見出し画像

あいちスタートアップフェス Global Sessionの報告

2023年5月19-20日に名古屋で「あいちスタートアップフェス」が実施された。

あいちスタートアップフェス2023

このフェスは、シンガポール在住でイノベーションに関わっている辻悠佑さんが発起人となり、FabCafe名古屋の矢橋友宏さん、Woven Cityの田中大祐さん、フォースターとアップスの小田健博さんらが立ち上げたものだ。

そこに、愛知の女性経営者ネットワークのハブである鈴木世津さん、Gifted Worksの松田千恵子さん、UACJの平野清一さん、デジタルファシリテーション研究所の田原真人が巻き込まれる形で2023年のあいちスタートアップフェスがキックオフした。画面にはないが、他にも多くの方が、このイベントを支えていた。

あいちスタートアップフェス2023のメンバーたち


今、愛知県ではスタートアップ支援の動きが大きくなっている。その理由は、自動車産業のEVシフトに伴い、トヨタに連なる中小企業のサプライヤーネットワークが、大幅に影響を受ける可能性が大きいからだ。

既存事業が消滅する中で、生き残りをかけて新規事業をはじめる中小企業や、社会構造の転換に可能性を見出して起業するスタートアップたちによるカオスから、新しい社会が生まれてくるのだろう。

日本は、これから、崩壊と再生のプロセスを進んでいく。そのプロセスの先端にある地域の一つが愛知県なのだ。私は、そこに可能性を感じて、愛知県で生成されている動きに注目している。

デトロイトチームが合流

デトロイトと愛知県豊田市は、1960年に「クルマのまち」という共通点で姉妹都市となった。

デトロイトは、自動車の街Motowntとして栄えた都市だ。フォードやGMの工場が設立され、ピーク時には、アメリカの自動車の1/4がデトロイトで生産された。一方、豊田市は、トヨタ発祥の地だ。

デトロイトは戦後の自動車産業の発展に伴って発展し、ピーク時には人口180万人の大都市になった。しかし、1980年代になると日本車の台頭もあって衰退し始め、2008年のリーマンショックによりGMが経営破綻するころには、人口が70万人まで減少し、ゴーストタウン化した。2013年にデトロイト市は破産申告した。しかし、そこから10年の間で、デトロイトは見事に復活を遂げた。今回、来日したのは、デトロイトの女性リーダーであり、都市プランナーのシャロン・マディソンと、その夫であり、コミュニティバンクを通してスタートアップ支援をしてきたマイケル・スタインバーグ。そして、1万5千人の女性起業家のネットワークFEMOLOGYの代表であるミーガン・ワードの3名だ。自動車の街の崩壊と再生のプロセスの中心を担った3名が、愛知県と繋がった意味はとても大きい。

愛知県の女性起業家ネットワークの活性化

2018年にWeconnect International Japanが設立された。初代のディレクターになったのが、愛知県の女性起業家である鈴木世津だ。

今、欧米を中心として、社会的公正を実現するためのエンパワーメントの動きが広がっており、ESG投資が、その動きを後押ししている。サプライヤー・ダイバーシティとは、大企業に連なるサプライヤーをチェックし、そこにダイバーシティが実現していることをESG投資の基準に加えるという動きから広まっている。Weconnect Internationalは、WOB(Woman Owned Business)を認証する国際機関であり、大企業とWOBとのマッチングイベントなどをやっている。アメリカでは、州によって異なるが、サプライヤーにおけるWOBの最低比率が法律によって定められている。それを下回るとペナルティが課されるため、大企業は真剣に取り組まざるをえない環境になっている。日本企業の動きは遅いが、グローバル企業は、社内でダイバーシティ・アンド・インクルージョンに取り組む部署を置いており、数値目標を設定してWOBからの購入に取り組んでいる。

私(田原)は、鈴木世津さんがWeconnect International Japanを立ち上げたときに戦略担当になった。その後、鈴木世津さんが2022年にディレクターを退任して一般社団法人SD&I研究所を立ち上げると理事に就任し、2018年からの5年間、女性経営者ネットワークの活性化に伴走している。

2022年12月、SD&I研究所は、在名古屋米国領事館の支援を受けて、全国の女性経営者の実態調査を行い、翌年の3月に調査結果を発表するイベントを実施した。そこには、愛知県からだけでなく、関西や関東からも女性経営者、大企業の調達担当者が集まってきた。鈴木世津さんが渦の中心となり、女性経営者ネットワークが活性化している。

デトロイト名古屋ウーマンネットワーク

アメリカ政府からの依頼を受け、ミーガン・ワードは、世界の各都市を回り、デトロイトで起こった崩壊と再生の物語を語る活動を始めている。その活動の一環として、ミーガンが名古屋を訪れたときに、ミーガンと愛知県の女性経営者ネットワークとが出会い、デトロイト名古屋ウーマンネットワークというプロジェクトが立ち上がった。その中心にいたのが、ミーガン・ワード、鈴木世津、北奈央子の3人だ。2023年4月に鈴木世津さんがデトロイトを訪問し、2つの都市をつなげたコラボレーションの動きが一気に加速してきた。

シンガポールからChiewさんが合流

シンガポールのEdTech企業であるClassDo社のCEOであるChung Chiew Farnは、マレーシア出身で、中学生のときに奨学金をもらってシンガポールの学校へ留学した。数学とプログラミングに才能を発揮した彼は、飛び級でカナダの大学へ進学し、20歳で、数学とコンピューターサイエンスの2つの学位を取得した。その後、日本の産学連携プロジェクトに加わり、トヨタなどの工場で使われている生産管理のアルゴリズムを大幅に改善し、日本政府から永住権を付与された。日本でClassDoというEdTech企業を立ち上げたが、制度的な制約により、本社をシンガポールに移し、現在は、シンガポールの文科省と連携して、教育改革の最前線で活動している。

Chiewさんとは、2013年に反転授業の文脈で出会ったが、私が日本に帰国したタイミングで再会し、ICTツール開発を行っているClassDoと、それらを活用した教育メソッドを開発するデジタルファシリテーションとの協働を始めている。

創造性を重視する学びに一気に舵を切ったシンガポール流の教育と、女性経営者コミュニティにおけるアントレプレナーシップ教育とのあいだに親和性があるのではないかということで、コラボレーションの可能性を模索している。同時に、アジアのHubとしての存在感を高めたいシンガポールとの連携の可能性を模索している。

Global Sessionが始まる

デトロイト、シンガポール、名古屋を中心とした日本のメンバーが合流し、2023年5月19日の10:30から、セッションがスタートした。

まず初めに、私が、なぜ2023年に、このような合流が起こっているのかの文脈を、ホワイトボードに図を描きながら説明し、登壇者が話すための文脈を置いた。

田原が文脈を作る

それを受けて、ミーガンさんが、リーマンショックをきっかけに始まった彼女の体験を話してくれた。

ミーガンさんの話

さらに、シャロンさんが1970年から激動の時代を乗り越えてきたブラック・アメリカンの体験をシェアしてくれた。

シャロンさんの話

さらに、それに加える形でマイケルさんの話が続いた。

マイケルさんの話

続いて、Chiewさんが、インダストリー4.0における教育構造について話した。

Chiewさんの話

最後に、全体をまとめる形で、この会の起点である鈴木世津さんが話した。

鈴木世津さんの話

まずは、当日の熱気を写真で報告した。話された内容については、改めてまとめたいと思う。

この日の午後は、3つのテーマに分かれたディスカッションが行われ、翌日の20日は、未来の教育についての取り組みが行われた。

未来を模索する動きが活性化することで、私たちが望む未来が出現していくのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?