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月と花火

夫の友人宅でのバーベキューが終わり、花火が打ち上がるまでの間、ポツポツと歓談。
昨日は単身赴任から帰ってきている友人の実家に泊めてもらった。
岐阜県。
8時から花火が上がるということで家のすぐ前の道の歩道に腰掛けた。車は全然通らない。
友人は長男なので、実家には親戚がたくさん集まっていて、誰が誰だかわからないまま、たわいもない話しばかりしていた。こんな忙しい時期にお邪魔してごめんねと言うと、10人も20人も一緒だよと笑ってくれた。
まんまるの月が雲の間から出たり入ったりしている。
ドンと音がして濃紺の空に光が散った。
昔、おばあちゃんの家の前で瓶ビールのケースに座ってみた田舎の花火を思い出した。
小さな町の花火はすぐに終わってしまったんだった。
次々に打ち上がる花火を見ながら、終わった後のことを考えている自分に気づく。
花火が終わったあとは、なんだか夏も一緒に終わってしまったような気持ちになったんだった。
柳のような花火、ハート型。すぐに消えてしまう光の芸術。
全然知らない人と全然ゆかりもない場所で花火を見ているふわりとした感覚ばかりが体にまとわりついている。
流れの早い雲のせいで、ときどき月が花火の中に入りこむ。なんだか全然違う二つだなぁと思う。
娘が後ろでスイカを食べながらつぶやく。
「スイカってどこまで食べたらいいんやろう」
もういいと思うところまででいいよ、と私は空を見上げながら答える。
また見たいかなぁ?と自分に問いかける。
答えはイエスでもあり、ノーでもある。
最近の私はそんなのばかりだ。

#エッセイ #花火 #岐阜県 #スイカ #夏

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