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夢見モグラは空を待ち侘びて 2日目

モグラはお腹の当たりでグルグル音が鳴ると、
途端に元気が出なくなり、目眩がして、終いには眠たくなってしまう。
そういう時は近くを流れる川へ出かけて水を汲み、
グイッと一気に喉を鳴らし、顔を濡らしながら渇きを潤した。
時にそこに住んでいる生物を捕まえたり、
見当たらない時のために集めておいた木の実やフルーツを食べることもあった。
それが生きていくために必要なことだということをなんとなく理解していた。
ある日、近所に住んでいた”オジジ”から”ヒ”を教えてもらった。
焼いたり、煮たり、燻したり、
それから食べるということが、
1日の生活の中で何よりの楽しみに変わっていった。


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美味しいご飯の話。


毎日眠る瞬間に思うことがある。
人類の平和なんて大それたものじゃない。
仕事の悩みや進捗というのはたまにある。
家族や友人のことというのはもうちょっとたまのたまにくらい。

おおよそ9割9分僕はベッドで眠りにつく時に、
シンプルにひとつ。
毎日のようにこう考える。


明日何食べよう。


アーティストなんて呼ばれても、人間も正味そんなもんである。

ツアー中や忙しくなったりすると外食がほとんど。
なんだかんだ一年の半分くらいを外食で済ませるとその反動もあるもので、
自宅にいる時は大体自分で作る。
好きなお店が続いて欲しいなと思って、
応援する気持ちも含めて取り寄せたりとかもしていたけれど、
ほぼ一ヶ月まるっと自炊をするような日々になると、
流石にレパートリーの限界を迎えた2020。
(主婦ってすごい。)

味覚は年齢ともに変化していくし、
どんなに美味しい食事でも、
毎日贅沢ばかりしていたら飽きてしまうかもしれないし、
身体を壊してしまうかもしれない。
一緒に食べる人次第で味も全くしない時さえある。
結局のところ美味しい、というものも、気持ち次第、
それを纏う空気も調味料の一つに違いない。

仕事を引退した父がどうやら料理に目覚めたらしく、
今年はお節を拵えたらしい。
今まで全く台所に立つことがなかった父が、と急に言われても、
僕は全く想像できていないし、まだ信じていない。
ただ、スルメと昆布と人参を煮たやつをもらったら、とても美味しかった。

幸せというものの正体を突き止めるのは、
最上級に難しいけれど、
美味しい、と幸せ、
は限りなくイコールで結んでいいような気もする。
つまり美味しいを制するものは、
幸せへの最短距離を、その近道を知っている人なのかもしれない。



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追記

前回このタイトルにまつわるイラストや写真などなどあれば、と書いた時に送り先を明記していなかったのですが、Instagramで #夢もぐ #夢見もぐらは空を待ち侘びて とつけてもらうか、僕やバンドのアカウントをタグ付けしてもらえれば大丈夫なので、そちらへお願いします。(今回は@saco_.o0さんのものを使わせていただきました。)
みなさま寒さに気をつけて、温かくしてくださいね(特に雪で大変な方々)。
それではまた明日。

褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。