかったのにこんなことが。もう感動しきりなのです。

この数年、日常、日常だと言い続けていますが、コレなんです。生み出すべき日常、つくるべきクオリティ高いグランドレベルというものは。世界の魅力的なまちには、こういった状況が、まちのなかに、グランドレベルに当たり前のようにある。しかし、日本にはなくなっていく一方です。

場をつくるとか、コミュニティとか、そんな言葉に踊らされる時代はもう終わりにしなくてはいけません。いかに多くのアノニマスな市民を引き寄せ、自然と会話をしはじめる。その上で、それぞれが自由に存在できる。ささいなやる気が簡単に実現できる場がある。そういう場でまちが溢れている。それが、これからの21世紀に求められる本当のまちづくりだとわたしたちは考えています。それこそが「健康」や「幸せ」につながり、経済がより活性化していくのです。

ここまでプレオープンから2、3週間のできごと。

そして、年が明けたある日曜日、新年会的イベントとして、DJのTOMCさんにお越しいただき、週末に終日BGMをDJしていただきました。

すると、喫茶ランドリーが入るビルの元オーナーのおじいさんが来てくださいました。そこへ次々と昔からのご近所友達のおじいさん、おばあさんたちが集結。実に楽しそうに話をしるのを察知して、TOMCさんは昭和歌謡へと音楽をシフトさせていきます。その向こうには、カップルやお子さん連れがワイワイとやっている。まちの縮図そのもの。もう、この感じに涙が出てきます。

そう、喫茶ランドリーにある、洗濯・乾燥機には、実はコインを入れるところがありません。実はコインランドリーの機械はあまりにもコストがかかるので、計画途中に断念。きっかけは、建築家さんの「コインランドリー屋をやりたいわけではないでしょ?普通の洗濯機でいいんじゃないの?」という問いかけでした。そこで、コイン式ではないとにかく一番ハイスペックなものをセレクトしようと、エレクトロラックス社製の業務用のものを採用。つまり、レジを介して事前に支払い、洗濯・乾燥機を借りるということになります。手間はかかりますが、そこには小さくともコミュニケーションが生まれるというわけです。

表参道のカフェで、普通の洗濯機を置こうと決まったとき、代表の田中は「そうだ!家事室だ!」と雄叫びを上げてきました。そう、この部屋はアイロンやミシンもある“まちの家事室”なのです。本当にこんなところに置いてあって使うのだろうか? オープニング当初は不安でしたが、多くのひとが「わぁ、ミシンもあるんだ!!」といって帰って行きました。しかし、使われない日々が続くこと数週間。

しかし、ついにその日は訪れたのです。

ある日の日曜日。ママさんたちが、家事室に集結していました。ミシンの説明書を読みながらカバンをつくったり、子どもに教えてあげたり。その隣では、一週間分の旦那さんのシャツを持ってきたママは、つぎつぎとシャツをアイロンがけしていきます。手際よいママさんは「家でやるより、気持ちいいわぁ〜!」と、アイロンがけを完了!これひとりぐらしのメンズは、習いたいくらい。

幼稚園のお子さんを持つと、春前に○○袋をつくってきてください、とママさんたちに宿題が出るそうです。聞いてみると、そのタイミングでミシンを購入するも押し入れに入りっぱなし率が高くなったり、自分はつくれないから実家のお母さんにつくってもらったり、最近では代わりにつくってくれる代行業者もいるそうです。

そんな話をママさんたちとしていたら、次の日一枚の紙を、あるママさんが持ってきてくれました。

「ミシンウィーク開催決定!」

うぉー!!なんだそれは。。聞いてみると、ミシンのできるママさんたちが、1週間交代で常駐して、ミシンに触れてみたいひとに教えてあげるのだとか。このイベントは2月に開催予定ですが、それ以外にもいろんなおばさまが家事室を訪ねてきては、エプロンやぬいぐるみをつくったりして楽しんでくださっています。「家でつくるのもいいけど、ここでつくるといろんな人につくったものを見せたり、お話しできるのが良いのよね!」と、定期的に使って下さる方々も。

これはある日の夜のこと。同じこの街に、旧友が住んでいることが判明し、再会の場としても使われたりもしました。なんと行われたのは焼肉パーティー!匂いがどうなるか心配でしたが、とにかく受け入れてみる!敢行です。その旧友さんは最近ご結婚され誕生日も近いということで、最後はサプライズでケーキも登場。あれは、素晴らしいシーンでした。

喫茶ランドリーの周辺は、基本はかつては工場が多いようなエリアでした。10年ほど前から、雨後の竹の子のようにすくすくとペンシルマンションが建ち上がり続けていて、子連れファミリーや単身者も随分と増えてきました。それでも、意外と中小規模の会社もあったりします。

