裁かれない狂気 〜 映画『ナイトクローラー』〜

 『ナイトクローラー』は、狂気がいかにして社会に侵食していくかの過程を描いた映画だと思います。だからジェイク・ギレンホール演じるルイスは特に裁かれることもなく、ああいうラストになったのかなと。恐ろしいのは、そんなルイスの存在や、ルイスが撮る過激な映像を求める人がたくさんいるからこそ、裁かれないというところ。そう考えると『ナイトクローラー』は、人という生き物が持つ暴力的な部分を抉りだした怪作と言えるでしょう。ルイスという怪物を求めているのは、他でもないあなただということです。

 また、夜の撮り方が秀逸なのも特筆に値します。この点は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)などでも知られる撮影監督、ロバート・エルスウィットの仕事が素晴らしいの一言に尽きる。なぜなら、同じく夜の撮り方が秀逸なマイケル・マンの『コラテラル』(2004)を超えてしまったのだから。ロバート・エルスウィットのおかげで、ただでさえギョロっとして印象的なジェイク・ギレンホールの目が、より不気味な眼力を放っている。

 そして僕は、『ナイトクローラー』を観たあと、ウィリアム・フリードキンを想起しました。特にカーチェイス・シーンを観ているときは、フリードキンの代表作『フレンチコネクション』(1971)や『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1985)が頭をよぎった。少なくとも、マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』(1976)ではないと思う。

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