Zamilska『Uncovered』



 ポーランドを拠点とするザミルスカのファースト・アルバム、『Untune』を初めて聴いたときの衝撃はいまも覚えている。Downwards周辺のポスト・パンク色が濃い硬質なインダストリアル・テクノで、ダークな雰囲気を醸していた。
 ベース・ミュージックの要素を見いだせるのもおもしろかった。このアルバムがリリースされた2014年といえば、ハビッツ・オブ・ヘイトやアンディー・ストットなど、インダストリアルとベース・ミュージックを接続したサウンドが盛りあがっていた。そうした当時の最先端とも共振する作品だ。

 2016年のセカンド・アルバム『Undone』で彼女は、新たな姿を披露する。ベース・ミュージックのスパイスに代わり、トライバルなサウンドを取りいれたのだ。秘境チックな妖しい音像を描き、ダウナーなサイケデリアを生みだした。ドライな音色や生々しいビートを軸にしたそれは、いまも続くEBM再評価の流れとも交わるものだった。

 彼女の3枚目となるアルバム『Uncovered』を聴いて、筆者は『Undone』の深化作だと感じた。本作の制作前、アルコールやドラッグ依存をやめるため、半年ほど病院に通っていたという。その影響か、これまでの作品と比べてより陰鬱な雰囲気が渦巻いている。強迫症的な緊張感を随所で醸し、聴いているこっちの心がヒリヒリする瞬間も多い。
 EBMやインダストリアル・テクノが軸なのは相変わらずだ。反復するヘヴィーなビートを前面に出す曲も多い。だが、それ以上に目立つのはアンビエントの要素だ。グルーヴよりも音響的といえる内容で、ディレイやリヴァーブといったエフェクトの細かな変化でリスナーを惹きつける。そういう意味では、ダンスフロアよりホーム・リスニング向けの作品と言えるだろう。

 とりわけ気に入ったのは“Alive”だ。蠱惑的なヴォイス・サンプル、呪文を唱えるかのようなヴォーカル、チープな質感のビートなどで構成されたそれは、スーサイドやヤング・マーブル・ジャイアンツを引きあいに出したくなる。テクノというよりポスト・パンク的で、ポップ・ソングに近い体裁だ。
 “Prisoner”も興味深い。深淵の底を這うように鳴り響くウォブリーなベースは、まさにダブステップである。本作中では唯一『Untune』期のサウンドに近く、懐かしさを抱いた。長年の活動で培った秀逸なプロダクション・スキルを駆使するのもいいが、こうした低音の気持ち良さに身を委ねる享楽性もたくさん聴きたいと思ってしまう。



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