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きのこ 見えない世界が見える時

 8月下旬、朝晩いくらか涼しくなったある日、山の公園でヨガをしていると。林縁にポコポコとキノコが生えていました。鮮やかな朱赤。オレンジ色でダンダラ模様の軸、卵の殻みたいな白いツボ。まごうことなくタマゴダケ!私が判別できる数少ないキノコです。さてどう調理しちゃろー、とレシピを検索すると、「オーヴォリのカルパッチョ」を発見。生食なんて珍しい♪西洋タマゴダケは「オーヴォリ」と呼ばれる愛されキノコなんです。食べてみると、みずみずしくて美味しい!で、美味しいカルパッチョを味わいながら「こんなにおいしく食べれるのにほとんどのキノコはなんで生食できないんかなー?」と、ふと思いました。お店で売ってる栽培キノコたちも生食すると下痢や皮膚炎になるんですよ。
 おおまかな理由はこんなことでした。きのこは菌類です。菌糸から消化酵素を分泌して外界から栄養素を取り込む事で成長します。きのこの持つ消化酵素の成分であるたんぱく質や、付着している菌が、人体にアレルギー反応や食中毒症状を引き起こすと考えられています。だから加熱して食べるんですね。
 ではタマゴダケは?タマゴダケは植物の根の表面付近や内部まで侵入して生きています。水分や栄養分を土から吸収して植物に与え、一方植物は光合成した糖を菌類に与え、お互いに役立つ共生関係です。このような菌類を菌根菌といいます。菌根菌は菌糸をあちらこちらに伸ばし、地面の中で網目のようなネットワークを作っていて、栄養のやりとりのみに留まらず、植物と菌根菌、又は植物同士の物質による情報伝達を行っています。菌糸の広がりは、例えばナラタケの仲間の一個体の菌糸は山一面を覆うこともあり、推定重量 100 トンの菌糸が 15 ヘクタールにわたって広がっていたという報告もあります。びっくりです!じゃあ私が食べたタマゴダケの本体は一体どんな大きさだったんだろう?キノコのある場がまるで一つの大きな生命体のように感じました。そして私がキノコと繋がることで、私も地中のネットワークにコンタクトする、そんなイメージが広がりました。

2021/9/2 森ボラ会報原稿

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