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「100分de名著」で学ぶブッダ「真理のことば」 」3回目その3

1.前回のおさらい

自分の子供や財産に執着すると苦しみを生みます。
自分の子供は自分とは別個の人格を持つ人間で、その子なりの人生があり、まあ財産にしても、たまたま自分のところにあるだけで、使うことによりお金が活かされます。
自分の子供や財産は自分の思い通りになるものではないということを理解し、執着を手放すことで、苦しみから逃れることができるということを、前回学びました。

出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 佐々木閑(しずか)さん

2.元々ない「自分」

ナレーション:
子供まで自分の所有物だと思い、自分の思い通りにする。
執着は自分勝手な思い込みを生むとブッダは考えました。

そうした執着から逃れるためには、自分を変えるしかないとブッダは説きます。

『愚かな人は
「私には息子がいる」
「私には財産がある」などといって
それで思い悩むが
自分自身がそもそも
自分のものではない
ましてやどうして
息子が自分のものであろうか
財産が自分のものであったりしようか』

司会者:
上の詩の「自分自身はそもそも自分のものではない」というところを解説していただきたいです。

講師:
自分自身というものが、不変なものであるなら素晴らしいことですが、「今の私」そして「この先の私」は別物で、どんどん変わっていくものです。
様々な要素が集まってできた「今の私」は仮の存在であって、これが「私」であるという実態は何もない、それなのに「私」という存在にこだわるから、苦しみが生まれるということです。

ナレーション:
人間を構成する肉体は、いつかは衰えていくものです。
ですから自分の姿に執着することは意味がありません。
ただし、心は衰えることなく、鍛えることができるとブッダは説きます。

執着にとらわれない柔軟な意思を持ち、将来の道筋を決めていくことが大切なのだとブッダは考えたのです。

講師:
あくまで、「私」は様々な要素の集まりなんだけれども、いまの私を変えていくことによって将来の道筋を変えていくという意思作用も、今の私の要素としてあるわけです。

だからこそ、仏教は宿命論ではなくて、今の自分の努力がこの先の自分を決めていくという修行の宗教になるわけです。

3.意思を持って生きるとは?

ブッダは、執着は、特に良くない煩悩のひとつだと考えました。
そして、自分の教えにさえも執着するするなと言っています。

その教えとなる「いかだのたとえ」という話が、マッジマニカーヤというお経の中にありますので、ご紹介します。

4.「いかだのたとえ」

ある旅人が街を出て旅に行こうとしていました。

旅の途中に、歩いて渡れないような大きな川がありました。

そこで、旅人は木の枝を集めて、いかだを作ろうとしました。

そして旅人は、その筏に乗り、川の向こう岸まで渡っていきます。

川岸に辿り着いた旅人は、そのいかだを頭に乗せて、旅を続けると思うかね?

5.今一番大切なものを選び取る

「いかだのたとえ」はここまでになりますが、どのように思われますか?

いかだは重いので、頭に乗せて歩いて旅をしていたら、行こうとしていた街にたどり着くという本来の目的を叶えることはできず、旅の途中で倒れ、挫折してしまう恐れがあるわけです。

自分が大切だと思っているいかだのせいで挫折してしまうこともありうるということです。
ここでいう、いかだというのはブッダの教えをたとえています。

旅人が彼岸に渡るというのは、悟りの境地を開くことを意味し、悟りの境地に至ったら、自分の教えはいらないとブッダは説いています。

司会者:
成功体験をもある意味、無意味になってしまうことを言っているのですね。

講師:
その場その場で一番大切なものを選び取っていくべきで、過去にうまくいったとか成功したとかいうことは、今の自分にとって関係ないということを言っています。

6.ここまでの感想

変わりいくものは世の中だけではなく、自分自身についても言えることで、「今の私」はたまたま何かが集まってできた仮の自分であって、「今の私」と「この先」の私は別物である。
そして、過去の成功体験にこだわらず、今一番大切なものを選び取っていくべきであるということを、今回学びました。

自分も自覚できないだけで、少しずつ変化していく生き物だと思えば、「自分とはこういうものだ」という考えに縛られたり、過去の成功体験を生かそうとしても、今の自分には合わなくなっている可能性もあります。

状況を良く見て、そのときにふさわしい選択をすべきであるという考えは、変化の早い現代に生きていく上で必要な考え方だと思いましたし、仏教を学ぶことで、柔軟な姿勢で生きるべきだということを学ぶことができました。

※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。


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