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第十二章 期待を共有する 1 ON 1 をしているか

部下に役割を与えて、苦悩を得てもらい、部下が自らに課題意識を持ち始めたら、次にあなたが取り組むのは 1 ON 1 です。

いわゆる1対1の面談になります。ビジネス用語としての1 ON 1には様々な狙いや効果がありますが、ここで触れる「1 ON 1」 は「部下が役職者への昇進に興味を持つため」という目的に特化してご説明します。

今回のような位置づけの 1 ON 1 で大切なのは、1 ON 1 が業務にならないように配慮することです。つまり、目標設定シートの作成や、課題の振り返りの作成を義務化しないという点です。理由は、1 ON 1 に部下が負担を感じてしまうと、成果が得られにくいからです。

やり方は、まず前提としてあなたは部下に前章で触れた小さなプロジェクトのリーダーという役割を与えています。その役割を部下が1カ月程度務めた後から、2週に一回、3週に一回程度の頻度で面談する機会を設け、部下と口頭でやり取りをします。

いきなり本題に入る前に、まずは部下の近況から聞いて、この1 ON 1 の場に対する安心や信頼を得てから質問に入ります。その時に聞く質問は、「人をまとめる役割を担ってみて、今自分に感じている課題は何があるか」です。この時に、明確な課題を持っている部下と、そうでない部下では対応が分かれます。

課題を持っている部下に対しては、助言をするのではなく、「どうしたらクリアできそうか」と部下に答えを求めます。部下が精神論で終始しているようであれば、これまでに述べた「自作思考」の観点から、自分の伝え方や巻き込み方を高める方向に目を向けられるよう導いていきます。

そして、精神論だけでなく、一般論を得て引き出しを増やすことを提案します。提案内容は、読書、動画共有サイトでの学び、ラジオ音声アプリでの学びの中から部下に選んでもらいます。

読書を選んだ部下には、自分で本を選んでくるか、上司、つまりあなたから勧められたいかも選んでもらいます。すぐに自分のお勧めの書籍を紹介する上司がいますが、部下が能動的に学ぶという点ではあまりお勧めできません。

そうして、引き出しを増やす方法を部下が自分で選んだ取り組みについて、次回の面談で進捗を共有してもらい、どんな実践をしてみたか、自分の何を変えてみたのか傾聴して、承認していきます。

ときには、あなたも知らない有用な書籍を紹介されることもあれば、知らない動画共有サイトのチャネルが共有されることもあるので、学ぶべきコンテンツを限定しないことは大切です。

課題を持っていない部下に対しては、質問を変えます。「今率いているプロジェクトのチームメンバーの長所と開発余地のある所はどんなところか」と問います。

そこで挙がった答えに対して、「長所をさらに伸ばすにはどうしたらよいか」あるいは「開発余地のある所はどう改善を図っていけるか」と質問します。その返答が、部下の精神論に終始していたら、前述と同じ流れを辿り、一般論を得る提案に移ります。

これらの面談で回数を重ねる中で、部下が「自分を高めることで、メンバーへの影響が変わり、伝わり方が変わった経験」を得始めたら、次の質問をしてください。

「今、うちの事業部が抱える課題は何だと思うか」

「それをクリアするためにはどうしたら良いだろうか」

この質問で得た回答は、プロジェクトをまとめる中で、「自作思考」を手にいれた部下であれば、当事者意識を持った回答が返ってきます。

その回答に絶対解はありませんので、部下が思いついた施策は、ぜひ取り組んでみてほしいと伝えてください。その後の面談では、自己成長のために一般論をどう得てきたかに加えて、事業部の課題をどうクリアしようとしているかの2点がテーマになります。

部下は知らず知らずのうちに、事業部全体の課題を考えるようになり、それに対して主体的にクリアしようとする人材に変貌を遂げることになります。

なぜ、質問を主体とするのでしょうか。それは、質問されると人は答えを探すという性質を持っているからです。その場で答えられなくても構いません。日にちが経過しても、その質問は頭の中に残り、部下は次の面談まで答えを探し続けてくれます。

この章のまとめとして、1 ON 1 を通じて発問しながら、自己を高める取り組みに部下を導いていき、「自分を変えたら、チームを変えられる経験」を積むことで、プロジェクト単位から事業部全体の課題に視座を高めていきます。

さらに課題を見つける視点を持つだけでなく、当事者意識を持って、事業部がより良くなるように働き掛けいくことを 1 ON 1 で支援していきます。

次の章では、「部下が事業部にどう働き掛けていくのか」について触れていきます。

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リーダ―育成・事業部再生コンサルタント

本間 正道
twitterID:@masamichihon

Email:playbook.consultant@gmail.com

著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』

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