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「100分de名著」で学ぶ孔子「論語」4回目その3

※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。
出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 佐久協(さくやすし)さん
ゲスト --- 佐々木常夫さん

1.前回のおさらい

うつ病の妻を支え、障害を持つ子供を育てながら、仕事に奔走した佐々木常夫さんの体験談を交え、逆境の運命を受け入れ生きる論語の知恵を学びました。

今回は、どうすれば逆境の中、泰然自若として生きられるのか?ということについて、探っていきます。

2.何もない日々

前回に引き続き、佐々木さんのお話を伺っていきます。

佐々木さん:
人間の幸不幸というのは、体重計や血圧計のように計れるものではないと思っています。
私はあのころ大変しんどい時期だったんですけれども、どんなときが幸せだったかというと、普通の人だったら、旅行したり、美味しいものを食べたりすることが幸せなのかもしれないのですが、何もない日だったんです。平凡な日が訪れたとき、幸せに思えたんです。

司会者:
運命の中に、自分の物差しを作り、その中で、人から見れば不幸に思えることも、自分では結構幸せに思えたんですね?

アシスタント:
自分の尺度で幸せだと思えることは、強い方なんだなと思います。

司会者:
往々にして、他人と比べてしまいますからね。

アシスタント:
そうですね。

3.逆境の中で楽しみを見つける

佐々木さんはなぜ人生の辛さに耐えることができたのでしょうか。

実は論語のある名言を胸に仕事に励んだからなのです。

佐々木さんは職場で楽しみながら、次々に仕事を効率化する方法を発案しました。

そして事務系同期入社の中では最速で取締役へと上り詰めたのでした。

物事に打ち込む姿勢を説いた論語のある名言をご紹介しながら、分かりやすく解説します。

「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。」

意味:
物事を知ることは大事だけれども、これを好きだという人には敵わない。
また、好きという人より、さらに楽しめるようになれれば、最高である。

佐々木さんは大変ご苦労されて社長にまで上り詰められたということなんですが、やはりお仕事が大好きだったんでしょうか?

家族のことで逆境にあったとき、私を支えてくれたのは仕事だったんです。
なぜなら、仕事は結果が出るからです。
自分が作った工場だ、自分が作ったシステムだと、私のような自己実現欲求が強い人間にとっては、仕事は面白い。

この、面白い仕事をしていたから、家族で大変なことがありましたけれども、そのように我慢できたんだということなんです。

孔子も多分いろいろな学問に対する情熱とか自分の弟子たちを教えるということの面白さがあったんじゃないのかなという気がします。

アシスタント:
孔子も弟子たちに教えることが本人のエネルギーになっていたんじゃないか、ということですね。

4.人生の支えになる論語の教え

震災後、辛い思いをされている方も多いと思うんですけど、何か心の支えになるものが論語の中にあるとしたら、佐々木さんはどんな言葉を選ばれますか?

佐々木さん:
それはやはり、「恕」、思いやり、という言葉です。
私は、この恕という言葉は、非常に重たい言葉だと思っていて、人間が幸せになるためには、この心が必要だという気がしているです。

司会者:
それでは、佐久さん(講師の方)はどうでしょうか。

講師:
これも有名な言葉ですが、
「徳は孤ならず、必ず隣有り。」
です。

徳というのは、思い悩み、それでも自暴自棄にならず、日々向上している人のことをいうのですが、そのような人は必ず手助けが来ますよ、という言葉です。

このような逆境になるというと、自暴自棄になりがちだけれども、ちょっと堪えて、踏ん張っていると、必ず手助けがあるということです。

司会者:
なかなか難しいんだろうけど、辛いと誰かを恨みたくなったりしますよね。

講師:
そこが孔子の偉いところで、あれだけ逆境に恵まれたというのもおかしいかもしれないけれども、この地までに残る言葉を残しているわけです。まさに「徳は孤ならず」で、我々が彼の文を読んでいるじゃないですか。
時代を隔てても、ちゃんと見る人は見てますよ、というのが、孔子の考え方ですよね。

4回に渡り、論語について学んできましたけれども、論語の中には人生の指針となる言葉が、たくさん散りばめられているということですよね。

講師:
彼の教えは現代的であり、ある意味では非常に近代的な教えでもあるんです。
ですから、若い人は論語を説教くさいと思わずに、パラパラとでもいいから、読んでみて、自分で、1つでも2つでも気に入ったものを覚えておく、短いものだから、1回読んで、はい、分かったというのではなく、ときどきパラパラとでも読んでみると、昔読んたものが、つまらないと思ったものでも、何年後かには、いやいや実に深いことを言っているなということがあるものです。
結局、論語を読むことで、自分の成長と堕落が分かるんです。

司会者:
(論語を読むことが)ものさしになるということですね。
佐々木さんはお母さんが論語が大好きだったということですが、論語の魅力について、一言お願いします。

佐々木さん:
いろんな言葉があって、いろいろと解釈できて、そのときの自分によって、その感じが変わるんですよね。
だから非常に含蓄のある、奥深いものだと、私は思います。

西洋の哲学は、善か悪か、コインの裏表のようなものなんです。
ところが、東洋の哲学はジャンケンの世界なんです。
つまりグーは勝ちでもあるし、負けにもなるということです。
論語をコインの裏表で読むと矛盾していて訳が分からないということになりますが、ジャンケンの感覚で読むと理解できるんです。

21世紀はコインの裏表ではなく、ジャンケンの世界になっていきます。

5.論語を学んだ感想

今回の番組では、自分の頭で考えることの大切さ、リーダーに必要なこと、逆境の乗り越え方という視点で、論語を学びました。

学生時代は漢文の読み方に難しさを感じて、読むことを敬遠していました。
でも、孔子の生い立ちや弟子たちとの会話やエピソードを知り、また、論語の言葉を支えに逆境を乗り越え、社会的に成功を収めた方のお話を聞くことで、論語は人生を生きる上で必要な知恵の詰まった教えであることが分かりました。

論語を学んで思ったのは、学び続けることや思いやりをもって生きることの大切さです。

科学技術が発達し、何かが効率的にできるようになっても、それを扱うのは人間であり、その人間のあり方によって、高度な技術を活かすのも殺すのも、人間のあり方ひとつだということを忘れてはいけないと思います。

学び続けることで、自分自身の人としてのあり方や人との関わり方を、ときには疑い、ときには納得しながら、生きていくことは大切なことなのではないかと思いました。

また、難しいと思えるものでも、手引きとなるものから取り組んでみれば、得るものは大きく、その手段を探してみることから始めていけばいいことが分かりました。

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