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借金は返さなくてもいい?

財務省は2022/5/10、税収で返済しなければいけない国の長期債務残高が18年連続増加し、2022年3月末時点で1017兆円になったと発表しました。 
財政の健全度を示す指標の一つに国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率があります。2021年時点で米国が133%、イギリスが108%に対し、日本は256%とギリシャを超えております。10年で長短の国債残高が280兆円増えたのに金利が上がらなかったのは、日銀が国債保有を460兆円積み増して吸収しているからです。日銀の金融政策は事実上政府債務の穴埋めです。巨額の債務を抱えた財政は、金利上昇に弱く、財務省の試算では金利が1%上昇した場合、2025年度の元利払いの負担は想定より3.7兆円増えます。
 
日銀の資金循環統計によると、家計債務は2021年9月末で346兆円と2年前より4%増え、特に住宅ローンが216兆円と5%増えました。コロナ禍で住環境を見直そうとする需要は大きいです。一方、住宅価格の状況はコロナ禍を経た価格上昇率は1%程度で、欧米を大幅に下回ります。 
 
財務省が公表した2021年10月から12月の法人企業統計調査を基にすると、企業の債務が76兆円過剰と計算されます。過剰債務はリーマンショック後に110兆円に達し、アベノミクスの元で2010年代半ばに10〜30兆円まで低下しましたが、2018年の景気後退局面で再び増加に転じ、コロナ禍で70兆円まで膨らみました。
東京商工リサーチによると2021年度の倒産件数は約6000件と57年ぶりの低水準です。日銀によると、金融機関の総貸出残高は2021年12月期に700兆円となってます。コロナ前の2019年同期に比べ1割近く多いです。需要が急減した宿泊業向けは1兆円、飲食業も2.5兆円増えました。
中小企業の35%が自社の債務に過剰感を抱いています。日本の中小企業は360万社あるため、単純計算で当てはめれば24万社ほどが事業再生予備軍となります。国際決済銀行によると2021年3月期時点で、日本の企業が抱える債務は国内総生産比で116%に達します。 
 
日本だけでなく世界各国も債務過剰の状況です。
国際金融協会が2022/2/23に発表した「グローバル債務モニター」によると、2021年度の世界の債務残高は前年比10兆ドル増の303兆ドルと過去最高になりました。世界のGDPに占める債務の割合は351パーセントです。
世界の債務をセクター別に見ると企業債務が89兆ドル、政府債務が88兆ドル、金融は70兆ドル、家計が57兆ドルです。
地域別では、新興国市場の債務は95兆ドル、GDPに占める割合は248パーセントです。主に中国の債務が60兆ドルとなったのが主な要因です。中国の債務がGDPに占める割合は330%です。
 
米ダラス連銀によると、主要25カ国の住宅価格はコロナ後に急上昇し、2021年7〜9月は前年同期比13%高まで上がりました。22カ国では住宅価格の上昇率が可処分所得の上昇率よりも大きく、結果として住宅ローン残高が膨らみ、世界の家計債務は2021年9月で55.4兆ドルとコロナ前より約6兆ドル増えました。
 
コロナ対応ということで、2020年から各国政府は湯水のようにお金を投入しまくりました。これはリーマンショックを繰り返してはならないという教訓から来るもので、結果として大恐慌にはなりませんでしたが、投入は税収を無視して実施されたため、多額の借金が残りました。
『借金って返さなくてもいいんでしたっけ?』いいえ、返済しなければなりません。日本の1000兆円もの債務はどうやって返すのでしょうか?多分これを答えられる人はいないと思います。『MMT理論でいくら借りてもいいんだ』という方もいらっしゃいますが、私はこの考えに懐疑的です。経済人の直感として、いくらでも借金していいという考え方が成り立ったら、皆借金しまくるはずです。でも現実には全ての人が借金しまくっていません。なぜ国だけが例外になるのでしょうか?鎌倉時代のように日本だけで経済が成り立っていればその考え方もアリかもしれませんが、今や世界とは切っても切り離せない関係です。日本だけの世界が作れるはずもありません。
 
岸田政権は夏の参院選対策にまたバラマキをする補正予算を組むようですが、もうそろそろ自分の懐を考えた方が良いと思います。『借金は返済するもの』という自覚を持つことが今日本に一番必要なことではないでしょうか? 


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