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能から死を想う/個性は伸ばすものではなく削るもの

占部まりさんによるアートで死を想う取り組みの「能から死を想う」に参加。

占部さんとは以前ワークショップをご一緒したことがあって、その際に「死を想う」ことの可能性に触れた。
どんな死に方をしたいか?どこで死にたいか?誰に看取ってもらいたいか?
理想とする死に方が見えてくると、そこまでどう過ごせばいいかも見えてくる。

英治出版オンライン「死を想う」
https://eijionline.com/m/md49038390c4f

能から死を想う

今回は伝統芸能である能の鑑賞を通して死を想う場。
能を鑑賞したことがなく、再度「死を想う」機会がほしかったので参加した。

650年続く伝統芸能である能。天地災害や死の恐れを克服されるために行われていたものを世阿弥が文化芸術に高めたものと言われます。生と死の境の幽玄な世界を表現しながら、自分の心と向きあう時間を提供してくれる。そんな能を宝生流能楽師の田崎甫さんに解説いただき、実際に舞っていただきます。

台風が過ぎ去ったばかりのタイミングで、天地災害の恐れを克服させるために行われていた能を鑑賞するというタイミングの良さ。

実演/田崎甫さんと葛野りささん

実演は能楽師の家の子である「田崎甫」さんと、田崎さんと大学の同期である「葛野りさ」さん。
「能という複雑な表現を通して、文化に興味を持ってほしい。世界の文化を知るきっかけに。」と考えて活動しているそうな。
演目は3つで、すべて仕舞形式で。

演目/杜若(かきつばた)、兼平(かねひら)、融(とおる)

杜若(かきつばた)

兼平(かねひら)

動きが激しく、三世の契り(主従の縁)について考えることができる。
※兼平はYoutubeで動画が出てこなかった

融(とおる)

写実的な型が楽しめる、中秋の名月にちなんで

場所/光明寺(神谷町)

神谷町の光明寺
本堂をイベント事に開放していて、本堂前のテラス席にはテーブルやイスがあって、平日はお昼にお弁当を食べる人が集まっているんだとか。
http://www.komyo.net/web/kamiyacho.html

以下は田崎さんが話していたことのメモ。

仕舞(しまい)という形式について

・能の真髄を表す形式
・能面や装束を使わない
・役がわからない
・そのため型や所作があらわになる
・過度な表現をしない
・削る方向を目指す(表現もしない)

能について

・唄を聞き取ることもできない
・前提として理解しづらい
・実社会から離れている
・昔は教養があることが前提だった
・現代のアニメのようなもので、原点(原作)があって能独自のアレンジが加えられつくられている
・抽象的な表現
・お客のための表現ではなく、神事のため奉納のための表現
・発声はオペラと近く、背中から声を出す(能面をする前提で)
・演目の8〜9割がこの世のものではない存在(亡霊や精霊など)が出てくる
・舞台上で演者が亡くなっても、舞台は続く、神事なので止められない(浄瑠璃でも近い話を聞いたことあったっけ)
・演者はシャーマン、動きは他の人に止めてもらう必要がある、装束は他の人に脱がせてもらう必要がある、儀式でもある
・武家の式楽(儀式用に用いられる芸能)として扱われていた(演目に救いのテーマが多いためか)
・能面や装束といった芸術作品をまとうところから「動く美術館」とも言われる
・現代だと癒やしの効果があると言われている
・演劇との違い、空間の遮断はしない、奉納なので閉じない
・演目は終わらない(セリフに終わりを示す句点はない。言葉は終わらず続く。拍手で無理に終わらせなくてもいい。)

能の覚え方

・型は身体で覚える、解説は基本なし
・稽古風景も見せない、リハーサルはしない、ぶっつけ本番

能と個性

・個性は伸ばすものではなく、削るもの
・型で個性を否定するところから入る
・型を繰り返し削った先に個性がある
・能は天才を必要としていない

能と長生き

・能のお弟子さんには長生きな人が多い
・心理的な探求や声のゆらぎから来るものか
・すり足や大きな声を出すのも身体にいいらしい

考えたこと

「個性は伸ばすものではなく削るもの」という言葉にグッときたのでタイトルに入れた。
埋もれている「個性を引き出す」ことをよく考えるけど、不要なものを削るという発想はなかった。
型の哲学から学ぶという考えが守破離の守には含まれていると思うけど、
型により個性が削られることで原石が磨かれていくのかもしれない。
個性にもKonMariが必要か。

仕舞の哲学に魅力を感じたので、また能を鑑賞したいな。

能から死を想う

自分らしさを持ったまま死ぬためにも、生きている内にどれだけ個性を削れるかって、ひとつのポイントになりそうな気がする。
そのために必要な型(哲学)にはどんなものがあるんだろうか。

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