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大切な人

昔、演奏会の打ち上げで、チェロを弾いていた共演者の女の子が、私の大切な人です、と言って隣に座っていた女性を紹介したことをふいに思い出した。
同性愛にオープンだったこともそうだけど、大切な人、とみんなの前で言ったその潔さみたいなものは今でも忘れられない。
友人、彼氏、彼女、恋人、愛人。
どれかに当てはめることが多分、当たり前で、便利なのだと思う。
でもその言葉はその人との関係を表すには足りない。
大切な人、好きな人、ウマが合う人、一緒にいたい人、守りたいと思う人。
便利な言葉を崩して考えると、その人との関係が意外にもよく見えるんじゃないかと思う。
夜の似合う人、風を纏うような人、夏の花のような人。
そんな言葉を紡ぐ人になれたら、と思う。
あのチェロ弾きの女の子は、気まぐれな夏の空みたいな子だった。

#エッセイ #コラム #言葉 #大切な人

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