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おじいちゃんと過ごす夏Day3

今日こそ、予定通りのデイサービス。おばあちゃんは9時にはお迎えに来られると行っていたけど、母親の情報では9:30〜10:00の間との事だったので、少しだけゆっくり身支度をした。実際には9:58にお迎えが来た。

おばあちゃん、お迎えのスタッフさんには愛想がとってもいい。甘え上手だ。

靴がうまく履けなくて、少し手伝ってもらったら「まぁ、悪いねぇ。バチが当たるわ」と言いながらも遠慮なく甘える(笑)

スタッフさんはプロなので、何百回言われたか分からないこのセリフに対してソッコーで「バチは対等に当たるもの」と言い放った。

もの凄い返しの速さに驚いた。それが本当かどうかはさておき、悪い気はさっと返してしまっていた。なんとも心強いスタッフさんでした🙏


おばあちゃんが無事に出掛けたので、私は母方のおじいちゃんに逢いに出掛けた。

調べてみたら「介護付き老人ホーム」に入居しているようだった。私はそういうところに行くのは初めてで、少し億劫だった。

そういう所は中に入るのが厳しそうだと思っていたし、まずそこに行くまでにバスを乗り継いでいかなきゃならないし、それにおじいちゃんと2人きりで会うのは初めてに近い?!ので、まぁまぁ不安だった。

✒︎

バス停までは電動機付き自転車を使いたかったのだけど、鍵がどこにあるのか分からなくて、さっそく母親に電話をした。

鍵のある場所を教えてもらって、通ったこともない裏口から外に出ようとすると、何かが顔に当たって私は反応的に悲鳴をあげた。

蜘蛛の巣!!!

母親は電話口でケラケラ笑っているし、どちらかと言うと、蜘蛛の方が驚いた様子で、ささっと端の方に避けて行った。

幸い、蜘蛛の巣の先に当たっただけで、真ん中に突っ込んではいなかった。よかった。。


無事に自転車に乗って最寄りのバス停まで坂道を降りた。こっそり教えてもらった、自転車を停めても良さげなところに自転車を停め、バス停にそろそろと並んだ。

バスカードは自転車の鍵と一緒にパスケースに入っていたので、そのまま使わせてもらった。

松江駅に到着すると、バスを乗り換えなくてはならなかったのだけど、母親から「駅で甘味を1つとお花を一輪買って行ってくださいな」と言われていたので駅ビルに入った。

まさに「はじめてのおつかい」状態。

最初に目に留まったお菓子屋さんで、大き過ぎないギフト用のクッキーを買った。一口サイズのクッキーが3枚×2種類。

そして、目線の向こうにお花屋さんが見えたので、お店に着いたら店員さんにすぐ聞いた。

「長持ちするお花はどれですか?一輪欲しいんです。」

すると、向日葵とカーネーションが長持ちすると教えてくれた。老人ホームにいるおじいちゃんに渡すというのもまどろっこしいので、病室に飾るものと言ったら、向日葵がいいですね🌻と即決してくれた。

たしかに、向日葵は元気が出る!


おつかいを済ませて時計を見ると、次のバスが来るまで少し時間があった。

お馴染みのスタバがバス停の目の前にあったので、ショートサイズのアイスコーヒーを買って、少しの時間、ぼんやりした。


バスの出発時間の2分前になって、ハッとしてすぐに店を出たら、悲しいことに目の前でバスが出発してしまった。

「なんだよ、ちょっとだけ、早いじゃん😢」

今朝、実は仕事で少し落ち込むことがあったから、それと相まって、少し気持ちが落ちてしまった。バス停の前のベンチに座ると、涙がぽろぽろ出てきた。

(何が悲しいんだろ)

特に答えの出ない質問が頭の中をよぎった。私がぽろぽろ泣いている隣で、2人のおばあちゃんが数十年ぶりの再会をしたらしく、懐かし話に花が咲いていた。


先に行ってしまったバスに乗ったところで、到着は早過ぎたので、本当はちょうど良かった。それでも、おじいちゃんのお昼ごはんの時間にバッティングしてしまうことが分かったので、老人ホームの一駅向こうにある「八重垣神社」にお参りして、時間を調整した。

縁結びの神社で、出雲大社と比べてしまうと本当に小さな小さな神社なのだけど、観光地化していない、その自然な姿がとても素敵だった。

前回、八重垣神社に来たのは1年半前かな。弟と一緒に来て、弟の方が私より長く神様にお願いをしていたことを覚えてる。

今回は一人だったから、小さな神社だったけどゆっくり味わい、見て回って、日本最古と呼ばれる壁画を見てきたし、名物の縁占いもしてきた。

(参考)八重垣神社公式ホームページ
https://yaegakijinja.or.jp/

ちょうど神社を一周したところで、雨が降ってきた。お昼ごはんも食べていなかったので、神社の近くにたった1つだけあるお土産屋さんに入った。

何か食べるものがあった気がしたけど、それは記憶違いで、本当に軽食だけ。カプチーノと2色アイスを注文した。


雨は嫌いじゃない。

こうやって、足を止めることを許してくれるから好き。私はいつも何かしてなきゃいけない気持ちに駆られるから、こうやって強制的に落ち着いた時間を取ることができると、ホッとする。

