Moon Diagrams「Trappy Bats」


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 ディアハンターのモーゼス・アーチュレッタによる変名プロジェクト、ムーン・ダイアグラムズが最新EP「Trappy Bats」をリリースした。一聴して驚かされたのは、反復の中毒性で踊らせる秀逸なダンス・ミュージックが収められていることだ。
 なかでも、オープニングを飾る“Trappy Bats”は素晴らしい。ひたすら4つ打ちを刻みながら、音色の変化や音の抜き差しによって、踊れるグルーヴを生みだすのだ。ほのかにメランコリックで、反復性に対する偏執的なこだわりがうかがえる点は、『From Here We Go Sublime』期のザ・フィールドに通じる。

 “Trappy Bats Meets Shigeto”もお気に入りだ。ロウ・ハウス的なざらついた質感の音に、シカゴ・ハウスを連想させるビート。さらには肉感性あふれるグルーヴなど、ダンス・ミュージックとしての魅力が多い良質なトラックだ。Mister Saturday NightやConfused Houseあたりのレーベルから出たとしても、不自然じゃない。
 一方で、“Daisychain Meets Deradoorian”はトリッピーなミニマル・シンセだ。ヴォーカルにかけるディレイやリヴァーブの微細な変化で起伏を生みだす手法は、フィリップ・グラスやヴィム・メルテンといったミニマル・ミュージックの意匠を見いだせる。

 「Trappy Bats」のサウンドは、実に多面的だ。特定のスタイルに依拠せず、パレットを飾る音色も驚くほどカラフル。そこに見いだせるのは、自由に音と戯れる汚れなき遊び心である。



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