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「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会」から見えたブロックチェーン技術の社会実装にあたってのインサイト(4) 証券化との関係

経済産業省「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会」で副座長をさせていただき、著作権業界の有識者の皆さんと議論をさせていただくことで得られた、ブロックチェーン技術の社会実装にあたってのインサイトを皆さんと共有するポストです。連載形式でお送りしています。

第1回 第2回 第3回

コンテンツの制作やマーケティングなど価値向上に関与しているクリエイターの人たちが、以上にご説明したような形で、作品の売上から収益の分配にあずかることができるというのは、通常のコンテンツビジネスの範囲の話としてそれほど違和感がないことなのではないかと思います。

以上の説明から、皆さんの中には、クリエイターは、楽曲Xから将来自分のところに入ってくる期待収益フローがあるのだから、これを他の人に売ることで先にお金を手に入れることができるのではないか、ということを考えつく人がいるかもしれません。

さきほどご説明したとおり、アドレスに入ってきた価値を多数の人に分配していくことはブロックチェーンの得意技です。たとえば第3回でご説明した例でいうと、Cは、M2からCに入ってくる将来の売上に対する権利を、事前に他の人に売却する、ということは技術的にはそれほど難しいものではありません。

従前の技術では、権利を得るということとお金を分けるということは別の作業ですから、実際に誰が権利を持っているか、権利者の権利割合はどのくらいかを常時把握して、権利割合に応じて権利者の銀行口座にお金を送金するということを別途しなければならなかったわけですが、ブロックチェーン技術を使えば、こうしたことは自動的に行うようにすることができてしまいます

技術的に簡単にできてしまうから実際にこれができるかというと、そうはいかないのが法律の世界です。キャッシュフローの収受権を小口化して販売すると、この収受権は基本的には有価証券に該当することになります。これが一般にセキュリティ・トークンと言われているものです。

この記事はセキュリティ・トークンを解説するための記事ではないので、あまり深入りはしませんが、セキュリティ・トークンをめぐる日本の証券法(具体的には「金融商品取引法」という法律になります。)の対応は、現状、一部不十分なところがあり、現在、この穴を埋めるための法改正が提案されているところです。

改正法には、セキュリティ・トークン(法律上は「電子記録移転権利」と呼ばれることになっています。)が有価証券に当たること、これを販売するためには証券会社(正確には「第一種金融商品取引業」というライセンスを持つ事業者)に取り扱ってもらうことが必要であることなどが書かれています。

ただし、電子記録移転権利の定義には例外規定があり、その詳細はまだ明らかになっていません。それだけではなく、そもそも電子記録移転権利がどこまでの範囲をカバーするのかについて、専門家でもまだわかっていないことがあります。

順調に行けば、来年の前半にはいろいろと分かってくることになっていますので、「ここにビジネスチャンスがあるぞ」と思う人は、今からアンテナを高く張っておくとよいでしょう。

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