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音楽レヴュー 2

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2019年7月の記事一覧

Goro『Unbound Forever』



 クラブ・カルチャーにおけるバルカン音楽と聞いて、ドイツ出身のシャンテルを思い浮かべる者は少なくないはずだ。シャンテルは、幼い頃から慣れ親しんでいたバルカン音楽をダンス・ミュージックの文脈で解釈し、ダンスフロアを賑わせた。いわゆるバルカン・ビーツと呼ばれるサウンドの第一人者である。シャンテルをきっかけに、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスやコチャニ・オーケスターといったバルカン音楽を知った者もいるだ

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Kedr Livanskiy『Your Need』



 ケダル・リヴァンスキことヤナ・ケドリーナは、ロシア出身のアーティスト。彼女といえば、デザイナーであるゴーシャ・ラブチンスキー周辺の1人に数えられることもある。彼のランウェイにも音楽を提供した、ブッテクノことパヴェル・ミルヤコフの恋人としても知られるからだ。
 とはいえ、男のおかげで有名になったと思う者がいるとすれば、その考えをあらためるべきだ。2017年のファースト・アルバム『Ariadna

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So!YoON!(황소윤)『So!YoON!』



 日本でも人気を集めている、韓国の3人組バンドSE SO NEON(セソニョン)。そのヴォーカル/ギターであるソユンのソロ・アルバムが『So!YoON!』だ。
 本作にはさまざまな要素がある。ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&B、ロックなど、挙げていけばきりがない。もっとも、そうした音楽は珍しいものじゃないだろう。いまや多くの音楽好きが、ストリーミングサービスなどを介してあらゆるサウンドに触

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Majja「Concrete Roses」



 ロンドンのシンガーソングライター、マッジャを初めて聴いたのは1年ほど前だろうか。サウンドクラウドを散策していたら、「Tony's basement」なるセットリストが目に入った。シガレッツ・アフター・セックスのカヴァーも含めた全3曲で構成されているそれは、アコースティック・ギターの音色に合わせて彼女が歌うものだ。少々ハスキー気味で、親密感を漂わせる歌声に、筆者の心は奪われた。
 その後も定期

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Damon Locks - Black Monument Ensemble『Where Future Unfolds』



 ほとんどの音楽ファンにとって、デイモン・ロックスはトレンチマウスのヴォーカルという認識なんだろうか。確かに筆者も、デイモンの名を聞いて思い浮かべるのは、シカゴを拠点としていたこのバンドだ。ポスト・パンク、ポスト・ハードコア、マス・ロックなど、トレンチマウスはさまざまなジャンルで形容されている。ダブを取り入れていたのも印象的で、1996年のアルバム『The Broadcasting Syste

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(G)I-DLE「Uh-Oh」



 「最近どんなヒップホップ聴いてる?」と訊かれ、「(G)I-DLEの“Uh-Oh”」と即答してしまうほど、“Uh-Oh”を聴いております。
 この曲は、(G)I-DLE(アイドゥル)が先月リリースしたシングル。今年2月に出たセカンド・ミニ・アルバム「I Made」のリード曲だった“Senorita”よりも前に作られたそうです。

 初めて“Uh-Oh”を聴いたのは、もちろんリリース日。まず驚か

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Ben&Ben『Limasawa Street』



 去年のベスト・トラック50で、「アジアの音楽をよく聴いていた」と書きました。これはいまもそうで、主にオンラインラジオなどを介していろいろ楽しんでおります。「特に惹かれることが多かったのはフィリピンのアーティストによるもの」というのも同様です。Wonderlandも現地のシーンを取りあげたりと、他の国と比べて情報が得やすいのもあって、フィリピンの作品を耳にすることが多い。

 そのなかでも特に

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