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【日経クロストレンド連載企画/全文公開】第4回/配車だけじゃない 多角化ウーバー5つのビジネスモデル図解

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こんにちは!阿蘓です。
現在、次世代のモビリティサービスについて日経クロストレンドさんと連載企画を行っていますが、その連載記事をnoteで全文公開します!日経クロストレンドに登録している方は、もう見てくださった方もいるかもしれませんが、より多くの人に見てもらうために、自身のブログとして使っているnoteでも公開していきたいと思っています!
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配車だけじゃない 多角化ウーバー5つのビジネスモデル図解

2019年5月10日、米ニューヨーク証券取引所に上場したウーバーテクノロジーズ。同社は配車サービスのイメージが強いが、料理宅配の「Uber Eats(ウーバー・イーツ)」をはじめとした多角的なモビリティサービスを展開している。そのビジネスポートフォリオを図解する。

米ウーバーテクノロジーズは、元CEOのトラビス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏が2009年3月に設立して以来、タクシーに代わる新しい移動手段として「配車サービス」の市場を確立しました。18年には世界で100億回以上の乗車実績を達成し、世界規模の配車サービスに進化を遂げています。

ここ数年、ドライバーの暴行事件、自動運転車での交通事故、CEOの退任など、強い向かい風を受けてきたウーバーですが、IPOのニュースに加え、自動運転開発部門を分離して新設する会社にはトヨタ自動車とソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)、デンソーが新たに約1100億円出資することが発表されました。株価自体は公開価格の45ドルを下回り、苦戦していますが、将来に向けては明るい話題が多いようにも思えます。

世界を見渡すと、米リフト(Lyft)、中国ディディチューシン(滴滴出行)、シンガポールのグラブ(Grab)など、配車サービスのライバルたちが各国に存在しています。それらとウーバーは何が違い、どんな未来を見ているのか。そのビジネスモデルをひもときましょう。

いきなり本文総まとめ

NOW~Uberは今~
●新しい「供給元」を生み出す最強のプラットフォーム

FUTURE~Uberは将来~
●「無人化」された移動サービスへ

ウーバーの“最強”ポートフォリオ

ウーバーと言われて一般的に思い浮かぶのは、ドライバーと乗客をマッチングさせて目的地までユーザーを運ぶ配車アプリでしょう。しかし、ウーバーはそれ以外にも多くのモビリティサービスを展開しています。まずは、そのポートフォリオを図解で見ていきましょう。

【Uber Eats(ウーバー・イーツ)】

ウーバー・イーツ【図解1】は、ここ数年で日本でも定着し始めたサービスなので、多くの方は聞きなじみがあるかもしれません。スマホのアプリで近くの飲食店の料理を注文すると、自転車に乗った配達員が自宅などに届けてくれます。東京周辺では、シェアリング自転車などに乗った配達員が颯爽(さっそう)と走っていく姿をよく見かけます。

ウーバー・イーツの配達員は、専用アプリで登録を済ませて簡単なサービス説明を受ければ、ほぼ誰でもなれます。やることは非常に簡単で、アプリを通してユーザーからの配達依頼が来るので、その指示をもとに店舗にピックアップに向かい、依頼者へ商品を届けるだけ。「依頼者が商品代と配達費を負担し、ウーバーの手数料を除いて、それぞれを店舗と配達員に支払う」というビジネスモデルで、非常にシンプルです。

ピザやすしなどの配達サービスは昔からありますが、ウーバー・イーツの特徴は注文に応じて空いている配達員をマッチングさせるところにあります。そのため、ウーバーは自社でアルバイトを雇ったり(配達員は業務委託)、自転車やバイクを購入したりする必要がなく、利益率の高いサービスが可能になります。

【Uber Freight(ウーバー・フレイト)】

ウーバー・フレイト【図解2】は、トラックのドライバーと物を運送したい事業者をマッチングさせるサービスです(参考動画はこちら)。昨今、日本ではトラックドライバーの労働環境が悪いと問題になっていますが、米国でも同じ。トラックドライバーは、物流ハブや積み荷場所で数時間待たされたり、残業手当などが適用されなかったりと、過酷な労働環境を強いられています。

