masato@小説

おはようございます masato です。おはようございます masato です。 小説…

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おはようございます masato です。おはようございます masato です。 小説・詩を書いています。純文学・大衆文学、5万文字から10万文字で書きます。現在新作を執筆中。 筋トレが趣味。

マガジン

  • とりあえず禁煙生活。

    十三年間も辞めていたタバコを吸い始め、一年と一ヶ月が過ぎた頃。また、やるか!みたいな感じで2019年5月に禁煙を再開。とりあえず三ヶ月、頑張る!

  • 仮)今日の一言。

    書きたいことを書きます。テーマは特にありません。独り言のようなものです。

  • あなただけが、なにも知らない

    連載小説です。一記事二千文字ほどで合計26ノート。 「社会不適合者?妄想家?それともマイペースなだけ?家族や愛。何も知らない。何も興味のない男性が自分の過去と向き合い、内面の変化に戸惑う、そんな物語になっています」

最近の記事

「最終話」 -本当に大切なものは,なんですか?-

前回はこちら▽ 「写真みたんだろ? 南海の」  海の向こうを眺めながら涼真は言った。 「うん。見たよ」  彼の視線の先を追ってから空と海が重なる場所に目をやった。 「その場所がここか。みんな笑顔だったな」  僕に視線を向け、言った。 「……うん」  返事をして僕は視線を落とした。足元に寄せては消える波が視界に入った。  涼真は明日の朝には帰る。彼女とのデートがあるからだそうだ。おそらく僕に気を使っているのだろう。  僕たちは暫く海を眺めていた。波が上から崩れるのを見

    • あなただけが、なにも知らない#26

      前回はこちら▽  僕は涼真と、南海の一周忌を迎えた。  あれからアパートに戻った僕は、しばらくして仕事を探し始めた。生活資金が底を付きかけていた理由の他に、自分が生きて行く動機が必要だった。  また金を借りられる。そう涼真は大袈裟に喜んでいた。  簡単な仕事だった。誰にでも出来るような簡単な仕事……。でも、僕には少しハードルが高い仕事。  職場は自宅からは遠く、電車で一時間以上かけて通勤した。なるべく離れた場所で働きたかった。人と接する事が増えたけど以前の僕とは違い、あま

      • 明日、最終回更新。

         明日、 「小説」本当に大切なものはなんですか?あなたは知っていますか。 最終回、更新いたします。  僕の数少ない(笑)読者様におかれましては、大変長らくお待たせしてしまい、ごめんなさい。 7/2の朝、7時までには更新する予定ですのでお楽しみにです。

        • あなただけが、なにも知らない#25

          前回はこちら▽  沈黙が、カーテンで仕切られたこの狭い空間を満たしている。涼真と居るのに居心地の悪さを感じる。それには理由があるのだろう。明確な理由が……。僕はそれを涼真にぶつけるべきだろう。  そう……、こうやって……! 「……それで?」  短いその言葉で、僕は話の続きを強引に訊き出そうとした。  涼真は口を噤み、目を伏せた。 「全部、知っていたんだね。涼真は……」  涼真はゆっくりと頷いた。 「それで、僕と彼女を会せたんだね。」  涼真は、また頷いた。 「僕

        「最終話」 -本当に大切なものは,なんですか?-

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        • とりあえず禁煙生活。
          0本
        • 仮)今日の一言。
          1本
        • あなただけが、なにも知らない
          27本

        記事

          あなただけが、なにも知らない#24

          前回はこちら▽  道は僕から離れてゆく。まるで空に浮かぶ雲のように遠くに……。ゆっくりと遠くに離れてゆく。  手を伸ばしても掴めない物は沢山あった。僕はいつも諦めていた。それが普通だった。欲しい物は手に入らない。いらない物だけが手元に残るんだ。僕はそれを受け入れた。いつからだろう、僕は全てを受け入れるようになっていた。それで嫌なことはなくなった。その変わりに嬉しいこともなくなった。何かを得るには何かを捨てなくてはいけないんだ。僕が悲しむことで誰かが救われている。そう思うと

