1904_読書メモ_サマリー

【#読書メモ】マーケティングプロフェッショナルの視点

書籍タイトル通りマーケティングに関する様々な視点が得られる素敵な1冊。

【特に気になった言葉まとめ】

【目次】
第1章 市場創造とブランドマネジメント
第2章 戦略の実践
第3章 ブランドマネジメント
第4章 マーケティングのこれからします。
【著者プロフィール】
音部 大輔
クー・マーケティング・カンパニー代表取締役。P&Gジャパン、マーケティング本部に入社。17年間の在籍中、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドマネジメントを経て、US本社セントラルチームでイノベーションに関する知識創造プロジェクトのマーケティングサイを主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などさまざまな文化背景、製品分野の企業でブランドマネジメントやマーケティング組織構築を指揮。2016年、CNET JapanのCMO Awardを資生堂ジャパンCMOとして受賞。2018年より株式会社クー・マーケティング・カンパニー代表取締役。博士(経営学 神戸大学)



【特に気になった言葉①】

●製品であれサービスであれ、複数の要素の組み合わせが市場を定義付けている。市場の定義とはすなわち「いい〇〇」の定義だ。「〇〇」には製品カテゴリーの名前が入る。

●2位が1位になるときは、最上位の属性で1位ブランドをしのぐときではない。むしろ、かつては最上位ではない属性の順位が最上位になるとき、その属性を有するブランドが1位になる。つまり、「いい〇〇」の定義が変化したとき、ブランドのシェアが大きく変わる。

「いい〇〇」の定義を考えることは、競争優位性を得る思考法として、シンプルでわかりやすいなと思った箇所。競合と生活者の状況を加味した上で「いい〇〇」を定義し、新しい製品をつくったり既存製品を再定義するための基礎になりそうな問い。


【特に気になった言葉②】

意外と意識されていないことだけれど、リピートにつながらない新規顧客(トライアル)はむしろ有害だ。トライアル後の使用体験に満足すればリピートにつながるはずである。リピートにつながらないということは不満足を産出している可能性がある。品質に問題のある製品やサービスでないならば、この不満足は期待値の設定に問題があることが多い。その製品やサービスにそぐわない期待を持ってトライアルすれば、いかに製品やサービスが設計通りの機能を発揮しても、諸費者は製品を通して提供されるブランド体験に満足しないだろう。

「消費者にどう情報を受け取ってもらい」、「どう使ってもらうか」は意識しやすいけど、この「期待値」も気にすべき重要なポイントだと思った箇所。生活状況や価値観によって期待値は変わるし、事前の情報によっても期待値は変動しますもんね。


【特に気になった言葉③】

●「消費者の感情は他者との関係の中で大きく動く」。我々が消費する消費財やサービスのほとんどは、無人島で1人で生活していたら不要なものばかりだ。自身の消費を振り返ったとき、他者やコミュニティーを意識しない消費はどれほどあるだろう。多分、ほとんどない。普段はあまり認識しないかもしれないが、家族や会社の同僚、電車で乗り合わせた街で擦れ違ったりする見知らぬ人の存在、学校や趣味のサークルといったコミュニティーに帰属していることが買い物に大きな影響を与えている。
●一部の衣食住など、個体の物理的な生命維持に不可欠な物品・サービス以外は、我々は他者やコミュニティーを前提としてモノを買い、サービスを消費する。そして、他者を必要とせず物性のみに依存するのであれば、固有の意味をまとったブランドである必要性は低い。品質保証として機能するだけである。
●人間は人間に興味がある。ひょっとすると、根本的には人間にしか興味がないのかもしれない。そしてその感情の動き方にもことさら大きな関心を持っているように思われる。これは社会的な動物であることの本当に起因するのかもしれない。

たしかに、無意識だけど自分以外の人に「どう思われたいか?」「どう思われるか?」で、製品・サービスを選択している気がする。逆を返せば、モノを販売する人は、「こんな印象を与える」を意識してコミュンケーションをするのがいいのかもしれませんね。


