So!YoON!(황소윤)『So!YoON!』



 日本でも人気を集めている、韓国の3人組バンドSE SO NEON(セソニョン)。そのヴォーカル/ギターであるソユンのソロ・アルバムが『So!YoON!』だ。
 本作にはさまざまな要素がある。ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&B、ロックなど、挙げていけばきりがない。もっとも、そうした音楽は珍しいものじゃないだろう。いまや多くの音楽好きが、ストリーミングサービスなどを介してあらゆるサウンドに触れている。ジェネレーションZの女性たちの約97%は、最低5つのジャンルを日常的に聴いているという興味深い報告もある。そんな時代において、ただいろんな音楽をやっても、たいしたアピールポイントにはならない。

 それでも本作が筆者の興味を引いたのは、1曲の中でさまざまな要素が渦巻いているからだ。たとえば、オープニングを飾る表題曲。イントロではフランク・オーシャンに通じる耽美的な音像を描きつつ、そこへ突如ワウ・ギターが流れこんだりと、かなり忙しない。トラップ的な細かい刻みのハイハットもあれば、メロウなベース・ラインはレゲエ/ダブの匂いを醸している。このように、各パーツが異なるジャンルを想起させるサウンドは、微細レベルにまで要素を切り刻み、撹拌した本作の幕開けにふさわしいものだ。

 強いてお気に入りの曲を挙げるなら、スミンが参加した“Noonwalk”だろうか。甘いヴォーカルが前面に出たミニマルなプロダクションは、スミンが得意とするものだ。彼女の素晴らしいファースト・アルバム『Your Home』に収録されていても不自然じゃない。2:14あたりでレトロ・フューチャーなシンセが鳴り響き、その後ブルージーなギター・プレイが始まる展開もおもしろい。
 “FNTSY”にも惹かれた。ねちっこいグルーヴが映えるミニマルなディスコ・トラックに乗せ、ジャッキー・ワイがラップを披露する曲だ。女性たちの連帯を促す歌詞も秀逸で、男性的とされる言葉を女性が歌うというギミックも、ミラーリング的に女性性のイメージを塗りかえているようで興味深い。



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