          あなただけが、なにも知らない#24

          あなただけが、なにも知らない#23

          前回はこちら▽    一番手前にある右の部屋は何もなかった。  次の右の部屋には机と本の入っていない書棚があった。  一番奥の左の部屋は、入口の向かいの壁に丸い小窓があって、そこからいつもの小さな庭が一望できた。右の壁際にベッドが置かれ、布団は綺麗に整えられていた。彼女の部屋だろう。入ったことに罪悪感を覚えた。  外は陽が沈み始めたのか薄暗い。その窓の前に置いてある机。窓から入る薄日が机の上を照らしている。僕は机の下に潜っている小さな丸い椅子を引き出し、その上に静か

          あなただけが、なにも知らない#23

          あなただけが、なにも知らない#22

          前回はこちら▽  海から吹き付ける風は息を潜め、辺りは静けさの中にあった。あれほど狭かった道が幾分広く感じ、行く手を阻む草は大人しく佇んでいる。長く感じた道が、ゆっくりと収縮したような、何か嬉しい事でもあったような、そんな様子で僕を招き入れている。あの場所に行って、僕は変わったのかもしれない。そんな非現実的なことを思い、過去の彼女を思い、ログハウスまでの道を歩いた。  庭の中にある大きな樹は、闇に消えかけた空の中で、まるで自分を主張するかのように葉を震わせながら、その輪郭

          あなただけが、なにも知らない#22

          あなただけが、なにも知らない#21

          前回はこちら▽ 「この場所は私の好きな場所だわ。この場所で沢山楽しい事をしたわ。家族の思い出が沢山詰まっているわ。この波の音も、強すぎる太陽の日射しも、全部好きだわ。父さんと母さんは笑っていたわ。私は貴方と手を繋いで歩いていた。まだ歩きなれない私を貴方は優しく助けてくれた。笑いながら追いかけて来る両親を見て、私たちも笑いなら逃げたもの。流木を触っている私を見て、貴方は泣いていたわ。私にとっては……。この場所は……」  詰まる言葉に、僕は耳を傾けていた。 「私にとって大切

          あなただけが、なにも知らない#21

          あなただけが、なにも知らない#20

          前回はこちら▽  コーヒーの香りで目が覚めた。いつもなら、窓から陽が強く射し込み、当然の様に僕を起こすのに今日はなかった。外は曇っているのかもしれない、そう思った。  体をゆっくりと起こし乾いた目を擦る。ガラス戸のカーテンは開けられていたが、射し込む陽の光はやっぱり弱弱しく、何処か寂しそうだった。  キッチンへ行くと、いつも通り南海が朝食の準備をしている。彼女が毎日何時に起きているのか僕は知らない。彼女の隣に並んだ。彼女は背が低い。僕は布巾を手に取り、水で湿らせた。

          あなただけが、なにも知らない#20

          あなただけが、なにも知らない。#19

          前回はこちら▽  今、彼女は靴に泥を付けたまま食事の支度をしている。僕は食欲はなく、何も食べたくなかった。  キッチンから聞こえてくる音。食材を切る音。それらの音が、いまの僕には不快だった。  僕の靴にも泥が付いている。拭きとらなければ、そう思った。でも、出来なかった。空が見たくて顔を上げた。そこには当たり前に天井がある。僕は、どうしてここに居るのだろうか。  僕は、どうして生きているのだろうか。  今まで、幾度となく浮かび上がってきた疑問が、また僕を襲った。答えの

