機械仕掛けのメランコリー 〜 Jessy Lanza『Oh No』〜



 久しぶりに、ジェシー・ランザのファースト・アルバム『Pull My Hair Back』を聴いてみた。このアルバムのライナーノーツでも書いたが、非常に高い音楽的彩度を誇る作品だと思う。ベース・ミュージック、R&B、シカゴ・ハウス、ディスコなどの要素が幾重にも重なったサウンドは、心地よいメランコリーをもたらしてくれる。そして何より、ジェシー・ランザの歌声だ。どこか妖艶な雰囲気が漂い、凛とした彼女の佇まいを連想させる、そんな歌声。繰りかえし聴いていると、意識がとろけるような感覚に覆われていく。その感覚の中で筆者は、「これは2010年代のブルーアイド・ソウルなんだろうな...」と、おぼろげに呟いた。

 こうした記憶が、彼女のセカンド・アルバム『Oh No』を聴いているうちに甦ってきた。しかし本作は、アフリカ・バンバータといった80年代エレクトロの要素が色濃いという点で、前作とはだいぶ異なる。リズムに躍動感があり、彼女の音楽にしてはアッパーなノリが目立つのだ。それが顕著に表れているのは、マイケル・ジャクソンばりのシャウトが聞ける「VV Violence」だろうか。

 80年代エレクトロの要素が強調されたのは、彼女がモーガン・ゲイストと結成したユニット、ザ・ガレリアとして発表したシングル「Calling Card / Mezzanine」が関係していると思う。このシングルは、本作以上に80年代エレクトロ色が強い作品だが、ここで得た成果を彼女は本作に上手く反映している。

 また、ジュークの要素が見られる「It Means I Love You」では、DJスピンなどとコラボした「You Never Show Your Love EP」での経験が活かされている。細かく刻まれたヴォイス・サンプルや前のめりなグルーヴは、ジュークの匂いをぷんぷん漂わせる。このあたりは、彼女がベース・ミュージックに対する興味を失っていないことの証左となっている。

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