しばらく雨の音を聴きながら、カプチーノを飲んで、時間を過ごした。

久しぶりに、ブログも書いた。

そうこうしているうちにおやつの時間になりそうだったので、早めに行かなきゃと思ってお土産屋さんを出た。


少し歩く必要性があると思ったら、まさかの直ぐそこだった。

(これなら雨宿り必要なかったかも…)

気を取り直して、入口に入った。

「来客用」と書かれた靴箱があったので、そこを開けてみた。すると、そこには一足のクロックスが入っていた。ここはクロックスを履いて中に入るのかな??と思ったけど、一応他の靴箱も開けてみた。すると、全然違う靴が入っていたので、さっきのクロックスは誰かの履いてきた靴だということが分かった。

いくつかの靴箱を開けた後に、明らかに館内用のスリッパを見つけることが出来たので、自分の靴を靴箱に入れ、スリッパを履いて受付まで歩いて行った。

受付表は2階フロア用と3階フロア用に分けてあった。私はおじいちゃんが何階に入居しているのか分からなくて、困ってしまった。

すると、中からとても気の良さそうな品のある女性が出てきて、どなたに面会ですか?と聞いてくれた。おじいちゃんの名前を言うと「あぁ」と直ぐに分かった様子で、2階用の受付簿を指し示してくれた。

そのままその女性がおじいちゃんの部屋まで連れて行ってくれたのだけど、移動しながら「お孫さんですか?お母さんにそっくりだから、すぐに分かりましたよ。」と言ってくれた。

母親にそっくりと言うのは、見知らぬおじさんに電車の中で言われるくらいだし、自分も母親とはすごいソウルメイト感があるので、「よく言われます。」と笑って答えた。


おじいちゃんは誰と歓談するわけでもなく、自分の部屋の中にいた。

もしかして母親が事前に連絡を入れてるかな?とは思ったけど、そうでもなかったらしく、少し驚いた様子で「まぁまぁ、中に入りなさい」と部屋の中にある椅子に案内してくれた。中には桐箪笥が2つ並んでいて、とてもかっこ良かった。

おじいちゃんは要介護1なので、おばあちゃんよりしっかりしている。認知症でもないので、何かを取り違えることもないし、とても意識がクリアな人だと直ぐに分かった。

それでも介護付きの老人ホームに入っているのは、目が不自由で、昨年手術をするまでは殆ど見えていなかったからだ。

高齢で体力が落ちていたおじいちゃんの目の手術をしたがるお医者さんはいなかった。

だけど、QOLを上げるにはやっぱり見えていた方がいい。片目ずつ、体力のある時に、手術をしてもらった。

前回会った時は見えてない時だったので、当然焦点は合わないし、笑顔を見ることは無かった。けれど、今回はとても柔らかい笑顔が見えて、本当に良かった。

こうやって改めて2人で会ってみると、おじいちゃんがどれだけ賢くて、自律した人間で、聡明な人かがよく分かった。

私は久しぶり過ぎて、そして、おじいちゃんの事を知らな過ぎて、お天気の話とか、最近の家族の話とか、おばあちゃんとの2日間の話とか、当たり障りない事だけしか話せなかった。

もっとおじいちゃんが興味のあるお話ができたら、おじいちゃんはもっと楽しいのに。

高齢者は高齢者扱いされてしまうけど、高齢者の役をさせられてウンザリしている人も沢山いる。おばあちゃんもそうだし、おじいちゃんもそうだ。身体機能は落ちてきているけど、知性は高いわけだし、なんだか赤ちゃん扱いされてると感じる時もあるみたいだった。

