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森の中でひとり

山に咲く桜は背が高い。
周りの木々の影にならないように幹を伸ばすからなのだろうか。
一本だけあるその木は花が咲くまで桜だとは気がつかなかった。
風が吹き、桜吹雪というよりは高いところから一枚ずつ確かめるように舞い落ちてくる。
誰もいない森の中の小さな祠。
あたりは鳥のさえずりと風に鳴る葉ずれの音に満ちている。
きっと桜は散るのではなくて、自ら手放すのだと思う。
次に進むために。
命を営むために。
一枚、また一枚。
音もなく降る。

#山桜 #エッセイ

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