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音楽レヴュー 2

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2019年10月の記事一覧

808 State『Transmission Suite』



 イギリスのマンチェスターで結成された808ステイトは、30年以上の活動歴を誇るテクノ・ユニット。UKダンス・ミュージック・シーンのパイオニアである彼らの遍歴を振りかえれば、輝かしい功績を知ることができる。1988年のデビュー・アルバム『Newbuild』では、当時イギリスを席巻していたアシッド・ハウスを鳴らし、多くの後続アーティストに影響をあたえた。なかでも、エイフェックス・ツインは自身が運

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Cassie Rytz『Starts Here』



 1年ほど前、グライム・シーンのMCを紹介するYouTubeチャンネルCrescoSMGにアクセスした。3分程度の動画を再生しては、次の動画に進むの繰りかえし。正直、そのときは大した収穫を得られなかった。キャシー・ライツというMCを除いて。
 ライツはサウス・ロンドンを拠点に活動するラッパー。男性支配が根強いグライム・シーンに迫ったBBCのプログラム、『Galdem Sugar』に参加するなど

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SuperM(슈퍼엠)「SuperM」



 SuperM(슈퍼엠)は、SMエンターテインメントのイ・スマンが新たに作りあげたグループ。SHINee、EXO、NCTに所属する7人によって結成され、その豪華さはマーベルのスーパーヒーロー集団アベンジャーズに例えられることも多い。
 ただでさえ実力の高い者たちから選び抜いただけあって、パフォーマンス力は文句なしだ。それは“Jopping”のMVにも表れている。乱れのないフォーメーション、キレ

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Sophia Saze『Self - Part 1&2』



 ソフィア・セーズは、ジョージアのトビリシで生まれたアーティスト。現在はニューヨークを拠点に、クラブ・シーンで活躍している。政治難民の娘である彼女は、ニューヨークにたどり着くまで多くの国を経たという。そうした生い立ちから自然とアイデンティティーについて考えるようになったそうだ。

 この経験は、2部構成という形のデビュー・アルバム『Self – Part 1』と『Self – Part 2』に

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Manic Street Preachersに見るフェミニズムとジェンダー



 筆者はマニック・ストリート・プリーチャーズが好きだ。しかし、そう言うと意外に思われることも多い。フェミニズムに好意的な筆者が、男らしさあふれる彼らの作品を聴くイメージを持てないらしいのだ。
 確かに、ウェールズから出てきた彼らは、マッチョな側面もなくはない。ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド、ニッキー・ワイアー、ショーン・ムーア、リッチー・エドワーズの4人(リッチーは途中で離脱してしま

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Manic Street Preachersの『This Is My Truth Tell Me Yours』再現ライヴは、いまの世界に捧げる祈りと警告だ



 1998年、マニック・ストリート・プリーチャーズは『This Is My Truth Tell Me Yours』をリリースした。全英アルバム・チャート1位を獲得し、全世界で500万枚以上売りあげた大ヒット作だ。
 彼らにとってこのアルバムは、パーソナルな意味合いが強い。リッチ・エドワーズのバンド離脱という出来事から前進するために作られた、『Everything Must Go』に続く作品だ

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