ウーバーによると、米国のトラックドライバーの走行距離は、米国におけるすべてのクルマの年間走行距離の約10%を占め、毎年140億トンもの貨物を運送しています。米国経済にとって、トラック運送はなくてはならない事業の1つです。

このような背景がある中で、ウーバー・フレイトは、同社の配車アプリのように、トラックドライバーと運送を依頼したい事業者をアプリ上で効率的にマッチングさせています。積み荷場所、時間の予約はもちろん、運送費、運送場所なども予約した段階で確定でき、トラックドライバーと事業者双方にとって効率的な貨物運送が可能になります。

ウーバー・フレイトには、貨物運送を依頼したい事業者が多く登録されており、トラックドライバーはその中から自分に合った仕事を選択できます。アプリ内では、短距離(100マイル以下)、中距離(100~300マイル)、長距離(300マイル以上)の選択肢があり、運送距離で仕事を選ぶことも可能です。マッチングが成立したら、ドライバーは積み荷地点まで荷物を取りに行き、指定の配送地点までトラックで運送します。

その他の利点としては、「確実な支払い」があります。通常、運送業者は、運送が終わってから30日以上待って代金の支払いを受ける場合がほとんどです。しかし、ウーバー・フレイトでは、積み荷から数日以内の支払いを約束しており、積み荷が予定通りに進まない場合や予想以上に待たされた場合でも追加の支払いを行います。

ウーバー・フレイトは、運送を依頼したい事業者とトラックドライバーをマッチングし、運送業の無駄を省くサービスと言えるでしょう。

【Uber Health(ウーバー・ヘルス)】

ウーバー・ヘルス【図解3】は、定期的に病院に通う患者に対し、病院側が送迎車両を手配できるサービスです。

定期的に病院に通っている患者の多くはスマホ慣れしていない高齢者です。タクシーを呼ぶにせよ、公共交通機関を利用するにせよ、病院に行くまでひと苦労する場合が多々あります。

ウーバー・ヘルスでは、そうした移動に不便を感じている患者に対して、病院側が診察の予約時間に合わせて車両を配車&管理するので、患者の利便性を高められます。交通手段を病院に任せられるため、患者の通院のストレスを軽減できるということです。

ビジネスモデルは、ウーバーが一般的に提供している配車サービスとほとんど変わりません。しかし、唯一違うのは、「病院側が予約、管理、支払いを行う」ところです。乗車したユーザー(患者)が送迎料を支払うのが普通と思われますが、この場合は病院がすべてを行います。病院までの交通手段に困っていた患者にとっては、願ってもないサービスですよね。

このビジネスモデルが成立するのか疑問かもしれませんが、ウーバーの狙いは「病院の付加価値サービス提供」にあるのではないでしょうか。送り迎えまでしてくれる病院であれば安心して通院できますから、ロイヤルティーは高まります。病院がウーバーの料金を負担するスキームでも、メリットがあるということです。

ウーバー・ヘルスのシステム自体は、配車サービスを応用したものですが、市場のニーズに合わせ、巧みな形でサービスを提供する良い事例であると感じます。

【自動運転ビジネス】

そして、ウーバーは将来の自動運転開発にも力を入れています【図解4】。一般人を乗車させて自動運転車で通常の配車サービスを提供する試験を行ったり、実際のサービスに利用することを念頭に数千億円単位で自動運転技術に投資をしています。

ウーバーが自動運転の開発に力を入れている理由は、将来的に「無人配車サービス」を作り上げるためなのは間違いありません。では、それによりどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

