ランバ・ラルは35歳

 いやあ、35歳ですよ。今の私と同じ年齢。

 そしてシャアは20歳で、ブライトは19歳。ザビ家の兄弟はほとんど20代。ビックリ。

 この年齢はよくネタにされますね。設定おかしいだろ!と。プラス10歳くらいで考えたほうがいいんじゃないかって。

 しかし先日、こんな話を聞きました。

「いや、70年代の35歳って、あんなもんだったよ」。

 70年代に30歳くらいというと、生まれは40年代。戦中から戦後、ベビーブーム世代。今ネットでは喧しく団塊世代の功罪が語られていますが、まさにその年頃です。いや、団塊というには少し上の世代かな。どうも政治・経済・言論の世界で中心になっている世代って、だいたい50歳〜60歳ですので、「団塊」と一括りにしてしまうのは乱暴のように思えます。

 それはさておき。

 考えてみれば、70年代に30歳だった人たちって、戦後の何もない時代に成長した人たち。金の卵と呼ばれて就職してみれば、毎年右肩上がりの高度成長。今日頑張れば明日はもっと良くなると信じることができた時代に生きた人たちです。

 勿論、仕事は永久就職。真面目に生きれば定年まで安定です。

 ハタチそこそこで定年までの仕事が決まり、それなりにベテランになったところで上司の紹介でお見合い結婚。20代のうちに子供が生まれて、借家暮らしから35年ローンで夢のマイホーム。あとは仕事に専念して、望みは子供の元気な成長。

 そんな感じが「普通」の世代です。

 これが今となっては普通じゃなくなって、そこに世代間の常識の差が生まれているわけですが、私が注目したのは、その当時の人々の認識、ってやつです。

  たぶん、当時は就職してしまったら、もう「若者ではない」。

 そろそろ落ち着かなきゃな、と考えるわけです。フォークの名曲にもありましたが、「就職が決まって髪を切って来たとき『もう若くないさ』と君に言い訳したね」と。

 だから、20代や30代でそうとう落ち着く、いうなれば老成していた、と思うのです。

 『エースをねらえ!』の宗方コーチは、あれで27歳!ですからね。

 家に帰ったら着物に着替えて湯呑みでお茶を飲み、しかも末期がんで余命宣告を受けている!

 ひょっとしたら、今でこそ違和感出まくりなキャラクターは、当時はさも当然として受け止められていた、もしくは作っている人々の中では標準的なキャラクターだったのでは?

 と、そう思ったところで、私は、軽ーくアニメ界の大御所がランバ・ラルの年、すなわち35歳だった時に何をしていたのか、を調べてみました。

 先に結論から言うと、軽いどころか、かなり衝撃的だったのですけれど。敬称略。

 富野由悠季。『勇者ライディーン』監督、翌年ザンボットを手がける。

 安彦良和。既にガンダム終えて、『アリオン』の漫画描いてて、『クラッシャージョウ』監督。

 大河原邦男。もうガンダムの後、ダグラムやザブングルを描いてる。

 出崎統。『あしたのジョー』も『エースをねらえ!』も『ガンバの冒険』もやり終えてて、『宝島』の監督をしている。すげぇ。

 高橋良輔。様々な作品で演出をし、翌年『新サイボーグ009』を監督。

 宮崎駿。『母を訪ねて三千里』のころ。ハイジをやったのは2年前。

 手塚治虫。虫プロ創設!もう『鉄腕アトム』の製作をしている。しかも自費で人を雇って作ってる!

 これみんな35歳。当時の35歳って、もう功成り名を遂げた、というレベルでいてもおかしくなかったんですね。ていうか、皆さんもう大傑作を手がけている……。

 ついでにその後の世代のクリエイターの方々も調べたのですが、これからの世代の人はもっと早いです。若いです。

 庵野秀明。ナウシカの原画に参加したのは23歳。28歳で『トップをねらえ!』監督。

 山賀博之。24歳で『王立宇宙軍』監督。

 板野一郎。マクロスもイデオンも20代。

 河森正治。『マクロスプラス』が35歳。『愛おぼ』を手がけたのは24歳!

 出渕裕。ニューガンダムをデザインしたのが30歳。その後はパトレイバーなどに携わる。

 ……とまあ、ほとんど20代のうちに赫々たる業績を示していっているわけですよ。

 このへんになると、もう生まれた頃からアニメが身近にあって、高校在学中から業界に飛び込んでいっているような人たちです。思い立ったがすぐ行動!という感じ。

 最近、朝の連続テレビ小説『まれ』を毎日楽しみに見ているのですが、この中で「夢のためには覚悟しなくてはならない」という言葉がありました。

 具体的に何かをしろ、というわけではなく自分で決める「覚悟」。

 

 おそらく、20代や30代で後に代表作と呼ばれるような仕事をしている人たちはそれなりに「覚悟」している。いや、ひょっとしたら、彼らはそんなことはしていないと言うかもしれない。

  しかしそう言っていても、どこかで自然にその「覚悟」を決めている。自分にはこれがある、これしかできない、これでやっていく、と。

 ハタチそこそこで永久就職を決めることも、これに似ているかもしれません。この会社に入る、ここで仕事をし続けるという「覚悟」。

 ひょっとしたら、今はそれが足りないのかもしれませんね。

 90年代に入って永久就職という「普通」が破壊され。SNSの普及によって、「今言わなくちゃ!」「今約束しないと!」ということがなくなり。

 アニメファンはレンタルビデオとネットの普及で「今これを見ないともう永遠に見れない(再放送がない限り)!」ということもなくなりました。

 まあ、決して「覚悟」したからといっていい仕事ができるとか、そんなことを言うつもりはないのですが。

 ただ、「今しなきゃ!」という覚悟が薄らぎ、ただ漫然と時間を過ごしている、そしてその結果、いつまでも幼い、というのが今の20代、30代なのかなと(ヘンにそういう覚悟を示すと「意識高い(笑)」とか言われちゃう時代ですし)。

 よくニュースに上がる、結婚しない、恋人もいらないという若者たちの、その理由として「面倒くさい、自分の時間を大事にしたい」というのが五割近くあるそうなのですが、それも常時接続のSNSのおかげで「覚悟」の意識が薄らいでるのも原因の一つかな(勿論、それによって恋愛や結婚観というのも今後変わっていくのだろうな)、とそんなことまで考えてしまったのでした。

 ま、そういう自分もまだ結婚の覚悟すらできていないのですけど(苦笑)。

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菰田将司

コメント1件

テム・レイはアムロの年齢を考えると、おそらく40歳プラスマイナス5歳。当時の富野監督から見てもやや歳上。仕事に邁進していて、アムロからもあまり父親としての存在が希薄に見られるが、1話で机の上にアムロの写真(しかも最近のものらしい)があるし、一応父親としての役割を果たしているつもりでいるようだ。それは当時、そして戦後日本の父親像にも重なると思う。
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