そんなある日、「ここを借りることができますか?」とサラリーマンの方々がいらっしゃいました。聞いてみると、近くに拠点を構える建築の施工図を描く会社のみなさん。

そして、毎週ある曜日の夜に、こういう勉強会の場として使われるようになりました。関西地方の支店とネット中継しながら、最新の技術をどう取り入れていくかをワークショップ形式で話し合われています。

たとえば、こういう光景が喫茶ランドリーで起きていますという一例でした。

まとめ

さてさて。ランドリーカフェなるものは、この1年で一気に増えていますが、今回のミニレポで、そもそもの目的が全くことなることがちょっとわかっていただけたと思います。

そうなんです。「ランドリー」「喫茶」という機能やサービスは、二の次なのです。事業以前に、何をどうすれば人々が幸せになりうるのか、そこを突き詰めながら、事業として成立させる。それをわたしたちは、グランドレベルというフィールドにおいて、さまざまな形で展開していきたいと考えています。日本は社会全体がサービスの形態や組合せに答えを求めがちですが、それでは人々の豊かさを大きくシフトさせることはできません。

喫茶ランドリーでは、墨田区に3階建ての建物があり、まわりにはさまざまに暮らす人々がいました。だから、こういうものをつくりました。しかし、ここで創造した施設や空間のつくりかた、人のファシリテーションのしかたは、どこにでも転用できると考えています。

まず、マンションや集合住宅の1階は、基本はこうあるべきでしょう。いつまでツルピカで使われないロビーをはじめとした図書室、映像室といった類の共用部をつくってウリにしている場合ではありません。

それ以外にも、対象が、公園であれ、店舗であれ、商店街であれ、オフィスであれ、今わたしたちが目にしているものとは、確実にレベルの違うクオリティの高いグランドレベル、一階がつくれるはずなのです。喫茶ランドリーはそのための実験場でもあります。

プレオープンから、わずか2ヵ月も経たずに、まわりの皆さんと一緒に、ここまでつくりあげることができました。そう、最近は地元のママさんが新たなメンバーとして加わり、お店に立っていただくようにもなりました。で、今回レポした状況は、ランドリーでコーヒーが飲めるから成し得たのではないわけで。実は空間のデザインと、店側の人のふるまいが最大のポイントなのです。

またそのことは追々まとめてお伝えできればと思います。

今日も、喫茶ランドリーの日常は、たんたんと。地元のおばさまたちは、ちょっとおめかしして、喫茶ランドリーで待ち合わせ。そうコーヒーや紅茶もまじめにいれています。メニューも少しずつ増えています。ぜひ一度気軽にいらしてくださいね。

あなたが関わるさまざまなグランドレベルも、こんなふうにつくってみるのは、どうでしょう?


2018.02.01 追記1:あと、12月5日発売で各所で好評の田中の新しい書籍『マイパブリックとグランドレベル - 今日からはじめるまちづくり』(晶文社)も、よろしくお願いします!

2018.02.01 追記2:あと、喫茶ランドリーではじめて、地元のママさんたち主催のオープンなイベント「ミシンウィーク」の開催が正式に決定しました。まちの皆さんも遠方の皆さんも気軽にいらしてください!

2018.02.25 追記3:その後、全国から、最近は海外からもいらしていただいていて、嬉しい限りです。そのなかでよく「参考にさせていただいて、私たちもこういう場をつくりたいと思います」と言って下さるのですが、なかなかこの記事を読んで、実際に見てつくることができない類のものかと自分たちでも思ってきました。喫茶ランドリーレベルまで何かものごとを本気でつくりたい方がいらしたら、ぜひきちんとした形でお声がけいただけるとさらに嬉しいです。

1階づくりはまちづくり

大西正紀(おおにしまさき)

※喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、ベンチの話...まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

http://glevel.jp/
http://kissalaundry.com
http://japanbench.jp/
http://mosaki.com/

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喫茶ランドリー

墨田区千歳に誕生した「喫茶ランドリー」の日々の出来事。
30つのマガジンに含まれています

コメント16件

とても素敵だと思いました、いろんな人がふらりと立ち寄れて、おしゃべりできて、集まれる場所。こういう場所を日本にたくさん増やせたら素敵ですね!
実際に行ってみて、その雰囲気、ワクワク感が伝わってきました!
Facebookのシェアからこの記事を拝見しました。自家製公共づくり、自分達で成長する素敵な空間、私も創りたい空間です❗
もっともっと聞きたいです。書籍拝見して、どこから手掛けるか、悩み中…です。
うちの地元にも来て欲しいです! 西日本にもぜひ!
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