見出し画像

新・モビリティビジネス論[隊列走行トラックは物流の起爆剤]

#自動運転 #電気自動車 #人工知能 #コネクティッド #IoT
様々な技術的ブレイクスルーが起きモビリティにビジネスモデルの変革が起きつつあります。そこで、新・モビリティビジネス論は、新しいモビリティビジネスを図解し考察するマガジンです。
新・モビリティビジネス論 [一覧]
#ビジネスモデル図解 #ビジネスモデル #新モビリティビジネス図解

[ブログ内での情報の取り扱いについて]

隊列走行トラック

隊列走行とは、数台のトラックお互い通信しながらが隊列車群を構成し一定間隔を保ち走行することで、風の抵抗を減らし燃費効率を上げる次世代技術です。さらには、後続トラックを無人化することで、物流の生産力を大幅に向上させる可能性を秘めています。この技術は、物流業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。

有人での隊列走行トラック

隊列走行には、二つのステップがあります。まずは、ハードルの高くない有人での隊列走行技術です。有人でもメリットは数多くあります。

● 燃料消費効率の向上とそれによる運用コスト削減

想像すれば分かるかと思いますが、トラックは、普通の乗用車に比べて風の抵抗を受けやすく、高速道路を80キロで走行するだけでもかなりの燃料を使います。隊列を成して走行することはその風の抵抗を減らし燃費の向上につながります。日本自動車研究所によると、10メートルから4メートル間の隊列走行により、8%から最大で20%弱の燃費効率の向上につながると言われています。
例えば、3台のトラックが大阪―東京間500キロの道のりを走ると大型トラックの燃費は良くて4km/hなので、燃料費だけで56,000円掛かります。もし、隊列走行で後続車2台を15%燃費向上させれば、5,600円分おつりが戻ってきます。毎日、100台、1000台レベルで運用させている物流業者にとっては馬鹿にならない数字ですね。

● ドライバーの負担軽減

次に、隊列走行機能は後続車のドライバーの負担も軽減します。システムが自動的に車間距離を保ち走行してくれるのであれば、運転中、常に気を張る必要はなく、安全で安心した運用が可能になります。ドライバーの居眠り運転が原因の死亡事故は毎年多数起きているので、物流業者にとっては、そのリスクを減らせるのは嬉しいことですね。

無人隊列走行トラック

隊列走行技術の先には、後続車にドライバーが乗らない「無人隊列走行技術」があります。後続車が無人になれば、さらなる付加価値を生むことができます。

● ドライバー一人当たりの生産性アップ

後続車を無人にすることができれば、それはもう牽引車と同じになります。物理的には、ドライバー一人で何台でも後続トラックを牽引でき、一人当たりの生産効率は飛躍的に向上します。単純に、2台で2倍、5台で5台、ですからね。トラックドライバーにとっては相対的に仕事が減るかもしれませんが、物流業者にとっては、人件費も最適化することができます。そう考えると、無人隊列走行技術は、運用時の人件費、燃料費を同時に削減できる夢の技術ですね!

● トラックメーカーは顧客に付加価値を提供し、販売拡大が可能

このように、隊列走行技術は、物流業者に多くの付加価値を提供できる期待の技術の一つです。トラックメーカーは、この技術をいち早く開発し、トラックに搭載することによって、独占的にビジネスを進めることができ、安定的で大規模な販売が可能になるかもしれません。なぜなら、物流事業者にとっては、機能を搭載すればするほど利用できる場面は増え、結果的に収益増になるからです。
今流行りのMaaS(Mobility as a Service)とはなりませんが、販売台数の拡大を目論める大きなチャンスになりうる技術であることは間違いありません。

現実化条件

では、これを実現するためには何が必要になるでしょうか。

まず、技術についてですが、大きく分けて通信技術、車両制御技術の二つ分かれます。通信によって車両を牽引するため、通信技術の信頼性は非常に重要で、後続車が無人になれば、2重系以上である事が求められます。また、車間距離センサーや白線認識技術等による、先進安全技術も必要不可欠な要素になります。ですが、いずれにしても、最初のステップは牽引車にはドライバーがいる前提なので、技術的ハードルは、無人配車サービス等に比べると低くなると考えられます。
ビジネスモデルや社会的受容性についても同様に、レベル5の完全自動運転車に比べるとハードルは低く、隊列走行を利用した際のROI (Return on Investment)がはっきりすれば、導入に向けて一気に加速する可能性は高いのではないでしょうか。
一方、法規制については、自動運転と違った特有の問題があります。通信による後続車を「牽引車」として扱うか、またドライバーは特別な免許を取る必要があるのか、など、導入に向けて明確化しなければならないポイントがいくつか存在します。

理想通りにはいかないの現状と投資力

現実化条件だけを見ると、自動運転よりよっぽど早く来るじゃん!って思うかもしれませんが、トラックは、油圧パワーステアリングだったりと乗用車に比べて車両が電動化されていません。また、トラックメーカーは自動車メーカーに比べて生産台数=投資の資金が少なく、トヨタやフォルクスワーゲンなどが行なっているような数百、数千億の投資をやりにくいのも早期導入の妨げになっていたりします。

まとめ

良いところ
● 燃料消費効率の向上とそれによる運用コスト削減
● ドライバーの負担軽減
● ドライバー一人当たりの生産性アップ
● トラックメーカーは顧客に付加価値を提供し、販売拡大が可能

今後の課題
▲ トラックの電動化
▲ 技術開発への投資

様々な事情はありますが、物流の生産効率を飛躍的にあげる事ができる隊列走行技術は、国を挙げて取り組んでいるプロジェクトでもあります。国土交通省と経済産業省は2022年にこの技術を商業化することを目指し、国内トラックメーカー4社と公道実証を行なっています。 (参照:http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000263.html)
資金や法整備、トラックの電動化なとまだまだ課題はありますが、深刻なドライバー不足を抱えている日本は、逆にチャンスなのかなと個人的には感じています。追い風も少しずつ吹いているように思うのでこれからの隊列走行技術革新に期待です!

アーカイブ
新・モビリティビジネス論[一覧]
[図解]自動運転と企業間提携 全8回
自動運転の未来と4つの最重要事項

モビリティビジネスを図解する仲間募集!!

以上のテーマやその他のテーマで、新モビリティビジネス図解を一緒に作成する仲間を募集します。自動運転やコネクテッドカーに興味がある人、ビジネスモデルに興味かある人誰でも歓迎します!ツイッターのダイレクトメッセージで連絡して下さい!
ツイッター:MasayaAso
NewsPicks:MasayaAso
よろしくお願いいたします!

サポートによっていただいた資金は全て自動運転開発へ使います!頂いた分で行った活動は全てノートで公開します!