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「論語と算盤」の「判例」の朗読

澁澤栄一
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国会図書館で著作権フリーで公開されている澁澤栄一の「論語と算盤」の「判例」を音読したものです。
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000782366-00

原文は以下のとおり。
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本書題して『論語と算盤』とせしは、毫(ごう)も 奇をてらい 異を好みて世人に迎合せんがためにあらずして、その命名は全く次項の理由に基づくものなり。
本書収める所は、わがくに実業界の一大権威たるとともに、特に財界の恩恵者たる渋沢子爵 (ししゃく)が、明治の初年大に慨する所あり。すなわち印綬 (いんじゅ)を解きて 野に下り、翻然 (ほんぜん)として実業界に投ぜられるにあたり、信条を孔子教にとり、以来四十有余年の久しき、『論語と算盤』とは必ず合致すべきもの、また合致せしめざるべからざるもの、換言すれば、「仁義と殖利 (しょくり)」とは、その根底において必ずしも捍格(かんかく) するものにあらざることを創唱 (そうしょう)し実践し、身を以て範(はん)を垂れ 、且つ筆に舌に鼓吹 (こすい)せられつつあるの精髄 (せいずい)なり。
簡冊(かんさく)をなすがごときは、もとより子爵の志にあらざるは、あえて再言するの要なしといえども、世上今なお「道義と金銭」とは柄鑿(ぜいさく)相容れざるもののごとき謬想(びゅうそう)に囚わるるもの尠少(せんしょう)にあらざるをもって、ここに偉人の活教訓を提供して、これが迷夢(めいむ)を警醒(けいせい) せんがため、特に快諾を得て収集編さんせるものなり。
書中に収集せるものは、子爵が時処に関わらず、物に応じ事に接して訓話せられたるものなれば、もとより一の著述におけるがごとく、秩序的の系統をなさざるは言をもちいざるのみならず、往々重複するもの少なからざれども、重複はすなわち丁寧反復の意にして、特にその事項に対して注意を促すものというべきのみ。
書中、篇を設け章を別ちたりといえども、これもとより毎訓話の全璧にわたるものにあらずして、中について崑山(こんざん)の片玉(へんぎょく) を捃摭 (くんせき)し、読書子の繙閲 (はんえつ)に便ぜんがため、特に編者が推類区分したるに過ぎざるなり。
本書を編さんするにあたりては、これが資料はことごとく龍門雑誌に仰ぎたるものなれば、ここに明記して責任を明らかにす。
本書の刊行に際しては、子爵門下の龍門社幹事八十島親徳氏は、常に公私の要務多端なるにも関わらず、一再ならず貴重の時間を割愛し、もって懇篤(こんとく)なる幇助(ほうじょ)と便宜とを与えられたり。よってここに特記し、謹んで感謝の意を表す。
編者識

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