BON『33:33』



 ロンドンを拠点とするBONが、デビュー・ミックステープ『33:33』をリリースした。BONは、アレックスとイェロシャによる男女デュオ。2人はプロデューサーとして、ミッキー・ブランコやガイカといったアーティストと仕事をするなど、裏方業でキャリアを積み重ねてきた。一方で、アレックスはロバート・オーウェンスの“In Love Forever”をプロデュースし、イェロシャは今年4月に「Yerosha」というEPを出したりと、ソロ活動も頻繁におこなっている。

 そんな2人がユニットを結成して、デビュー・ミックステープまで出すというのだから、筆者としては見逃せなかった。タイトル通り、収録時間が33:33である本作は、地の底を這うような重低音が終始鳴り響く内容だ。『Luxury Problems』以降のアンディー・ストットに通じる、インダストリアルとベース・ミュージックの蠱惑的な融合を想起させる音像は、ダークなサウンドスケープを描いている。リヴァーブやディレイを多用するアレンジはダブの要素が色濃いが、そこにイギリスが育んできたサウンドシステム・カルチャーの文脈を見いだすのは容易いだろう。

 なかでも興味を惹かれたのは、“Gas And Smoke”だ。ディレイがかかったベース・ラインはもろにレゲエの要素を感じさせ、随所で挟まれる幽霊のようなヴォイス・サンプルはブリアルを連想するからだ。やはりイギリスのアーティストなのだなと、思わず笑みを浮かべてしまった。

 “Just Next Door”以降の流れもおもしろい。“Just Next Door”に入ると、これまたディレイがかかったノイジーなヴォイス・サンプルや、メタリックで幽玄なシンセ・サウンドが耳に飛び込んでくるのだ。それまでの重低音は若干後退し、多彩な引きだしを持っていると匂わせる。強いていえば、ジ・オーブに通じるドラッギーなアンビエントだ。さらに、“Life Can Be So Nice”で聴けるきらびやかなシンセの音色は、μ-ZiqなどのIDMを彷彿させる。それを妖しげなダーク・アンビエントの一部にしてしまうのは、BONらしさと言うべきか。



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