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ロフトポスター批判騒動に思うイラストレーターのポジション

ロフトのポスターに批判があり、取り下げたという話がある。「使用されたイラストレーションが女性蔑視に当たり不快だ」という批判らしい。
イラストレーション作者の竹井千佳さんのことをアーティスト扱いで批判する声があるようだが、「アート」と「イラストレーション」は明確に違う。アートは作品そのものにメッセージ性や作者の思いが込められており、発信すること自体に意味があり、作者は表現に対して批判されることも覚悟しておいた方がいいという性質のものだ。
イラストレーションの場合は企画を司るクリエイティブディレクター、制作責任者のアートディレクターがいて、デザイナーと相談の上でイラストレーターを起用し、企画の方向性を伝える。つまり竹井千佳さんは仕事をしただけ。脚本通り演じただけだ。もちろん元々の作家的性質を買われての起用であり、アイデアも出しているかもしれない。とはいえ、批判する場合にもそれなりの知識や礼儀が必要だろう。少なくともTwitter上で匿名で竹井千佳さんのコメントに上から説教臭いコメントを書いていくという神経がわからないし、奇妙な不気味さを感じる。一体どういうポジションからぶつけているのだろう。
現在では宣伝広告に主義主張を込める自由があり、制作者は顧客の賛同を得られない場合は経済的リスクを負う。それで十分ではないのか。少なくとも今回の件はそのレベルの話だろうとぼくは思う。公共予算で作られた広告とは話が違う。一部か何割かはわからないが、不快だと言われたら取り下げなければならない世の中は怖い。
日本のイラストレーション・デザインの先駆者、故・山城隆一氏は「デザインに悲しみは盛れないか」と言った。ぼくはイラストレーションに時には「悲しみ」も「毒」も盛っていきたいと思っている。昨今では、それを作り続けるためにはそれなりに覚悟が必要なようだ。剣道の稽古で心を磨いておこう。

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