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人間関係の悩み解消の専門家で相性診断のプロ・黒木豊美の自分史|インタビュー(聞き手:ライター正木伸城)

人が抱く悩みのほとんどは人間関係から生まれると言われる。そんな悩みの根源を見抜き、専門家として適切な声かけをしている黒木豊美さん。彼の本領は、統計に基づいた相性診断にある。人間の性格などを120のパターン(男性60、女性60種)に分け、各パターンの人とどのようにつき合えば良いか等をアドバイスしていく。テーマは、恋愛、結婚、同僚、家族などさまざまだ。これが正誤なく的確なため、黒木さんの相性診断は人気を博し、のべ3000組が彼の相談室の門戸を叩いた。ここでは黒木さんの人生遍歴の一端に迫っていく。

相性診断に出合うまで――息子の子育てに悩む

――まずは黒木さんの相性診断について教えてください。

私の相性診断は、人の性格に関する約2万人のデータに基づいた知見を基礎にしています。人間をタイプ分けして相性を診ていくもので、そこには紀元前2500年頃から中国で行われてきた占いが反映されています。たとえば思考先行型(名称:考えてグループ)や行動先行型(名称:動いてグループ)、感情先行型(名称:感じてグループ)などがわかりやすい例でしょうか。それら一つ一つのタイプの情報――それは主に古い占いの本から借用――に、私自身が相談に乗ってきた経験知を加味して診断の精度を高めています。人間関係を良好にするためのアドバイスをすることが多いですが、その人の悩みの種となっている「相手との相性の食い違い」等を診て、対応の仕方を一緒に考えていきます。

――伝統的な占いに基づく相性診断だったのですね。

占いもある種の統計で、長大な歴史の中で培われてきた「人を見抜く知恵」の結晶でもあります。それを現代に応用しています。私が活用している占いの本には、(上述したように)タイプ・パターンごとにその性格が詳細に記述されていて、もっと言えば「かけて良い言葉」「かけてはいけない言葉」までもがある程度書かれています。

とはいえ、人間の性格すべてを言語化することは不可能ですから、本に載っていないケースに対応するために自身の経験で診断を補っています。相性診断は2007年頃から学び始め、実際にそれを仕事にしたのは2018年からです。そこから約3000組を診てきました。

――相性診断に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。

実は、私は息子(長男)との関係に悩んでいました。彼のことがどうしても理解できなかったのです。彼はいつも一人でいました。学校から帰ってきても一人。食事が終わったらすぐに自室に行ってしまって一人。友だちがいないわけではなかったのですが、一人でこもることが多かった。私は、「長男はイジメられているのでは?」と心配になりました。「自分の育て方が間違っていたのでは?」と自責の念にもかられました。当然、息子の将来も不安になります。

そんな頃です。私は当時も今もフリーランスで営業をしているのですが、営業力を磨くためのあるセミナーを受講した時に、「持って生まれたお客さまの素質に合わせて語り口を変えることで営業はうまくいく」ということを学びました。そのセミナー資料には性格診断の早見表のようなものがついていました。私はおもむろにその表を使って息子と自分に適用。すると、私たちの素質が正反対だということがわかったのです。ただ、その時はそれ以上のことはつかめませんでした。

「六十干支」の占いを自らに活用して息子との関係を最適な形に

ところが、ある日テレビを見ていたら、俳優の故・渡哲也さんが人気占い師に占ってもらうという企画に出くわします。渡さんは、その占い師から「頑固な人ですね」と忠言されていました。その瞬間、私は例のセミナー資料のことをふっと思い出します。そして、早見表を用いて渡さんの生年月日などから彼の素質を調べてみました。すると、その表には「頑固な顧客」と記載されていたのです。その時に、「もしかしたら人間の素質や性格にはさまざまなものに共通する何かがあるのかも」と思い、テレビに出演していたその占い師が使っていた分厚い本を“アタリ”をつけて探し出し、学びました。

