SL「Everything Good Is Bad」



 サウス・ロンドン出身のSLは、2001年生まれのラッパー。彼が頭角を表したのは2017年発表の“Gentleman”だ。常に暴力と隣りあわせの世界で生きてきた青年の描写力に、多くの者たちが引き寄せられた。ミニマルなビート、ヘヴィーな低音、殺伐とした歌詞の組みあわせは、UKドリル・シーンの注目株となるにふさわしいものだ。
 “Gentleman”後もコンスタントに曲を発表する一方で、ナインズのアルバム『Crop Circle』に参加するなど、他のアーティストとも交流を深めた。まとまった作品を発表していないにもかかわらず、彼の名声は高まるばかりだった。

 「Everything Good Is Bad」は、SLのデビュー・ミニ・アルバムである。全6曲で20分にも満たないコンパクトさが際立ち、流麗なラップも光る。多くを詰めこまず、そのうえで多彩な感情表現ができているのは、言葉選びが巧みだからだ。抑揚を抑えたフロウに、子音を強調する癖が印象的なスタイルは、デイヴを連想させる。
 特に耳を引いたのは“This Way”だ。どこかレゲエっぽいフロウになる瞬間があったりと、これまで彼が見せてこなかった側面を楽しめる。

 それだけに、トラックがワンパターンなのは非常に残念だ。言葉を前面に出すという意味では、ミニマルなビートで統一し、余計なエフェクトを排除するのも理解できる。とはいえ、明らかに成長や変化が見られるラップに適当かと訊かれたら、NOと言わざるを得ない。多彩になったフロウに合わせ、トラックもバラエティー豊かにしていれば、成長の跡をより広くアピールできたのではないか。



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