          あなただけが、なにも知らない。#19

          あなただけが、なにも知らない。#18

          前回はこちら▽  当然、僕は彼女の返事を聞くつもりなど、始めからなかった。 「僕たちを置いて行った親は、いつも一緒に迎えに来てくれたね。君は泣いて父さんの所へ駆け寄っていたけど、僕は泣けなかったし、駆け寄りたい気持ちにもならなかったんだ。悲しくもなかったし嬉しくもなかったんだよ。寧ろ、僕は怒っていたのかもしれない。いつも何処かへ行ってしまう母さんに対して。いつも僕たちを置いて行ってしまう大人に対して、僕は少し怒っていたのかもしれない。君はもう、その時から分かっていたのかも

          あなただけが、なにも知らない。#18

          あなただけが、なにも知らない。#17

           前回はこちら▽  僕は、中に潜む冷たいもう一人の自分に吸収される。 僕が僕でなくなってゆく。 全身が黒くなって、影になって、見上げる僕が本物の僕で、見下ろす僕は、偽善の毛布で包れた僕。  朦朧とする意識の中で、喘ぎの様な声を吐き出したかもしれない。それはまるで自分自身を喉に詰まらせたかのように。 「なぜ、君は優しい?」僕は、彼女の右肩を掴んでいた。「なぜ……」 自分でも問いかけている理由は分からなかった。  彼女は、ただ僕を見つめるだけで何も言おうとはしなかっ

          あなただけが、なにも知らない。#17

          あなただけが、なにも知らない。#16

          前回はこちら▽ 「いただきます。……怖い夢でも見たの?」  彼女はコーヒーを飲みながら、もう一度僕の顔を覗き込み言った。  僕は顔を隠すように手に持っているコーヒーへ視線を落とした。そして言う、「これドリップ?」分かっているのに聞いた。 「そうだよ。ドリップがいいでしょ。なんか、うなされていたよ」 「……ありがとう」  そう言って僕はコーヒーを一口飲んだ。  時々、記憶が抜け落ちたように何も思い出せなくなるんだ。幼少期の記憶は殆ど無いけど薄色を探すようには思い出

          あなただけが、なにも知らない。#16

          あなただけが、なにも知らない。#15

          前回はこちら▽  家の中は外から見るよりも広く感じた。毎日きちんと掃除をしているのか、絨毯には外から連れてきた泥や小石、草の切れ端が想像よりも少ししか落ちていない。それらを塵取りで拾い。元の場所、いわゆる外へ返した。その後、テーブルを拭き、窓を拭き、床を拭いた。窓から射し込む陽の光が、湿った床に届いている。  窓から外を見た。そこから見える小道は橋を架けたように窓から伸び、枯れ枝の束を運んだ倉庫まで繋がっている。その両脇は、誰かが草花で装飾した橋の欄干の様な美しさだった。

          あなただけが、なにも知らない。#15

          あなただけが、なにも知らない。#14

          前回はこちら▽  上から見た水の流れは速く。昨日の雨を背中に乗せているように見えた。 「昨日の雨、凄かったから」  彼女はそう言って笑った。 「普段は飲める?」 「分からない。でも、綺麗でしょ」 「そう? 少し濁っているよ」と言う僕の顔を見て、彼女はまた笑った。  太陽に照らされた水面は光を受け入れ、入りきれないそれらは、空への帰り道を探しているのか、僕達を照らしていた。  彼女は、森の中で優しかった。この森が好きなのだと伝わって来る。  川に掛かる小さな橋

          あなただけが、なにも知らない。#14

          あなただけが、なにも知らない。#13

          前回はこちら▽  いつもなら不快に感じる朝陽が、今朝は何も感じない。不思議だった。  キッチンの方から音が聞こえる。水が流れる音。何かが焼ける様な音。物がぶつかり合う音。不快なはずの音が、ここでは僕を包み込むようにやさしく寄り添ってくる。いい香りがした。  ……母さん。なぜそんな事を思い出したのだろう、僕には分からなかった。  しばらくして、彼女がお盆を手に持ち、リビングへやって来た。 「……おはよう」  彼女は目を合わそうとせず、朝食を低いテーブルの上に置き始め

          あなただけが、なにも知らない。#13