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【ライブ(ビューイング)感想文】Chilli Beans.「”Welcome to My Castle” at Budokan」@日本武道館 2024.2.3(土)



 こんにちは。シリアスファイターです。


 今回はChilli Beans.(以下、チリビ)、日本武道館公演のライブ感想文です(私はライブビューイングで映画館にて参加)。


 昨年、ゆるりと足を踏み入れるとともに、音源や9月の札幌でのワンマンなどを経て、好きの確信を大いに深めたチリビですが、そうして踏み入れたチリビ沼、ならぬチリビ城から脱出する術も、脱出しようという気概も、ポジティブな意味で投げ出さざるを得なくなった昨年発売のアルバム、「Welcome to My Castle」。




 比較的ネガティブで陰鬱とした音や歌詞世界が目立つ楽曲も多い中、聞いていてどんよりした気分になることはほぼなく、むしろそのかっこよさに気分が高揚したのは、そういう気持ちですら自分たちの大好きな音楽で表現したいし、できるはずというポジティブな思いが、その音から伝わってきたからに他なりません。


 そんなアルバム(お城)を引っ提げて、日本武道館でワンマンライブ…。
 それはそれは行きたいに決まっていましたがそうはいかず…と思っていたら、まさかの全国の映画館でライブビューイングがあるとのこと!



 せっかくの機会…遠く北海道の地にいる私も是非、リアルタイムで目撃したい…!
 ということで、人生初のライブビューイングによるライブ参加を決め、映画館へ突撃しました。


 この日は札幌シネマフロンティアにてライブビューイングに参加。
 流石に喉は乾くだろうと、ドリンクメニューを眺めながらレジに並んでいると、レモネードの文字が。
 レモネードとチリビを結ぶ直線矢印が私の脳天を突き抜けたところで、レモネードMIXのコカコーラゼロを携えて、ルンルンな心持ちでスクリーンへ。


 ちょうど18時を回った辺りで、会場全体を映す映像がスクリーンに映し出され、場内が暗くなります。


 体感的にその2〜3分後、スクリーンの向こうにある武道館の照明も暗転し、途端に歓声に包まれる場内。



 ニューアルバムの導入部分に当たる怪しげな雰囲気の「Intro」が、このライブ用のロングver.で流れる中、ろうそくの灯りを持って、暗い部屋の中に配置されたおもちゃを照らしながら、部屋を散策するような主観映像が流れ始めます。


 これから散策する部屋=お城の全貌を少しずつダイジェストのようになぞるような映像にワクワクしていると、場内の歓声が大きくなっている…ということは、おそらくメンバーがステージ上に現れているのでしょう…!


 まだ薄暗いステージ上にいるメンバーにカメラが切り替わり、気付けば映像は大きな窓枠ごしに見えるどんよりとした空に変わっていて、そこに叩きつけられるような招待状…!


 いよいよチリビ城に閉じ込められたことを察知して興奮が抑えきれない会場を他所に、ライブはアルバムの曲順通り、「Hello bad boy」からスタート。
 Lilyさん(ギター)、Maikaさん(ベース)、サポートのyuumiさん(ドラム)は淡々と自らのプレイに徹しつつ、そこにMotoさん(ボーカル)の、ほどよく力が抜けたボーカルが重なります。


 どことなく陰鬱な雰囲気を漂わせつつも、ただただスタイリッシュでかっこいい音だけを鳴らす、アルバムの世界観に沿った幕開けです。


 イントロのベースラインを弾き始めると同時に見られた、Maikaさんの素敵スマイルが花開いた「Welcome」で、客席の空気も途端にポジティブ一色に…!


 サビとともに、ステージバックに映し出された窓枠の上部にカラフルな「Welcome」の文字と、途端にポップに放たれるサビのグルーヴに、もう歓迎されてされて仕方ないので、こちらもそれはそれは楽しくなってきました…!

 奇跡なら起こらない今日は
 君の心で歌って“singing”

Welcome


 もうどうしたって逃げられないチリビ城の中で、声を出さず静かに見てる映画館の中で、心の中では既に、自由に、私の心で歌っていました…!


 yuumiさんの力強いタムが映えるイントロのフレーズから既に歓声があがっていた「neck」は、ジリジリと燃え上がるようなLilyさんのギターの見せ場。


 終盤に向けて大爆発するのは、上の動画でも、9月の札幌でのライブでも同様でしたが、その時より会場のスケールを増した武道館の規模でも、映えまくるというより、更に燃え上がるような熱いギター捌きに、会場の歓声はみるみる大きくなります…!

