2018年ベスト映画20


 ベスト・アルバムベスト・トラックと同じく、映画もアジア系の作品を目にすることが多かった。なかでも際立っていたのは、やはり韓国映画。劇場公開された作品のみならず、ネットフリックスのオリジナル作品でも韓国は存在感を発揮していた。その流れは今回のリストにも反映されています。Webメディアやブログで記事を執筆した作品は、作品名のところにリンクを貼っているので、ぜひとも。


20
『ファントム・スレッド』

 ホラーチックなラヴ・ストーリーとして喧伝されることも多かったが、筆者からすると笑える映画だ。オムレツのシーンのにらめっこなどは、クスッとしてしまった。



19
『アナイアレイション -全滅領域-』

 凄まじい作品。生物学の要素をSFホラーにまで発展させる爆発的な想像力は圧巻。アレックス・ガーランドは、『エクス・マキナ』以上にぶっ飛んだものを作りあげた。



18
『最悪の選択』

 鹿と間違えて人を撃ってしまった2人の男が村人たちにじわりじわりと追い詰められていく様はスリリング。登場人物のキャラ設定と舞台からもわかるように、過剰な資本主義への皮肉も。『最後の追跡』ほど露骨ではないが。



17
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

 衣装、音楽、カメラワークなど、さまざまなところで“旧態依然な価値観が変わっていく様”を表現している細かさは秀逸。あまりにストレートなメッセージ性は好き嫌いが別れると思うが、そんな愚直さこそいま必要とされているものだ。



16
『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』

 人間の業という仮面ライダーシリーズのテーマを深く掘り下げているのはもちろんのこと、フィルムノワール、ホラー、スプラッターといったさまざまな要素を見いだせる映像作品としても楽しませてくれる。



15
『リズと青い鳥』

 仕草や目線で相手の気分を察することって多いけれど、そうした機微を積み重ねたような映画。沈黙に語らせる上手さも光る。



14
『1987、ある闘いの真実』

 チョン・ドゥファン軍事政権下にあった1987年の韓国を舞台に、当時の民主化運動を描いた力作。役者陣の個性に依存しないで素晴らしい群像劇を作れたのは、秀逸な演出の賜物。



13
『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』

 人間とポケモンの関係性を丁寧に描いてるのが印象的で、その関係性が現代への切実な問いかけになっている。これを観た子供たちはどんな大人になるんだろう?と考えただけでもワクワクする。脚本に高羽彩がクレジットされているのも驚きだった。



12
『アンダー・ザ・シルバーレイク』

 ポップ・カルチャーの歴史や仕組みを取り入れた探偵もの。おそらく「探偵は批評家にすぎぬのさ」という有名なセリフも意識したのでは。



11
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

 柄ものロングT&ブリーフ姿のニコラス・ケイジの慟哭など、『オンリー・ゴッド』以上にアシッディーな映像が盛りだくさん。魔女狩りをモチーフにしていると思われる物語には現代的なメッセージ性も。



10
『消えた16mmフィルム』

 1992年にシンガポールで作られた映画『Shirkers』のフィルムが持ち去られた背景に迫ったドキュメンタリー。野心と才能に満ちた若者たちと、それに嫉妬したひとりの男というパーソナルな物語は、人がいかに複雑な生き物であるかを浮き彫りにする。



9
『ブラックパンサー』

 ティ・チャラとキルモンガーの関係性が、アメリカにおける黒人の歴史を連想させるなど、深いドラマが印象的。トラディショナルな要素とテクノロジーが結合したヴィジュアルもグッド。ティ・チャラがキングである理由と、アフロ・フューチャリズムと呼ばれる作品の多くが寛容な多文化社会をユートピア的に表現していることは、繋がっている。



8
『ウインド・リバー』

 『最後の追跡』では、忘れられた人たちにフォーカスした素晴らしい脚本を書いたテイラー・シェリダンの監督作。アメリカの暗部を抉りだす内容だけど、“運が来ない”土地の閉塞感や殺伐とした空気は日本に住む私たちもコミットできるだろう。犯人の動機が少々ステレオタイプなのは引っかかるものの、そこでしか生きることを許されなかった人たちの哀しみに心が揺さぶられた。



7
『RAW~少女のめざめ~』

 少女が女性になるまでの過程をモチーフにしたホラーかと思いきや、ラストでまさかのどんでん返し。あの父親の告白を聞いた瞬間、点が一気に線となり、“抑圧を受けて生きること”というもうひとつのテーマが浮かびあがる。



6
『万引き家族』

 “こういう生き方しかできない人たち”の物語。そうした地べたの世界を見せつけるように、見下ろすロングショットを多用するカメラワークからは静謐な憤りが感じられた。笑いもあるが、基本的には哀しみの映画という意味で、『わたしは、ダニエル・ブレイク』を彷彿させる。



5
『BPM ビート・パー・ミニット』

 エイズと戦う若者たちを描いた青春映画。病室でのセックス・シーンは、愛で溢れながらもやるせなさを感じさせる名場面だ。



4
『きみの鳥はうたえる』

 クラブのシーンは日本映画史上最高の素晴らしさ。あれは盛りあがるだけがクラブじゃないと知ってるから撮れるものだ。作品の生々しさを生みだすうえで“音”が重要な役割を担っているのもポイント。いちいち美しい石橋静河の動きも絶品。



3
『記憶の夜』

 記憶喪失系スリラーかと思いきや、全容が判明した後に繰り広げられる濃度1000%の人間ドラマこそ核だった。抗えない圧倒的な出来事に翻弄された非力な個人は、最後までどん底から抜けだせないと言わんばかりの悲劇的結末に心を撃ち抜かれた。



2
『リベンジ』

 映画における女性の表象、フェミニズム、ホモソーシャルなど、さまざまな視点から観て興味深い作品。筆者からすると、『ワンダーウーマン』と比較できる内容だ。



1
『デッドプール2』

 手を汚すウェイドだからこそ示せる理想が物語の肝。排外主義的な登場人物がイエローキャブでひき殺されるなど(イエローキャブの運転手には移民が多い)、ブラックな笑いも深化。序盤で飛びだす「ファミリー映画」のジョークが実はマジだったという終わり方も心憎い。まさか『デッドプール』シリーズで涙を流す日がくるとは...。“強い者同士が戦うなかで踏みにじられる弱い者”への温かい眼差しに感動。



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