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猫のこと…迷い猫

近所の電柱に迷い猫の貼り紙があった。


動物病院に連れて来た時に、逃げてしまったらしい。

「ちょっと気にしとくか」

と心に留め、それから数日後。
夜勤に行く途中で普段見かけない猫と遭遇した。
この貼り紙の写真を撮ってたので、すぐに確認した。
似てる。特徴とばっちり合う。
すぐに飼い主さんに連絡して、
「僕近所なんで、気にしておきます」
と伝えた。

実際にその猫だったとして、捕まえるのは難しい。
だったら得意の猫たらしだと思ったが、それからは会えなかった。
いつも気にしながら夜勤に行き、帰りは目撃情報があった公園で30分居座ってから帰る。そんな一ヵ月だった。

数日前、うちの近くの電柱に貼ってあった貼り紙が剥がされていた。
「自然に剥がれてしまったか、飼い主さんが諦めて剥がしてしまったのかな」
と思ってた。
するとその日の夜、飼い主さんから電話があり、
「見つかりました!」
との事。
「えー!よかったですー!貼り紙が剥がされてたからどうしたんだろうと思って!」
「主人が剥がしに行きまして。本当にありがとうございました。」
「いえいえ、何もお力になれずに。」
「とんでもないです。本当に皆さんのおかげです。」
「いやー、ホントによかったです。」
「ありがとうございます。」
「………」
「………」
「………」
「…では、見つかったというご報告でした」
「ああ!はい!よかったです!それでは!」
ツーツーツー

飼い主さんの声が、口角上がってるんだろうなという声色だったのですごく嬉しかった。
ラブちゃん、会えなかったけど(もしかしたら一度会ってたかも?)実家でゆっくりしてな。

僕は16ぐらいの時、4匹の猫を飼っていた。
その中で「ふう」というメスの黒猫がいたのだが、こいつが急にいなくなった。
毎日毎日探して、近所の野良猫に会う度に持ち歩いてた「ふう」の写真を見せて「もし見かけたら家に帰るように言って」と言い続けた。
一ヵ月、三ヵ月と時が経つにつれ、段々と気にかけなくなる自分にも悲しくなった。
「もうどこかで死んでしまったのかもしれない」
と自分自身に諦めるよう思い込ませようとしていた。

四ヵ月、五ヵ月と経つ頃には、多分探さなくなっていたと思う。

しかし半年経ったある日、「ふう」は急に帰って来た。
窓の外で「にゃーにゃー!」と大声で鳴く声が聞こえて、窓をガラッと開けると「ふう」が急いで入って来た。

「ふう」はがっつくように餌を食べ、自分に向かってずっと「にゃー!にゃー!」と鳴いていた。

「やっと帰れたー!おい!ちゃんと探してたのかー!?」

とでも言わんばかりに。

もし猫がいなくなってしまった飼い主さんがいたら、諦めないでほしい。
猫はなんとか家に帰ろうと、必死で頑張ってるかもしれないから。

「ふう」の写真はないが、「ふう」はこの子達の子供である。

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