おわりのつぶやき

曖昧に定義していたいくつかのマーケティング用語の概念をすっきりさせてくれた1冊。



【その他に気になった言葉】

競合先は必ずしも同じ業界の同じ形態のものとは限らない。その競争関係は、ベネフィット、財布、胃袋、時間といった複数の軸で説明が可能だ。自分のブランドが提供するベネフィットがどのような競合と市場を構成していくべきか俯瞰することはブランド戦略を立案する際にも最も重要な懸案事項の1つである。
ソース・オブ・ビジネスとは潜在的な競争相手。
・市場
携帯電話=情報通信機器
カラオケボックス=レジャー次節
・提供価値
携帯電話&カラオケボックス=社交をする場、道具
新市場を創造するから競合はいない、と考えることはこのよう競争関係を見誤ってしまう。こうした潜在的な競争相手を「ソース・オブ・ビジネス」と呼ぶが、不明確なままでは効果的な競合対策を立案しにくい。反対に、もしわかっていれば効率的に相逢作を用意できるだろう。
例)いい洗剤の定義の変化が洗剤ブランドのシェアの変化に影響する
1980年代;小型で白く洗い上がる
1990年代:洗濯と同時に除菌ができる
2000年代:溶け残りがない
2010年代:「時短・節水」「鮮度」と洗濯と合わせた訴求
※2010年代に入り、「いい洗剤」ではなく「いい洗濯」が再定義された。
マーケティングとは市場創造:最も重要な役割は属性の順位を転換して「いい〇〇」を定義すること。
ブランドとは意味:ブランドは意味であり、ブランディングは意味づくり。その過程で重要なのはパーセプション、つまり認識や知覚。市場創造もブランディングも認知管理が必要。
ターゲットとは誰に奉仕するか
ブランドを明示する規定書で定める主な項目
市場:定められた確立した市場を選ぶのではなく、競合と競い合う場を新たに定義する
ターゲット:既存の愛用者より、確立した意味やベネフィットに共感してくれる消費者層を定義する
ベネフィット:技術の進化で生まれた機能ではない。消費者がブランドから得られること、その期待値を適切に設定する
意外と意識されていないことだけれど、リピートにつながらない新規顧客(トライアル)はむしろ有害だ。トライアル後の使用体験に満足すればリピートにつながるはずである。リピートにつながらないということは不満足を産出している可能性がある。品質に問題のある製品やサービスでないならば、この不満足は期待値の設定に問題があることが多い。その製品やサービスにそぐわない期待を持ってトライアルすれば、いかに製品やサービスが設計通りの機能を発揮しても、諸費者は製品を通して提供されるブランド体験に満足しないだろう。
いざ戦略を立てるとなると、さまざまな方法やプロセスが存在する印象があるが、実践的には、気にすべき要素は「目的」と「資源」に集約される。戦略とは、「目的達成のための資源利用の指針」と解釈すると、その立案、実行、改善においても理解しやすい。
強いとは資源をたくさん持っていること
資源を獲得する2つの方法:既存するものの、休眠中で活用できていない資源をみつけ、活用する方法。もう1つは既存の資源を使って新しい資源を獲得する方法だ。
「戦力か、戦略か」。圧倒的な戦力があれば、目的の達成に戦略はいらない。考えられることを全部やればいい。
あらゆる企業行動を内包できるような目的を設定すべきではない。
知識運用を概念化した「SECIモデル」
マーケティング活動には設計図が必要だ。その1枚目はブランドのあるべき姿を示す「ブランドの定義書」、2枚目はマーケティングの諸活動を示す全体設計図としての「パーセプションフロー・モデル」
定義書に書くべき8つの項目
1.大義:Vision(ブランドが実現したい世界を描写)。Mission(Visionを達成する際にブランドが担うべき使命)。Value(Missionを達成する際に尊重すべき行動様式や価値観)。Role(複数ブランドをポートフォリオで管理している場合のブランドの役割)
2.市場/競合:1つは一般的な「製品カテゴリー市場」。もう1つは「ベネフィット市場:ソース・オブ・ビジネス」。
3.ターゲット:1つは長期的な「ブランドターゲット」。もう1つは「プロモーションターゲット:特定の施策や新商品導入時に限定的に訴求する対象グループ」。
4.ベネフィット:消費者が購入するもの。
5.エクイティ:ブランドの意味。
6.パーソナリティ:ブランドの人格。
7.アイコン:失うべきではないと判断した記号や色、デザインなど、近くできる特徴。
8.機能/性能:ベネフィットを提供し、エクイティを体現するための性能など、物理的な要件や機能的な特徴
カスタマー・ジャーニー・マップが4Pのプロモーションとプレイスに注目した「行動と接点」の記述であることが多いのに対し、パーセプションフロー・モデルはプロダクトやプライスも包括したすべての4P要素による「認識の変化」を中心としている。両者の違いを大まかに例えるなら、カスタマー・ジャーニー・マップは現存する建物を計測して作った見取り図で、パーセプションフロー・モデルはこれから建てる建物の設計図である。

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