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瞼のスクリーン

目を閉じれば高密度の黒
まるで心映し出すよう
雑音の多い現実世界
シャットダウンして
再起動するような
一瞬の黒、引き延ばして
何が映るか
しばらくすると
星がチカチカ
何かの始まりを嘯く

目を閉じればスモーキー
タバコは吸わないけれど
(紙も電子も)
霧か煙かは分からない
匂いはしないから
掻き分けても動かない
不思議な流体
世界は何処へいってしまったの?
別にそこまで気にしてないけど
せっかく目を閉じたから
モヤの中を進む少女のように
不安を演じてみたい
そんな好奇心

目を閉じればパリジェンヌ
木枯らし吹く勝手口
ポケットに手を突っ込み
アルバイトの薄給を嘆く
賃金の出ない時間は
支出をぜひ抑えていきたい
だから
呼吸は少なめの休憩時間
動きは小さめの通勤時間

目を閉じれば言い争い
キングとクイーンの小競り合い
片方がダイヤで
片方がクローバー
だとすると夫婦ではないらしい
2人とも声は大きいが
瞼の裏はトーキーではない
それでも迫力は大したものだ
あーだこーだ
どーのこーの
話し合いで解決しようとするあたり
好感が持てる

目を閉じればハイジャック
乗客はワインで陽気な様子
管制塔はもう何年もストライキだし
パイロットも
添乗員も
ワールドカップに夢中で
まるで状況を理解していない
私だけが冷静でまともな世界
目出し帽を被ったヤツらは
おそらく全部で6人だ
今はUNOをしながら
犯行動機を考えているらしい

目を閉じれば花粉が燦々と舞う
ああ、鼻水が出過ぎて
脱水症状を起こしそう
最近ジプシーに転職した父は
ドラッグストアで
間違った薬を買う
ただ眠くなるだけで
ボーッとする感じは
いつもと変わらない
ピチョン
ピチョン
湿潤の鼻腔に
最高級の除湿器を頼みます

目を閉じれば思い出す
あの日のみそ汁とパンとゼットン
僕を癒す
最高の組み合わせ
鉄板のコンビネーション

目を閉じれば思い出す
好きなあの子の
ヘアピンの輝き
マイケルジャクソンの似顔絵と
叫び声をプレゼントしたっけか

目を閉じれば思い出す
膝軟膏が擦り減った話
どうしちまったんだ俺の膝
悲しくなっちまって
まいっちゃって
泣いちゃった十五夜の夜
結局
医者がレントゲン写真
取り違えちまってたらしい
大丈夫かなぁ?
見知らぬ膝軟膏の人

目を開ければ夜明けはまだ先
中途半端な時間に起きるのは
日常茶飯事
ポジティブに思う時は
ネガティブに思う時と
同じくらいある
皆もそうなのかな?
2・3回、瞬きしてクラッチする
少し水を飲もう
瞼の毛細血管を労って
三原色が淡白にならないように

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、