――それだけ、お子さまのことに苦心されていたのですね。

真剣でしたね。学び始めた書籍は言葉遣いが古く、うまく読めなかったため、助力を得て現代語にリライトして学習したくらいです。そしてそこで、中国の『易経』に基づく「六十干支」という占いに出合いました。その本には、まさに人間の性格60のパターンが記載されていたのです。私はそれを自身と息子の関係に適用して、息子と向き合うことにしました。

――何か見えてきたものはありましたか。

おおまかに言うと、息子は(先ほど述べたところでいう)思考先行型の「考えてグループ」の性格をしています。何ごともよく考えるし、自分をしっかり持った性格です。興味があることは熱中して深堀りし、関心がわかないものには見向きもしません。さらに、彼は自分の時間が必要な人でもありました。だからいつも頭の中で“スケジューリング”をしているという側面もあった。それを知った時に「あっ」と気づいたのです。

かつて、珍しく息子が「友だちと遊んでくる」と言ったことがありました。その際、私はすごく嬉しくなったのですが、息子はわずか15分で怒りながら帰宅。仰天した私が理由を聞くと、「僕が時間をつくって遊びに行ったのに、みんなは何をして遊ぶかを決めていなかった」と言うのです。当時の私の感覚からすれば驚くべき理由でした。

しかし、彼が「考えてグループ」だということを考慮に入れると、合点がいきました。彼は、常に“スケジューリング”をしていたので、「自分の時間を奪われた!」と考えたのです。そしてその性格は「持って生まれたもの」で、基本は生涯変わりません。

――いわば、その人が持つ本質的な「個性」ですね。

おっしゃるとおりです。私はそれまで息子の変わったところを「欠点」だと理解していました。ですが、それは「個性」だったのです。そう得心できた時から、息子のことをありのままに許容できるようになりました。加えて、私自身は分類的には感情先行型の「感じてグループ」の性格をしています。私は、「感じてグループ」と「考えてグループ」(息子のグループ)の関係を良好に保つ知恵を占いから借りて、日常的に声のかけ方などを工夫しました。たとえば、彼は行きあたりばったりを嫌いますので、そういったことは絶対せずに、何をするにも「何月何日にどこどこに行こう」等と言うようにしました。もちろん予定の変更もしません。また、何かをお願いしたりアドバイスをする際には、まずは「息子がどう思うか」を考えさせて、それからアクションを起こすようにしました。

以降、息子とはとてもつき合いやすくなりましたね。彼がどんなことをしようとも、いい意味で「そういう人なんだ」と受け入れられるようになった。それが大きいです。息子を尊敬できるようにもなりました。

診断の活用で営業の成約率が1~2割から9割に向上

――黒木さんは、そこから現在の相性診断のノウハウをつくられていきます。その効果は端的にどこに表れますか?

他人と「つき合いやすい関係」が築けるようになります。どのように声をかけたらいいかもわかるので、人間関係のトラブルがグッと減って良好になります。

たとえば、子どもに部屋を片づけさせる場面を想像してみてください。「感じてグループ」と「考えてグループ」、それから行動先行型の「動いてグループ」では、それぞれ最適な声のかけが異なります。「感じてグループ」は行動が感情に左右されやすいので、心に訴えかけるようにして「一緒に片づけようね」と言うと良いでしょう。反対に「動いてグループ」は即時的に行動を促すような声かけが利きます。「早く片づけて! 今だよ!」といった言葉が良い。では「考えてグループ」はどうか。彼らに対してなら、判断のバトンを早々と渡してしまうのが良いでしょう。具体的には、「いつ片づけるかな?」と声かけをするのです。

――自分の判断で片づけを開始できるようにしてあげるのですね。

そうです。この“言い方選び”は、子どもに限らず大人にも効果があります。実際、私は営業の仕事でもこの相性診断を活用し、相手に合わせて最適な言葉選びをするようにしています。そのおかげで、もともとの訪問販売成約率が10~20%だったのが、90%にまで上昇しました。

――激変ですね。驚きです。

この経験をとおして、私はある事実に確信を持つようになりました。それは、「人間の性格には、一生変化しない本質的な部分がある」ということです。「六十干支」の占い、そして私の相性診断は、基本的に生年月日から相手をカテゴライズしていきます。そこには「相手の本質は生まれた時から変わらない」という前提が存在します。ですが、以前の私はどこかで「そんなことはない。人間は変わるもの」と思っていた。

