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銀河会の言葉の雨あられにも負けず。

銀河会は とにもかくにも
世のなかをカクメイで平和にするという
 
銀河会は仲よしで 仲間を大切にする
カクメイにはたくさんの人が必要だというので
色々なひとが来て カクメイに加わるのだけれど
仲間がふえても 新らしいユウジョウが芽ばえて
活動はすすむのである 平和 平和 平和
 
一糸乱れぬ行進のやうな
大げさな拍手をするやうな
同じ表情をして 愛唱歌をうたうやうな
万歳三唱で前向きな 平和活動
 
そんな銀河会には だからこそ潔癖なところがあって
カクメイの歩調が合わないひとを とても嫌がる
 
恋愛のもつれや おカネの問題で 不正で
ことが起きるやうなら
銀河会はときどき 不協和音を取り除いて
仲間を仲間でなくさせる
 
平和のために活動をしているからこそ
くだらないことで 問題を起こすひとは
平和から出た悪腫のやうだと
われわれには「ふさわしくない」と
銀河会は やぶ蚊を追い払うやうにするのである
 
脱落者はみな 性欲や金銭欲でことを起こした人でせう
あらゆる過去の事例がまさにそのとおりらしいので
今の脱落者も つぎの脱落者も つぎのつぎも
絶対さうに決まっていると 思われるのである 
 
脱落者は 必ずおかしな頭をしてるだらうと
さふいえば もともと狂っていたところがあったなあと
表情も「変」だったなあと
みなに想像され 脱落者は
悪魔のやうに思われるのである
 
たとえ ジョバンニの脱落が 問題でも何でもなく
ただただ カクメイが肌に合わなくて
静かに去っただけだったとしても
 
「ジョバンニは行進を乱していた」
「大げさな拍手をしなかった」
「表情を濁しながら 愛唱歌をうたっていた」
「不正もしたでせう」「異性をたぶらかしたでせう」
 
と妄想されるのである
 
それが 銀河会
 
平和をめざすカクメイは 人を選ぶのである
 
仲間は 「外」の人になれば 悪魔
 
でも カクメイは まだこない
カクメイが何をさすのか
平和がどんなものか 銀河会のだれもがわからない
 
ただただ 色々なひとが来て 同じ顔になっていく
カクメイの何かが 平和の何かがわからないから
だからこそ逆に みなで同じ顔になっていくことが
唯一の平和だと思うのでせう
 
それがどうにも肌に合わないジョバンニは
涙をこぼしながら 外に 外に 出たのである
 
平和の定義が 「みなが友だちになること」だとしたら
仲間でいられなかったジョバンニは
平和が無理なひとなのでせう
 
かつての仲間から狂人とののしられ
色欲に カネに 狂ったとののしられ
銀河会から 「ジョバンニに近づかぬように」と言われ
かつての仲間たちは ジョバンニを遠巻きにして
噂を信じて 石を投げるのである
 
きみは 仲間だったでせう?
ユウジョウがあったでせう?
それは ジョバンニひとりが勝手に抱いた
妄想だったのでせうか
 
仲間だったかもしれない銀河会のカルパネルラは
こう言ったやうだ
「あいつは俺たちを友だちだと思っていたらしいが
 あんなおかしなやつを友だちだと思う人は
 清浄な銀河会には いない
 俺のことを友だちとして あいつが見ていたなんて
 想像するだけでキモい」
 
銀河会は噂する
 
噂の真偽は ジョバンニへの電話一本
数秒で確かめられるのに
かつて仲間だったかもしれない銀河会の彼らは
銀河会にいるほかの仲間とともに
ユウジョウをさらに固め
ジョバンニの「ほんたう」を
確かめられるのに噂の主の誰一人確かめもせず
銀河会のいうとおりにして 銀河会の噂を信じて
ジョバンニを 「さういふもの」と見做すのである
「ああいうふうになってはいけない」と
 
電話は 一本もこないのである
電話帳は ただの 文字列 すくりーんのひかり
昔みなでうたった流行歌は 悲しみの旋律なので
もう何年も 聴いていない
 
銀河会のなかは平和でせうか
仲間のユウジョウはたしかでせうか
それなら それで いいでせう
ただ ジョバンニには それが良いことのやうに
どうしても思われなかった
とても苦しかった
 
ジョバンニは過去 脱落しそうになり 結果 脱落した仲間に
そのとき 寄り添ってしまった
ジョバンニがそういう人だったばっかりに
銀河会が教える噂より 脱落した友の声を信じようと
その仲間に直接会ってしまうやうな人だったばっかりに
銀河会を からだに合わせることができなかったのでせう
 
ユウジョウは
銀河会という抽象観念や
カクメイのきずなによって
嵐のなかのチリのように
吹き飛ぶものでせうか
 
銀河会のなかだけの
カクメイを一緒にできるひとだけの
ユウジョウが ほんたうでせうか
 
デクノボーには よくわからないのです
それが良いことのやうには 思えないのです
 
南に 死にさうな人あれば
行って こわがらなくてもいいと言ひ
北に ケンカや訴訟があれば
つまらないからやめろといひ
ひとりのときは なみだをながし
寒さのなつは オロオロあるき
ミンナニ デクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

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