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愛しの丸元淑生先生(2)「生命の鎖」では不十分なわけ(分子栄養学批判)

丸元淑生先生は多彩な著作をおかきになっている。彼の活動自身が非常に強く時代に影響されている(あらゆる思想家は時代の背景抜きには考えられない)。

丸元淑生先生は何をしたのか?

今日のお話は、丸元淑生先生のあまり高く評価しない部分である。現代の栄養学は1960年代の「マクガバン報告」に始まると僕は考えている。アメリカの上院議員が税金を「健康と言うパブリックな価値」に投入することを宣言したのだ。予防医学という概念もこの時代に生まれた。

丸元淑生先生はまっさきにこの流れを読んだのである。

「分子矯正栄養学」と言う最新の医学

「分子矯正栄養学」とは、細胞の働きに注目して、分子のレベルでの機序を重視した栄養学である。ライナス・ポーリング博士が1960年代に主張した考え方である。

丸元淑生先生はかなり早くから日本に紹介した一人である。僕も熱狂的に読んだ。必須栄養素が食事の中からなくなったのが問題だという。

ジーンガーバーなどの紹介が典型的で、47種類の必須栄養素の不足が様々な健康上の問題を引き起こすと論じている。このロジックは姿かたちを変えて今に引き継がれている。必須栄養素の数も数しれなく多くなり、トクホと言う形で健康業界に富をもたらせたのである。

肥満という検査値の異常が脳溢血や心疾患の原因だから痩せなさい。ととにかくカロリーを減らせ。その代わり幾つかの栄養素を十分取っていれば大丈夫だと言う考え方である。実はこの考え方は今につながる。「糖質制限は医師の指導のもとでやれ」と言う考え方である。実は当初糖尿病学会は糖質制限を目の敵にしていた。やがて、糖質制限がジム系のメソッドで効果を出し始めると、糖尿病専門医は方向を変える。しかし、今の所、カロリー編獣からは抜け出していない。結局、糖質制限派との手打ちがあり、元祖糖質制限のバーンスタイン博士と会ってきたと大喜びで彼のここをを踏みにじるような言説のオンパレードである。僕はコイツラが大嫌い。

丸元淑生のエピゴーネンは沢山いる。時に丸ごと彼のほんの一部を朗読するような輩もいる。しかし、それは当たり前なのだ。丸元淑生もアメリカの教科書の丸写しであるのだから。その点は非常に残念である。しかし、読者が望むから本は出版される。仕方がないことなのである。太陽のもとに新しいことはないのだ。

医学が人を本当に救うと信じられていた時代だ。

この後、予防医学というイカサマの正体がわかられてくる。

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「生命の鎖」のすごい所

この著作の中で、丸元淑生先生は、「食のグローバリズム」を論じているのだ。これはすごいことであった。僕が当時読んでいた本の中では書かれていたものがない。衝撃的であった。

どうも、「生命の鎖」以降、「伝統的な家庭料理」の紹介に重点を置きだしてきているように見える。

そう考え、著作を読み返すと「(当時にしては)最新の分子栄養学」の紹介の中にも具体的な調理の事が書かれていたりしていることに気がつくだろう。

この系統の映画の「フード・インク」が2008年の公開なので、ずいぶん早い。

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丸元淑生先生の著作は多岐にわたる

キッチンの設計に関するものから、調理器具の紹介、いかに一人暮らしの食事を構成するかまで幅広い。一部の著作においては、社会の変化で家族のカタチが変わったのだから上手く工夫するべきであるとも論じられている。

今の僕のベースに有る考え方である。

時に思うのは、丸元淑生先生は毎日の食事を作っていたのだろうか?ということである。残念ながら、その点に関しては明確な記述がない。これは、「料理研究家」と呼ばれる人たちに通じる疑問である。僕自身実践家として生きていこうと考えているので、極めて興味が深い。

医者や栄養士は抽象的なことしか言わない。料理研究家は具体的であるが技術の紹介でしかない。これは、「丸元エピゴーネン」についても言えることなのである。

先生は、2008年3月6日、食道がんで亡くなっている。74歳であった。

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こちらの記事の続きです。

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厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。