それでも嫌な想いはしたくないので、必要な時は周りに愛想を振りまいている。

これが、社会の一部として生きていくことなのかなぁ。私はぼんやり、自分勝手な日々を反省した。

✒︎

おじいちゃんのお部屋には1時間程しかいなかったけれど、色んな人が入れ替わり立ち替わり、入ってきた。

コップにお茶を入れて持ってきてくれた方。
お医者さんと看護師さん。
ベッド脇のおトイレを交換しに来てくれた方。
ゴミ箱のゴミを回収しに来てくれた方。

まだ他にもいたかも知れないけど、まぁ自分の部屋の中でぼんやりしてられないほど多くのスタッフさんが来た。

そうやって、タスクを細分化して、わざと多くのスタッフが複数の目でこまめにおじいちゃんの様子を見に来てくれているのかも知れない。

おじいちゃんはきちんとした人なので、少し気が休まらない感じで、でもその現実を受け入れているような感じもした。

お医者さんの話し方は、私は好きじゃなかった。看護師さんの事をなんだか偉そうに「看護婦」と言うし、言葉遣いも少し雑だった。

おじいちゃんの顔を見ている様子も無かったし、何か手元の資料を見ながら、看護師さんと話しているのか、おじいちゃんに話しかけているのか分からないくらいに自分のペースで必要事項を話していた。

おじいちゃんは、お医者さんが来た時は少し怯えたような表情をしていた。お医者さんは凄い人だと思っているのかも知れないし、自分の身体に不調がないか心配だったのかも知れない。

血尿が出ることについて、痛みはないですか?と聞かれて「そんなことはありません」と答えている様子が本音なのかどうか、私には分からなかった。

とにかく、次の検査は予定を早めて行うことになった。医者の診断というのは何故か絶対的に扱われて、患者側の意思確認も何もない。変な感じがした。


あまり長居しても疲れるだろうと思って1時間を超えたあたりで、帰りの挨拶をした。

2人で写真を撮って、握手して、手を振って、またね!と言って別れた。

✒︎

外はまだ雨が降っていて、私が老人ホームを出る前にちょうどバスが出てしまっていた。そこにちょうどお友達が電話をしてくれたから、傘の中でバスを待ちながら、友達とお話をした。


来た時と同じように、松江駅でバスを乗り換えた。ちょうどバスカードがなくなってしまって、これは整理券を取るやつだな!と思って乗ってみたけど、整理券が出てこなかった。少し触ってみたけど、分からない。

仕方がないので運転手さんのところまで行って、「バスカードをください」と言った。ちゃんと買えたので、入口に戻ってカードリーダーに通した。

バスを降りる時に気づいたのだけど、このバスは循環バスで定額だったので整理券が無かったようだ。


最寄りの駅まで着いた後、近くのお店でカレーのルーを買った。おばあちゃんにはお弁当があるけど、私は久しぶりに夏野菜カレーが食べたくなった。

家に戻ると、私より先におばあちゃんがデイサービスから戻ってきていた。

お腹がすいているようで、「残りものでいい」と言われたけど、私はカレーが食べたかったので、ちょっと待ってもらってカレーを煮込んだ。

茄子が沢山余ってるいると思ったけど、冷蔵庫にあるものはもう全部傷んでしまっていた。他に野菜を見渡すと、さつまいもがあったので、さつまいもときのこを使って秋野菜カレーにした。買ったばかりのとうもろこしは茹でて、きゅうりもドレッシングでさっと和えた。

カレーはどうもおかわりをしてしまうので、おばあちゃんと2人して食べ過ぎてしまった。

それにしてもおばあちゃんは食いしん坊が過ぎるようで、明らかにお腹いっぱいなのに、目の前に食べ物が残っていると、お箸でつついてしまうようだった。

私はついつい寛いでしまったのだけど、これは片付けなくちゃと思い、テーブルの上を綺麗にした。


その後、母親からLINEが来た。

「まこちゃんの、都合の良い時に電話ください。」

母親らしい気遣いのあるメッセージ。着信でも残せば、都合が良いかどうかなんて分かるのに、こうやって書いてくれる。

電話を掛けると、母が私をある部屋に誘導した。「あのお部屋の、あの棚の隣の、あそこに缶があるでしょ?」言われるがままにその場所を探して、指定された袋を開けると、今回の帰省に掛かった交通費の半分だと言って持ち帰ってねと言ってくれた。

おじいちゃんは母が帰省する度に、交通費を半分持たせてくれるのだ。だから、母も気にすることなく、定期的に足を運ぶことができる。

これは母以外にも、叔母さんや従兄弟達がホームに遊びに来てくれた時には、母がおじいちゃんの代わりに交通費を振り込んだり、渡したりしているようだ。

家族の負担感が大きくなると、どうしても足が遠のいてしまう。だけど、おじいちゃんはこうやって家族が気持ちよく来てくれるように配慮してくれる。優しくて賢いおじいちゃん。

この説明の後、私はこの2日間の出来事を母に話した。私が思ったよりも対応力があったので(笑)、母は安心したようだった。

母の癌の検査は特に問題なく、治療も不要で、次回の定期検査の日取りだけが決まった。


おばあちゃんはデイサービスで疲れたのか、座ったまま寝落ちしそうになっていたので、自分で「いかんいかん」と言いながらベッドに移って行った。

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