しかし、営業の現場で相性診断を使うと、相手が何歳の人であっても、若かろうがお年を召していようが、そのとおりに効果が出る。だったら、やはり「人の性格には、変わらない部分がある」と思った方が合理的です。しかも、「そのようなものなのだ」と知ることができれば、変に相手を変えようとせずに相手を許せるようになります。これは、人間関係を良く維持する上でとても大切な態度です。

悩みへの寄り添いから生まれるドラマに心温か

――興味深いお話です。ちなみに、相性診断の中で、相手が「思ってもみなかった自分自身の側面」に出合うこともあるのでしょうか。

自分の本質に気づくということはあります。たとえば、本人も自覚していなかったような自身の可能性が見つかる。そういうことは、多々起こりますね。

以前、「高校生の娘がよく泣いているんです」というお母さんの相談を受けたことがあります。原因は、そのお母さんにもわからないとのことでした。そこで私が診断に行ったのですが、その娘さんはどうやら文化祭の委員になって、毎朝4時に登校して学祭の準備をしているというのです。よほど張り切っていたのでしょう。そんな彼女を見かねた教師がこう言ったそうです。「そんなに早く学校に来るな。危ないからみんなと同じ時間帯に来い」と。そこまでは別に良かったと思います。アドバイスとしても適切な部分がある。ところが、加えてその教師は「なんで君はみんなと同じことができないんだ」と言ってしまったそうです。その言葉が彼女を深く傷つけたとわかりました。なぜなら、彼女は「考えてグループ」の12番という性格だったからです。私はさっそく、お母さんにこう伝えました。

「この番号の人は、他の人が考えつかないことを思いついたり、他の人がしないような行動をとったりする傾向にあります。なぜそういうことが起こるかというと、『あたり前』の感覚が他の人と違うからです。娘さんからすれば、朝4時の登校は『あたり前』だったんです。だからこそ、皆と一緒のことができないとなじられると、自分が普通でないことを突きつけられたような気がして、『先生、なんでそんなこと言うの……』とつらくなってしまう。それで泣いているんだと思います」

そして、私はこう続けました。

「娘さんには、天才の素質がありますよ」

これには理由がありました。なぜなら、その娘さんは「普通の人ができないことをできる」からです。実は、「考えてグループ」の12番には、スポーツ選手でいえばテニスの大坂なおみさんや、元大リーガーのイチローさんなどがいます。みな、天才の素質が指摘されている。このことを端的に告げ、その性格上の特徴をしっかり説明した上で、私はお母さんにこう言いました。

「学校は一並びを大事にする傾向にあるので、学校ではなかなか評価されないかもしれません。でも、社会人になって『これだ』というものをつかんだら、彼女はめちゃくちゃ伸びます」

すると、お母さんがボロボロ泣き出したのです。「こんなこと、言われたことがなかった」と。しかも、そのお母さんは、実は自分自身も高校性の時に教師から同じことを言われていたと告白してくれました。それを聞いて、私が性格を診断してみると、彼女も「考えてグループ」の12番だったことがわかりました。

娘さんは現在、神奈川県で優秀なウェディングプランナーとして才能を開花させています。

――胸が熱くなるエピソードです。最後に、黒木さんの今後の展望について教えてださい。

世の中の人が人間関係の悩みを少しでも減らすことができたらと願っています。そこに私は貢献したい。いま、私は自身のメソッドを講座で教えています。そして、このメソッドの講師になりたいという人には権利をすべて与えて、「広めてね」と伝えています。それで社会が良くなればと考えているのです。周囲からは「商売のライバルをつくって、バカだなあ」と言われたりしますが、私は社会貢献がしたいんですね。今後もそこを追求していきます。

――本日は貴重なお話ありがとうございました。

[黒木さんのストアカ(学びのマーケット)リンク]

[ライティングサービス『あなたの自分史まとめます。』サイト]


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