 「rose」では序盤から、武道館中のお客さんが、原曲でのVaundyさんのパートを、メンバーが何を言わずとも大合唱。


 この2曲の流れだけで、武道館に相応しすぎるスケールの楽曲と、演奏の説得力があるバンドであることが堂々と証明されてしまう、痛快すぎる流れです…!


 曲終わりに場内は暗転し、ステージ左右のスクリーンにパソコンの入力画面のようなものが。
 「my life is.....」、「my life is b.....」、「my life...」、打ち込んでは消し、打ち込んでは消してを繰り返す中、ブツっと消える画面と同時に、ステージに1人残されたMotoさんが打ち込みのビートに合わせて歌う「My life is saikooo」。


 なんだか気怠そうな、時に鼻で笑うようなため息混じりの歌唱は、「今「最高」なんだから、これ以上は何も言うな」と言わないと、言い聞かせないとやっていけないような諦めや怒りも称えるような説得力がありますが、そこに作為性は全く見えず、あくまでも自然体で楽しそうに音階を紡いでいるように感じられます。


 そこに戻ってきた楽器隊が、曲終わりと同時に奏でるのは、勇ましいギターと太いスラップベースから「See C Love」。



 サビに入ると同時に、客席を前から後ろになぞるように広がる照明とともに、一気に視界が広がるグルーヴが、会場に溶け込むカタルシスが何度も押し寄せます…!


 こんなにも広い会場で映えるグルーヴなのかと、興奮しつつ何だか恐れ多い気もしてきたところで、怒りのMaikaさん超絶スラップモード更新中のまま、ファンキーなグルーヴを扇動する「This way」→もはやライブでは恒例の、メンバー総出で鼓動を揺らしにかかるドラムセッションと、武道館中に溢れる「I Don't Need Your LOVE」のコールアンドレスポンスが気持ちよすぎた「duri-dade」と、チリビによる音楽攻撃は止まるところを知りません…!


 クライマックス間近を錯覚する演奏の昂りでしたが、今思えば、ここまででまだ折り返しにも到達していない凄まじさ。

 そのまま再び暗転する場内に、青を基調とした部屋の中で、時計やおもちゃがゆらゆらと揺れ動くような映像がゆったりと流れ、終わると同時に、心の視界にも青が広がるような瑞々しい音を解き放つ「aaa」に繋げてみせます。
 ひんやりと寂しげですが、どこか心地よさすら感じるグルーヴ…。



 Motoさん「…「lemonade」!」



 今日飲んでいたドリンクのことなど、ここまでほぼ忘れていたくらいライブに没頭していた中、タイトルコールで歓声が上がるとともに、ふと思い出して飲みながら、肩の力を抜いて聞き入ります。
 気のせいでは済まされないほど、いつも以上に甘酸っぱさが身体中に染み渡るレモネード。
 コーラも込みなのでやや甘さ成分が優勢だったこともあってか(?)、終始楽しそうにハニカミながら歌うMotoさんの様子が一番印象に残ったのはこの曲で、いかにこの日のライブを自然体で楽しんでいるかを象徴的に表している瞬間の一つでした。

 Motoさんがハンドマイクからスタンドマイクに切り替え、薄暗い照明の中、静かに息を吐くように歌い始めるのは「アンドロン」。


 ポップで可愛らしく切ないメロディなのに、躍動感があるサビのグルーヴで自然と身体が動いてしまうという、私の中では不思議でたまらない曲にやっぱり心が疼いて仕方なくなったところで、「それならもっともっと心も身体も踊っちゃいなよ!」と手招きされるように始まる「Tremolo」。


 メンバー全員に笑顔が見られる中、アウトロのセッションに突入する頃には、3人が中央に集まってわちゃわちゃと楽しそうに身体を揺らしながら演奏に興じる様があまりに楽しそうで…愛おしくて…!
 こんな瞬間が、できるだけ長く続いてほしいと、曲の歌詞も相まって、強く願わずにはいられませんでした。


