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音楽レヴュー 2

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音楽作品のレヴューです
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2019年4月の記事一覧

Ezra Collective『You Can't Steal My Joy』



 カマシ・ワシントンやロバート・グラスパーなど、新世代によるジャズの更新が著しいのはよく知られている。イギリスでも、ヌビア・ガルシア、モーゼス・ボイド、シャバカ・ハッチングスといったアーティストが台頭し、UKジャズの中心人物として大人気だ。
 いま挙げた者たちの全作品は聴いているし、そのすべてが耳を笑顔にしてくれる。そのうえで言うと、筆者はUKジャズに惹かれることが多い。サウンドのみならず、ア

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Billie Eilish『When We All Fall Asleep, Where Do We Go ?』



 ロサンゼルス出身のシンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュの経歴はあまりにも出来すぎている。2001年に生まれた彼女は、8歳の時にロサンゼルス少年少女合唱団に所属し、11歳になると作曲を始めた。2015年にサウンドクラウドで“Ocean Eyes”を発表すると、いまのイメージにも繋がるダークな雰囲気と高い制作能力が注目を浴び、メジャー契約を結んだ。まさにスター街道まっしぐらである。

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BLACKPINK(블랙핑크)「Kill This Love」



 4月13日、コーチェラフェスでのブラックピンクのライヴを観た。この日のライヴでは、去年観た来日公演とは比べものにならない壮大さを築き、圧倒的な熱量を生みだしていた。凄腕のサポートバンドを従え、ジス、ジェニー、ロゼ、リサの4人は高いパフォーマンス能力をこれでもかと見せつける。同性からの支持が高いグループだけあって、女性の歓声が目立っていたが、そこに女性以外の歓声も混ざるところは、日本よりもガー

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ユートピアという希望から、変化という希望へ 〜 The Chemical Brothersの最新作『No Geography』を通して考える新たな連帯の可能性 〜



 イギリスが誇るダンス・ミュージック・ユニット、ケミカル・ブラザーズの最新アルバム『No Geography』を聴いている。本作を手に取って最初に驚かされたのは、戦車がフィーチャーされたジャケットだ。実はこのジャケ、ゴドレイ&クレームが1977年に発表したアルバム『Consequences』のアートワークからまんま引用している。

 『Consequences』は、強大なハリケーンにより世界各

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