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貴瑚とムシとアンのお話  


4月9日(火)

小学校の夏休みに、読書感想文の課題が必須でした。
私の家は両親が共働きで、私は兄妹の末っ子だったため、一人で過ごすことが多く、
その間絵を描いたり本を読むことが好きでした。
幸いにも父が読書家だったので、家には「世界少年少女全集」という本があり、気に入った本は何度も読み返していました。しかし、感想文を考えるのは苦手でした。
本の要約を書いてしまい、先生から「これはあらすじで感想ではない」と指摘されたため、ますます嫌いになりました。後になって先生のおっしゃることが理解できるようになりましたが、幼い頃の私には理解できませんでした。

最近、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」を読みました。
本屋大賞受賞作品は本好きな方々が選んでいるので、間違いありません。
最初、52ヘルツのクジラってどういう意味かわからなかったので、検索してみると、他のクジラと鳴き声の周波数が異なるため、いくら鳴いても他のクジラにその声が届かない孤独なクジラのこと、とありました。
作者が言うクジラたちは、主人公の貴瑚、母親に虐待されてムシと呼ばれていた少年、そして貴瑚を無償の愛で包み込むトランスジェンダーのアイさんです。
物語が進む中で驚いたのは、貴瑚の魂の番だと思っていたアンさんが女性だったことでした。
貴瑚にカミングアウトできず、紛い物の貴瑚の男をなりふり構わず別れさせようとするアンさんが、自らの手でこの世を去ってしまう。
こんなに素敵な人物が、最後に亡くなってしまうなんて、許せません。三人が幸せに暮らせるように終わってほしかったです。ラブコメから抜け出せない、頭が空っぽの私の意見でした。

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