 過去曲ゾーンはまだまだ続き、渋いLilyさんのギターから、昨年秋のツアーでは聞けなかった「daylight」。


 楽しそうな雰囲気を携えた演奏は変わらずですが、ステージバックに流れる、夜の都会の街並みを窓越しに映し出す映像は、クリスマスの切なくも美しい風景を連想します。
 憧れてはいるものの、何らかの要因でそこには手が届かないような歯がゆい感覚を想起するような演出。
 そういえば、ここはお城の中でした。


 それを再び自覚した頃、曲終わりに暗転する場内に、おもちゃで散らかった部屋の中で、1人の子どもが車?飛行機?の模型で遊ぶ映像が流れます。
 その子どもが遊んでる車なのか、はたまた別の車かは分かりませんでしたが、映像は時折激しく動き回る車側の主観映像に切り替わり、次第に速度を上げる車は、部屋の中の何かと衝突し横転してしまいます。


 静けさが漂い、暗転する場内にLilyさんのテケテケと忍び寄るギターフレーズは「doll」。


 先ほどの映像は、車として(心持たぬ人形として?)遊ばれてるうちに、とんでもないことになっていたことを表す隠喩だと、勝手に解釈して1人でゾクゾクする中、ドラムのビートに合わせて真っ赤な砂嵐が現れたり消えたりするステージバックの映像に合わせて、静かな佇まいで演奏と歌に没頭する様は、思わず息を呑むかっこよさに溢れていました…。


 そのまま、「もうあなたの好きにしなよ。」と諦めすら感じられる「stressed」を、気怠くも心突き刺す歌で聞かせてくれるMotoさん。


 それでも、ここが自分の心の終わりではありません。
 コロっと切り替えて、Motoさんの静かなタイトルコールから、新たな船出の準備を整える
のは「Raise」。

 掲げよう この胸溢れてる
 孤独だけじゃ生きれない
 幼い僕らなら自由だな
 バカな夢 生きる

Raise



 船頭として、チリビの演奏の頼もしさたるや…!


 サビになる頃には、またこの世界の続きを見たくなっているくらいには自由に解放された心に呼応するように、スーッと視界が開けるアンサンブルが会場に広がる様を、映像越しでも感じることができました。


 そうは言っても全てが全て、綺麗に大団円に向かうわけでもないのが人間の心。
 再び少し脱力して、少しアンニュイな雰囲気が漂う「wonderland」を挟み、Maikaさんがメインボーカルの「spark」に繋げていきます。


 フワッと広がるようなアンサンブルとともに、Maikaさんの優しい歌声が透明のまま、どこまでも透き通って一本の線を浮かべて伸びていく様があまりにも心地良すぎて、心までフワッと浮かび上がりそう…!
 サビの最後のフレーズまで出番がないMotoさんが、ドラムセットの端の方に座ってリラックスしながら音に身を寄せている様にも、何だかほっこりしてしまいました。


 ニューアルバムにあるような心の浮き沈みを追体験するようなブロックが終わるとともに、先ほど子どもがいた部屋の映像が映し出されます。
 一つ一つ丁寧に、中央にあるおもちゃ箱におもちゃを閉まった後、部屋を出ていく子ども。 
 置き去りにされた箱だけが映し出される中、「もうライブもおしまいか…」と思いきや。
 箱の中からビックリ箱のように、ピエロがビヨーーーンと飛び出してきます🤡




 Maikaさんのスラップベースがバイーーーン!と飛び出したら、「まだまだ遊び足りないでしょ…!?」と、音楽界の悪戯っ子4人衆による「105から、終盤戦に突入…!


 楽しげかつ怪しげなグルーヴは原曲以上で、ライブ会場の暗がりで聞くからこそ、まるでイケない遊びに興じているかのような背徳感が2億倍増しの様相…これは…合法的に楽しい!!


 イントロから歓声が上がったのは、個人的にもビックリな「Digital Persona」
 中々のレア曲では…!


 ここまでまともな休憩もMCもないにも関わらず、サビでのMotoさんの力強い歌唱はブレるどころか力強さを増す一方で、グルーヴを牽引し続けています!
 会場も揺れる揺れる!!