【Point1 均一な移動サービスを大規模に提供できる】

当たり前ですが、従来のタクシー事業では事業者がドライバーを雇い、乗客に移動というサービスを提供しています。ドライバーは会社の“顔”であり、その質によりサービスの良しあしが決まるといっても過言ではありません。ドライバーの育成や評価は必要不可欠です。事業拡大のためにドライバーを急激に増やすことはサービスの質の低下につながる可能性をはらみ、難しいのが現状です。そもそも、ドライバーの担い手も少なくなっています。

その点、無人配車サービスが可能になれば、同じシステムを無限にコピーできるので、大規模かつ均一な事業展開が可能になります。ウーバーが自社で無人配車サービスを手掛けるかどうかは分かりませんが、改善を重ねた無人配車システムを外販していくことも考えられます。

【Point2 ドライバーのクレーム対応が不必要に】

ウーバーの配車サービスでは、ドライバーを直接雇っているわけではないので、既存のタクシー事業者と比べて人件費を削減できます。これは、一見メリットだけのように思えますが、タクシー事業と同じくドライバーの質をコントロールすることは非常に重要です。一部の配車サービスでは、泥酔した乗客を狙った性犯罪や、殺人事件なども報告されており、下手をすると事業廃止に追い込まれるリスクを内包しています。ここでも、無人配車サービスが可能になれば、ドライバーと乗客間のトラブルが減り、提供できる移動サービスの質は一段と上がるでしょう。

本当に完全自動運転車が技術的に実現可能かどうかは、まだ賛否が分かれるところかもしれません。ですが、ウーバーが目指す未来はより高品質な移動サービス提供であることに変わりはありません。

ウーバーは「移動の無人化」へ

以上のように、ウーバーはさまざまな需要に対し、配達員、送迎車、トラックドライバーをマッチングすることによって、従来のモビリティサービスの在り方を大きく変えてきました。そんなウーバーのすごさは、需要と供給のバランスを図解すれば明らかになります。

例えば、「目的地まで移動したい」という需要があった場合。自らが「供給元」となって移動サービスを提供するのが従来のタクシー事業です。しかし、自らクルマを購入し、ドライバーを雇用するため、需要や社会システムそのものの変動に弱く、スピード感のある事業拡大は不可能でした。

一方のウーバーは、上図のように「新しい供給元を市場から生み出すシステム」を作ることでビジネスを成立させています。つまり、需要と供給のバランスを取るプラットフォームそのものです。「目的地まで移動したい」「ご飯を今すぐ届けてほしい」「荷物を確実に届けたい」といった需要に対して、自らが供給元になるのではなく、すでにあるインフラやサービスを使って市場の「中」から新しい供給元を生み出しています。その供給元を効率よく需要にマッチングさせることにより、従来の市場に変革を起こしてきたのです。

ウーバーのように自らが市場全体の“てんびん”となり、需要と供給のバランスを取るサービスは、需要や社会システムそのものの変動に柔軟に対応できます。この「自らが供給しない」ビジネスモデルが、たった10年でウーバーをここまで成長させた最大の理由ではないでしょうか。

しかし、今後はそれだけではとどまらないでしょう。ウーバーは今、電動自転車や電動スクーターのシェアリングサービス「JUMP Bikes(ジャンプ・バイクス)」、垂直離着陸可能な電動飛行機を使った移動サービス「Uber Air(ウーバー・エア)」にも力を入れています。

これらは、従来のウーバーの「自らが供給しない」ビジネスモデルとは違い、供給元を自ら作り出すタイプの移動サービスです【図解5】。これらの新しいサービスに共通しているのが「移動の無人化」。自動運転配車サービスはもちろんウーバー・エアも自律飛行を前提にしています。電動自転車・スクーターのシェアリングサービスも、必要なインフラが整えば、利用、返却、充電がユーザーの手で行われ、いわば「無人サービス」と化します。

このことから、ウーバーは、市場から供給元を生み出すプラットフォームビジネスから、無人サービスのプラットフォームビジネスへと進化しようとしているのが分かるのではないでしょうか。IPO後、ウーバーのさらなる飛躍に期待したいところです。

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