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シェア型書店TAKIBI@谷中に行ってきました

千駄木で降りて、Google mapを見ながら、蛇道と言われるくねくねとした道を歩いていった。住宅地のように見えるが、そこに、こだわりの店主がやっていそうなカフェやレストランが、かなりの頻度で出現する。谷中って、よく知らなかったけど、面白い街なんだな。

その街並みの中に、今、注目されているシェア型書店TAKIBIがある。新しいものを探している感度の高い人が、集まってきそうな気配を感じる。

書棚は、松竹梅に分かれていて、それぞれ棚の大きさが違う。一番大きな松の棚全体にLGBT関連の本が並んでいるのを見つけた。どんな人がオーナーなのかな?と思ったら、QRコードで店主のHPに飛べるようになっている。

オーナーの色が濃く出ている棚が並ぶ

本棚をメディアにして、店主と客とが繋がれるようになっている。

TAKIBIの店主の安藤哲也さんは、千駄木の往来堂書店をプロデュースし、初代店長を務めた書店界の有名人である。その後、ファザーリングジャパンを立ち上げ、しばらく書店界から遠ざかっていたが、今の出版界の状況を踏まえて、新しい形の提案として始めているのがシェア型書店TAKIBIだとのこと。

本の数が多いわけではないのに、新刊書店とは違った、本との出会いの予感がある。

最近、炭鉱と鉄道のことを調べていて、旅行中に『むかし原発 いま炭鉱』という本を読んだ。1900年~1960年頃、日本全国に炭鉱があり、炭鉱に関わった人たちが大量にいたことを知った。その中で紹介されていた『炭鉱美人』という本が、強く印象に残っていた。

先日、読み終えたばかりの本

TAKIBIの棚を眺めていると、なんと、そこには、『炭鉱美人』が置いてあった。「店主はどんな人なんですか?」と尋ねると、安藤さんが、「これは、僕の棚ですよ。炭鉱の本は、売れるんですよ。」と教えてくれた。

今、新しく炭鉱の本は出版されないだろう。しかし、多くの人の心の中に、大切な記憶として炭鉱は刻まれていて、そういう人たちが、炭鉱の本を買うのかもしれないと思った。

TAKIBIで購入した本

こういうかたちで本と出合うのは、エキサイティングだ。本と自分との間に、特別な物語が生まれる。そして、本を読んだら、感想を話したくなる。

本をきっかけに、こうやって会話が始まるのだろう。焚火を囲んでおしゃべりするような時間が、これからTAKIBIで繰り広げられるのだろう。文化とは、このような場所から生まれてくるのだろう。

本の魅力、書店の魅力を知り尽くした安藤さんが仕掛けるTAKIBIは、人間と本の幸せな関係を思い出させてくれる。

参加型出版という、新しい出版と流通の在り方を考えている私としては、目が離せない場所だ。

安藤さんとツーショット

TAKIBIのHPはこちら

サイドストーリー

かつて、UPUという会社があった。大学新聞社が求人広告を企業から取り始めたところからスタートした。東大新聞社からリクルートが生まれ、京大など関西の大学新聞社からUPUが生まれた。

この日、UPU関係者が集結した。最年少役員の広本さん、11年務めた平田好さん、UPUに客人として出入りしていた橘川さん、元UPUの太田順子さんが社長を務めるメタ・ブレーン社から小説『ジミー』を出版した青海エイミーさん、僕の『出現する参加型社会』もメタ・ブレーンからの出版だ。

そして、店主の安藤さんも、元UPU。

何十年ぶりかの再会シーン。入れ替わりで名前は知っていたけど会うのは初めてという対面。店内には、特別な時間が流れた。この場所の持つ磁力が、このような出会いや再会を可能にするのだろう。

「アジト」のような場所に、感度の高い人が集結し、密度の濃い会話から新しいものが生まれ、次の時代を担う人が育ってくる。UPUも、きっとそのような場所だったのだろう。

そして、その場所を体験し、その価値を知っている人が、新たな「アジト」を作り出す。TAKIBIには、そのような匂いを感じた。

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