 その流れで受け止めた「シェキララ」は、あまりに楽しすぎて映画館の座席から飛び出しかけていました(心はとっくにスクリーン最前列!!)!


 原曲の面影もないほど、たくましく力強さを増した跳ねるリズムと力強いビートに、私だけの孤独が、私の中の音楽が好きで大切な気持ちが、力強く躍動して高揚する時間…!


「アーユーレディ!?
 アーユーレディ!!??」


 Motoさんの弾けるような呼びかけに全力で応える武道館中のお客さん!!
 大サビでは銀テープも盛大に発射されるという大きい会場ならではの演出もあり、それも凄かったですが、私の心はその演奏と歌に絡め取られて、「ああ!もう!!ずっとシェキララしていたい!!!」気持ちで、幸せでいっぱいでした…!!!


 そのまま大好きな「you n me」にその高揚感を引き継ぎ、演奏が終わると「どうもありがとうございました!」とすんなり退場…!
 本当にここまでMCらしいMCはほぼゼロ…何という潔さ!!



 アンコールを求める拍手とコールは鳴り止みません。
 しばらくして、真っ暗なスクリーンに突如映し出されたのは(私はうっすら期待していた)新たなライブツアーの告知!
 私がいたのは札幌の映画館ということもあり、北海道会場の文字が出た瞬間は流石にどよめき、拍手が起こっていました…!


 Motoさん「いくよ…!」


 静かに準備を整えると、「School」の始まりとともにステージ照明も客電も全て点灯され、開放感に満ちたアンコールの幕開け…!

 ここがいいのBaby 全ては知らないけど
 I can not be doll

School


 最後のコールアンドレスポンスを経て歌われるこのフレーズで、先ほど演奏された「doll」による閉塞感から一気に解放されたような感覚に。
 もうお人形にはなれないし、あらゆる束縛?から解放されたような自由なチリビの音楽が、まだまだ続いていくよ!と、私の肩を叩いてくれているような、愛らしさと頼もしさに胸が高鳴ります…!


 曲が終わると、この日唯一のMCタイム。



「楽しめましたか?
 楽しめましたか!?
 楽しめましたか!!??」


 何度もお客さんに問いかけながら、自身が1番楽しかったに違いないMaikaさん!笑


 今回のツアーグッズのデザインは、主にLilyさんが手がけたという話から、Motoさんが身に付けているロングTシャツのデザインの話に。


Motoさん
「これは私の落書きに、Lilyがタイトルを付けてくれたんだけど、「ALONE WITH YOU」って。
 それは一人ぼっちとあなたってことで「2人ぼっち」、大丈夫!ってことです!」


 どれだけ音楽が楽しかったことを共有したりできても、音楽を聞く瞬間は必ず一人ぼっちだし、生きている私自身の感覚も、根っこまで辿れるのは一人ぼっちの私だけ。
 そんな一人ぼっちの私に、そっと寄り添ってくれるような、隣にいてくれるようなあなたが、音楽がいてくれることが何よりもありがたくて、だから生きていける。


 そんな想いが勝手に私の頭を駆け巡る中、最後に演奏された「I like you」の優しいグルーヴに心を委ねていました。


 この1年で、私にとってチリビの音楽もそんな存在になっている確信を、静かにギュッと握りしめたところでライブは終了。


 最後には真っ暗なスクリーンに、バンド名が書かれたおもちゃ箱が、ガタガタと揺れる映像が流れたまま終演のアナウンスが。



 まだまだ飛び出したら止まらない、楽しいがたくさん待ってるに違いないという期待を、これからも大いに確信に変えてしまえるに違いない…!



 そんなチリビに期待せずにはいられなくなった夜は、あっという間に過ぎていきました。


 まだまだまだまだ!これからも末長く!
 シェキララしようぜ!!!!!


セットリスト
1.Hello bad boy
2.Welcome
3.neck
4.rose
5.My life is saikooo
6.See C Love
7.This way
8.duri-dade
9.aaa
10.lemonade
11.アンドロン
12.Tremolo
13.daylight
14.doll
15.stressed
16.Raise
17.wonderland
18.spark
19.105☻
20.Digital Persona
21.シェキララ
22.you n me

アンコール
1.School
2.I like you


 今回は以上です。



 最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。

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