Syndasizung(신다사이정)「Instant Of Kalpa」



 韓国のSyndasizung(韓国語のほうは「シンタサイジォン」と読むそうだが、正しい呼び名はわからない)に出逢ったのは、サウンドクラウドを散策していたときだ。“Just”という曲を耳にし、なかなかのセンスだと思った。トラップとフューチャー・ベースを掛けあわせ、人懐っこい音を鳴らすところに惹かれたのだ。
 1年ほど前からはテクノやハウスもアップするようになった。たとえば“Come With Me”は、ダンス・ミュージックの機能性を持ちながら、メロディアスな側面を強調することでポップスとしても聴ける親しみやすさがある。これはさまざまな音楽を聴いているからこそ可能な芸当だろう。ミックスではアシッディーな音を響かせたりと、筆者の好みにピタリとハマるセンスだ。

 そんな彼女にとって初のミニ・アルバムとなる「Instant Of Kalpa」は、テクノ/ハウス色が濃い作品となった。ほのかに憂いが漂う歌声を披露するなど、これまで発表してきた曲群よりもエレ・ポップ的な要素を際立たせている。おもしろいのは、EDM以降のエレ・ポップに多いサイドチェインがかかったシンセベースではなく、ハイハットの抜き差しでグルーヴを変化させるところだ。この手法は歌モノのNYハウスといった、いわゆるEDM以前の作品でよく見かける。そういう意味ではクラシカルなやり方とも言えるが、流行りよりも自らの嗜好に忠実な点は好感を持てる。強いて言えば、Planet EuphoriqueやNAFFあたりに通じるサウンドだろう。

 収録曲のなかで特に印象的なのは、“Draughts”だ。警告音のようなけたたましい音で幕を開け、TB-303風の音色によるトリッピーなベースで踊らせてくれる。唯一のインスト曲であるため、彼女の高いトラックメイキング能力がより顕著になっているのも聴きどころだ。
 ヴォーカル曲では“Instant Of Kalpa”が素晴らしい。FMシンセ風の音が特徴的なそれは、イントロのメロディーが稲垣潤一の“クリスマスキャロルの頃には”を一瞬想起させる。ビートは昨今のエレクトロ再評価と共振できるもので、ペギー・グーの“Han Jan”的ないなたさを醸す。このあたりは同時代的と言えるかもしれない。


※ :  MVがないようなので、Spotifyのリンクを貼っておきます。


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